『まんがタイムきららフォワード』2022年5月号、発売されました。表紙は『スローループ』、ひより、小春、恋の3人が春の野原に寝転んでいるその様子。手に手を繋いで、いい笑顔を見せてくれているのが実に素敵な表紙です。3人のまわりには白詰草、クローバーが茂っていて、これ、よく探したら四葉があったりするのかな!? 春は芽吹きの季節。この子たちにはよく似合う、そんな情景でありますね。
今月は新規ゲストが1本です。
『はざまサンドイッチ』
人が人に向ける好意を、数値として視認できる狭莉理。たとえ喧嘩をしていても、そのふたりが互いにどう思っているかは一目瞭然。幼少の頃より、こうした環境に身を置いているために、人と人の好悪の機微は感じとるものではなく視認するもの。客観的に外部から観察する。そうした振る舞いが自然身についてしまっていたというんですね。
そんな彼女にふりかかった恋愛ごと。友達の陽彩芽依から告白されて、ああ、自分に向けられる好意については視認できなかったことを実感させられ戸惑う莉理。これまで、恋愛とは第三者的視点から見守るものだと思っていたのに、自身もまたひとりのプレイヤーであったと思い知らされた。さあ、どうする。莉理は、芽依のことを思っている友人、紫日葵を応援してきただけに、その関係に介入したくない。
いろいろ思い悩んじゃうんですね。
莉理の能力は、一昔前の恋愛シミュレーションゲームに出てくる親友キャラを思わせてくれますよね。電話をするとヒロインたちの好感度や攻略状況を教えてくれるやつ。いうならば莉理は、そうしたポジションに自身を位置づけていたのに、自分も誰かの攻略対象となるえることに気づかされて、そこからの動揺。一旦は断わるも、決して諦めない芽依に、不審な行動をとりはじめる日葵と、途端に騒がしくなる莉理の周辺。ええ、莉理のプレイヤーとしての日々がついにはじまろうとしている。身の置きどころが変化するということ、それこそが見どころでありました。しっかり読ませていただきましたよ。
『スローループ』
ひとり釣りに出かけるひより。言葉少なに、ただただその行動を追うかのような描かれ方は、淡々と釣りに臨むひよりのスタイルがそのままかたちになったようで、またこういう表現も面白いなと思わされました。
満開の桜の並木を抜け川縁を歩くひよりの姿は、大きな景色の中、ぽつりと小さくて、それがまたこの子のあり方を物語るように感じられます。自然を前にひとり対峙している、そんなこの子の向き合い方が不思議とこの子の気負わない姿勢を浮き立たせて、ロッドを手に魚と格闘する様子も、あたかも対話しているかのよう。ひよりにとって釣りとは、魚とのコミュニケーション。魚とのやりとりを通じ、その相手のことも、自分のことも、知っていこうとする、そんな試みのように感じられる描写の連続でした。
そしてこのまま家族でのお花見に移行していく、その流れもまたよかった。ひとりを楽しむひよりと、また同じくらい小春たち家族との時間も大切にしているひより。ふたつの側面がこの子のうちに同居していることがよく伝わってくる、好エピソードであったと思います。
- 『まんがタイムきららフォワード』第16巻第5号(2022年5月号)
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