2024年9月16日月曜日

ウクレア!

 連載がはじまったとき、主人公の子、水霧空子を見て、その行動原理におどろかされたの思い出します。表情がかたく、感情が顔に出ない。けれど思ったことを相手に示そうと、大切にしてるものを献上する。感動はお金であらわす。あまりにもダイレクト、あまりにもストレートな行動に、大丈夫なのかな!? と思うんだけど、不思議と嫌味に感じない。むしろ素直な子なんだなと。ただその気持ちをどうあらわしたらいいか、そのあたりが不器用なんだなって、それでも精一杯伝えようとする姿に好感持ったのでした。そんな空子とウクレレ、そして仲間たちとの出会い。そこからはじまる物語も素敵で、ああこの漫画好きだなと自然と思われたのでした。

なにがよかったのかな。それはウクレレという題材にもあったのだと思います。身近な楽器。私も2本ほど持っていて、たまに弾いたりはしていたものだから、この漫画に出てくる曲に興味を引かれて、自分でも調べて練習したりして、より空子たちの活動を身近に感じたり、そんなところも大きかったと思うんですね。

たとえば、灯火の入部の回で初心者の灯火が弾いてみせた『イアリイノオエ』。この曲はトニックとドミナントの繰り返し、前奏間奏にドッペルドミナントがあるから全部で3つのコードを覚えたらもう弾ける。だから灯火が空子の練習見て覚えたというのもあながち無茶な話ではない。ポノでの演奏も見てた灯火のことですから、空子の運指練習を興味持って観察してたかも。だったらなおさらじゃありませんか。灯火ははやい時期からウクレレに、ウクレレ部に結構な感心を向けていたんだろうなあ、なんてこと思ったりしていたんですね。

この漫画のテーマがよいと思うのです。第1話で示されるでしょう? 「自分が楽しむこと」。このはじめの一歩ともいえる「自分が楽しむ」が、回を重ねるほどに深まっていく。私の楽しいを伝えたい。そうした思いが芽生えたかと思えば、けれど思ってるだけじゃ駄目なんだと、さらに努力や工夫、試行錯誤をしていくことになる。それもすべては楽しみを育み、聴いている皆に届けるため。

感情が表に出ず、気持ちを伝えることに不器用だった子が、仲間たちとともに自分のうちにある感情を伝えようとがんばる、そうしたところに魅かれてやまなかったのです。

好きな言葉があるんですね。灯火をウクレレ部に誘うときの空子の言葉、

楽しいことがあると毎日がキラキラするんです

それだけで明日が来るのが嬉しくなったりするんです

ウクレレに限らず、心のうちになにかひとつでもいい、楽しいと思えることがあれば、それだけで人生は変わる。つらいと思うことがあっても、前を向いてつらさを乗り越えていく原動力にだってなりうる。

空子の言葉は灯火だけでなく、私の背も押したのでした。

このころから、私はそれまで以上に熱心にウクレレを弾くようになりました。

好きな曲は『アイナハウ』です。

そしてウクレレは3本に増えました。

  • MIDORI『ウクレア!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 芳文社,2024年。
  • 以下続刊

引用

  • MIDORI『ウクレア!』第1巻 (芳文社,2024年),87頁。

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