2018年4月4日水曜日

人類滅亡 - LIFE AFTER PEOPLE -

 最近はこれを見ています。『人類滅亡 - LIFE AFTER PEOPLE -』。人類がこの地上から去ったあと、人類の作り出したもの、文明はどのようになるのか。そうした興味は誰しもあるんじゃないかと思います。最近、人類の文明が終焉を迎えた後の世界を描いたフィクションに好評はくするものがいくつも出ています。ポストアポカリプスというんですってね。人類が長い時間をかけて築きあげてきたものが、脆く崩れさる。それは文明であり、都市であり、社会のモラルやルールでもあり、そうした異常な状況において、残された人間はいかに生きるのか。と、ここまで書いておいてなんですが、『LIFE AFTER PEOPLE』はちょっと趣向が違います。なんといっても、人類はもういないんですね。社会もモラルもへちまもなく、人っ子ひとりいなくなった世界にて人類の築いたものはいかに消えさるのかに焦点をあてたプログラムであります。

ようこそ地球へ。人口はゼロ。

毎回のプログラム開始時にアナウンスされるキャッチフレーズなんですが、結構かっこよくって気にいっているんですよ。オリジナルは Welcome to Earth. Population Zero. なんですね。直訳なんだ。こういう短いフレーズで、はっと見るものの心をつかむの、本当、うまいと思いますよ。

番組は、人類がいなくなってから一日たった世界はどうなっているか。一週間ならどうなっているか。といった具合に、時間、日数を少しずつ進めていきながら、いかに人の痕跡が失われているかを説明していきます。それは例えば巨大なビルディングで、家畜など人の文化が作り出した生き物で、とりわけ印象的なのは人が永続を夢見て作り上げたモニュメント。もう、毎回これでもかと人の営為の痕跡が消失していく様がプレゼンテーションされるのであります。

各回ごとにテーマが決められていて、例えば第1回は「残された死体」。死体? そんなの、すぐに腐敗して崩れさって終わりじゃないのん? 見る前まではそう思っていたのですが、いやいや、そんなもんじゃありませんでした。死体といっても特別な死体です。ミイラや、あと特別に防腐処理のほどこされた指導者たちの遺体。これらもある意味、永続を求めた末のモニュメントといえるのだと思うのですが、これらが、まあ、どんどん朽ちる様を見せてくれます。けれど、ただ消え去る過程ばかりを語るのではなく、もしかしたらなんらかのかたちで残るかも知れないという可能性、化石になるとかね? そこまで言及してくれるから面白い。

テーマごとに描写されるタイムスパンは違ってくるのですが、都市や建築物となると、もうかなり遠い未来まで視野にいれてくれるんですね。それこそ100万年みたいな先の可能性まで検討して、けれどそれでわかるのは、よほど特別なものでないかぎり人類の痕跡は残らない。まず、跡形もなく消え去るものだということです。そして同時に、我々が堅牢と思っているもの、都市でも建物でも、それらは実際にはかなり脆くて、思っていたよりもはやく機能を喪失、壊れていくものだと思い知らされます。

この番組、廃墟ファンにもおすすめなんですよ。毎回、都市や建物がどのように崩壊していくか、その実例を紹介してくれるんです。第1回は日本の長崎でした。ほら、軍艦島ですよ。人の手が入らなくなった建物は、このように壊れていくのだという実例ですね。なぜ人がその地を去ることになったのかは毎回違うのですが、産業構造が変わって鉱山が閉鎖されたからとか、あるいは環境破壊とか、いろいろ。海辺の町、砂漠の町といったように、シチュエーションもいろいろ。立地、環境が変われば、ウィークポイント、壊れ方も違ってくる。潮風に晒されて金属やコンクリートがぼろぼろに崩れるケースがあれば、凶悪な外来植物に覆い尽くされ、壊されていくということもある。そのバリエーションよ! 実に刺激的でありますよ。

人の作ったものはこんなにもはやく壊れていく。それこそ、都市を維持しているシステムの喪失が、都市を一気に破壊の方向に向かわせる様など見せられると、揺るぎも危なげもなく存在し続けそうにさえ思える都市の脆弱さを思わずにはおられません。あるいは、都市にしても、町にしても、多かれ少なかれ自然なありかたに逆らって無理矢理成立させているものなのだと、改めて実感させられるのですね。排水し続けないとすぐさま水に漬かってしまうとか、水の供給が断たれると砂漠に戻ってしまうとか、そうした例が示されるたびに、想像以上に街というものは人為的なのだと、メンテナンスを怠れば簡単に機能不全に陥るのだと、都市や社会を維持するコストの高さ、要求される労力を思うとともに、日頃当たり前に思っているものはちっとも当たり前なんかではないのだよと、諭されているようにも感じるのでありました。

0 件のコメント: