『まんがタイムきららフォワード』2024年12月号、先日の続きです。
『球詠』
夏の大会を目前としていろいろ動きがありました。神川、上里、長瀞混成チームを見学してみたり、そして幕鈴との練習試合があったり。この幕鈴は昨年度の全国覇者。強豪を相手にいい勝負どころか勝利してみせた。その試合の流れが新越谷メンバーの繋がりをぎゅっと強くする。その描写がとてもよかったのです。
ドラマがあったんですね。背番号が決まった。よい番号が欲しい。それ以上に、自分の認める人によい番号が当たってほしい。希にとってはそれが光先輩。光がもらったのは11番。それが悔しくて、納得いかなくて、芳乃に食ってかかるかと思うもなんとか我慢。同じく投手で1番をもらったヨミとの確執など発生するのか?
という予感を退けたのが幕鈴相手への投球で、その実力をもってヨミこそがエースと再確認させるにいたった。けれど思いは裏腹、光への気持ちも消えず、それだけに光、希、ふたりの会話はずっしりと重みを持って、しみました。
1番という番号は重いのですね。ヨミを奮起させ、そして希にもあれだけの影響を及ぼして、それだけに今回の顛末は、彼女らの今、今後についてのしっかりとした礎となったように思います。
『魔法使いロゼの佐渡ライフ』
紗菜とロゼ、麻衣の3人でお祭りに繰り出します。3人ともに浴衣姿で、目にも華やか、さぞや楽しいひとときとなろうと思いきや、ロゼの気持ちは曇ったまま。自分と一緒にいると紗菜に危険が及んでしまう。その心配が、ずっとロゼの重荷となっているのですね。
紗菜のもとから去ろうと考えるロゼ。ひとりで先走らないよう月渚に忠告されたものの、迷いは晴れないロゼです。そんな彼女の決定に、紗菜はどのように答えようというのか。その仕掛けとして、小木祭りの花火のギミック、花火を寄付した人のメッセージが読み上げられるという決まりごとが効果的に働いて、紗菜に一緒にいられないことを告げた涙のロゼに届く紗菜からのメッセージ。空に咲く一輪の花火とともに伝えられた思いは、これ以上もなく美しくて、ああこれは、ロゼならずとも涙を絞られる。とてもよい場面となったのでした。
これからのロゼと紗菜の暮らし、それがどういうものになっていくのか、それはなおわからないところはあるとして、それでも選んだふたり一緒の暮らし。苦難があろうとふたりでともに乗り越えよう。こここそがロゼの居場所だと確認しあうふたりの姿がまた美しく素敵でありました。
『花唄メモワール』
藤野の身請け話を受けて、竹子に助けを求めた梅。身請けとはいかなるものなのか。そうした事情を知ることからはじめて、そしてさらに身請けの相手や藤野の気持ちなどに探りをいれていく。その顛末の果てに辿り着いた地点、それが他ならぬ梅自身の気持ちであるというところ、ああついにここにずっと蓋をされていた梅の本心が明らかにされる。藤野の生存を願うばかりに口にすることができなかった思い。そのシンプルな答こそ、藤野の求めたものだった。はたして梅はその気持ちを藤野に伝えることができるのか。
という今回。竹子のアドバイスを受けて自ら仲居たちに聞き込みをしていく梅と、将来の目標探しを兼ねて皆の夢を聞いてまわるアイリスの収穫。それはどちらも身請けの相手と藤野の夢という情報を得るためのものだったわけですが、竹子は最初からそのどちらをも問題としていなかった。あくまでも竹子は、梅自身の心からの答えを求めていたのですね。
竹子、頼れる人だなあ! というのが第一の感想。そして竹子の問い掛けがあったからこそ、気持ちより頭を優先してしまった梅の遠回りが解消された。そのことへの安堵が続いて、ああ藤野のもとへと向かう梅が間にあってくれればよい。その思いでいっぱいになるエピソードでした。
- 『まんがタイムきららフォワード』第18巻第12号(2024年12月号)
0 件のコメント:
コメントを投稿