2022年3月25日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2022年5月号

 『まんがタイムきららフォワード』2022年5月号、昨日の続きです。

『球詠』

美学の攻撃が続きます。初球エンドランで一塁走者が二塁へと進塁。珠姫、確実に刺すと気迫をともに二塁に送球するも、予想を上回る走力で盗塁を許してしまう。この初回からじわじわと追い詰めてくる感覚にじりじりと焼かれ、そして美学の4番、諸積の打席がとりわけ熱かった。諸積の発するプレッシャーに詠深が呼応する。その互いに通じあっている感覚。同じ場にいる珠姫の立ち入る隙もないふたりだけの世界、まさしくライバルと認めあっている、ゆえに相手の最良をこそ打ち崩したい。自身の最良でこそ打ち取りたい。

そうしたふたりの気持ちのせめぎあう様。そして緊張感の中、楽しそうに投球する詠深。充実の時間でしたよ。初対決こそは打ち取らた諸積にしても、まったく気にしていない。むしろせいせいとしているんですね。詠深の決め球こそを打ちたいと、あの楽しそうにベンチに帰っていく姿を見れば、ああこの人の真価はいよいよこれからだと思わされるわけです。

手強い美学を相手にする新越谷。攻撃においては、カットすらしないという作戦。これが後にどう生きてくるのか。それが対美学戦における勝利に繋がってくることになるのだろうと思うのだけど、今回ばかりは芳乃もちょっと自信なさげですね。

『追風のジン』

忍術を駆使しスパナを追うジンに、カエルモチーフの忍具でもって対抗、上回っていくスパナ。忍術を使う忍者はいわば超人。人並みはずれた運動能力を前に肉薄されながらも、都度的確に動いてジンを退けていくスパナの判断力。ここに彼女の経験の高さをうかがうことができて、ええ、スパナ、相当に場数を踏んできているんでしょうね。

スパナとジンの対決は、目当ての本をジンが取り返したことでジンに軍配があがりましたね。けれどここに忍者を取り締まる侍、マサムネが介入。その刀、月虹が発する強大な力でもってジンを叩き伏せて、これ、忍者という存在の業がジンに災いしとるなあ! ジンは取り締まられるような悪いことしてないのにな。むしろマサムネと同様に、悪辣な忍者に対立しているというのにな。この誤解がどのように解けるのか。今はこうして対立しているジンとマサムネだけど、このふたりが同じ敵を前にして協力する、その時のことを考えるだにわくわくさせられるというものです。

しかし今回、いろいろなことがわかりましたね。スパナが、七虹架ゲンナイの孫だということ。なるほど、スパナは散逸した祖父の発明を取り戻そうと動いているわけですね。そしてユザワ村にやってきた商隊。その頭領が忍者と裏で手を組んでいることも。この事実を知ったユザワ村村長とココロは捕われの身となってしまい……。

この次へ次へと気になる状況が発生していく流れ、この推進力。ぐいぐいと読み手を引っ張って、ああ、このピンチをいかにジンが引っくり返してくれるのか。次の展開が気になって、楽しみで、来月がもう待ち遠しい。ええ、見せてくれますよ。

『ねことちよ』

前回、お店やさんをやっていたねこ。なにか目的がありそうだなあって思っていたら、ああ、ちよの誕生日をお祝いしたかったんだ。教えてもらいながら、お祝いのカードを書いてね、そしてふみと一緒にケーキ屋さんにいくそのくだり。自分のお金でなにか買うのはこれがはじめて。ふみから、ちよがきっと喜ぶっていわれてすごく得意そうな顔してるねこが可愛くて、いやもうこの子、すごくいい表情見せてくれますよ。

ケーキ屋さんでは、たくさんあるケーキに圧倒されてね、けどそこからちよが好きないちごのケーキを選び出すの、ああちよのことよくわかっています。そしてねこが財布からたくさんの10円玉をジャラジャラ出してからの店員さんとのやり取りがまたいいの。大人がよくねこのこと見守ってくれていますよね。こうして健やかに育まれていくねこの様子が、ほのぼのとした温かみとともによく描かれて、見ているだけでなにか安心できる、そんな気持ちになっていくのです。

ちよの誕生日のお祝いは次回に描かれることになりそうですね。ちよの喜ぶ様子、それを見るのが楽しみです。

『最果てのともだち』

キヨが救われる日は果たしてくるのでしょうか。アサヒへの執着をいよいよ強めていくキヨ。いずれくるアサヒとの別れを思えば、穏やかではいられない。いずれ小学校を卒業していくアサヒ。4年生から5年生に進級して、残り時間は刻一刻と失われていく。置いていかれることに苦しむキヨの心情、いかばかりでしょうか。

アサヒはアサヒで不安を抱えているんですね。新学期、新しいクラス。いつもうまくいかないと沈んでいて、けれどキヨはそんなアサヒをはげまして、放課後キヨに会いにきてくれたら笑顔にしてくれると、しあわせにすると、アサヒの学校生活はこれからも楽しいと笑顔でいってくれるのですね。

別れに苦しむキヨと、明るくふるまうキヨ。どちらのキヨがよりこの子の本質に近いのでしょう。誰にでもある両面性、それをキヨも有している。しかし、ただ両面性というには苛烈にすぎるキヨのありよう。信じていいのでしょうか。それとも、深みにはまるその前に、距離を置いておくべきだったのか。わからない。今いえるのは、嫌な予感しかしない。ここからどうやって、しあわせな未来を指向していけるのか。その道筋がまるでわからないんですね。

新しいクラスで、アサヒが日暮と友達になれたことも不安材料に思える。悪い状況にあっても立ち向かえる、そんな強さを持った子。また霊の存在を感知することのできるこの子が、キヨとアサヒの関係にもなんらか働きかけて、よい方向へ向かわせてくれるかも知れない。そういう希望がありながらも、クラスに友達ができたことでアサヒのキヨに対する依存心が薄れていけば、キヨはまた豹変することにもなるのではないか。

今はもうあらゆることが不安をかきたてて、ああ、なんとかよい方向に向かってくれることを望みます。そしてその先に、キヨの、先生のさいわいもあればと思うばかりです。

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