『まんがタイムきららMAX』2022年4月号、昨日の続きです。
『ぬるめた』
なんか雰囲気違う? あ、制服。なんかお嬢っぽい制服になっとる。と思ったら、こごめがさきなと一緒に保健室に入り浸ってて、あー、なるほど、中学生の頃のお話なのか。なんだか今みたいな雰囲気なくて、どこか沈鬱、アンニュイな空気が色濃い。そんな中学生たち。3年生、受験を目前にしながらも授業はさぼりがち。なにに対してもどこかつまらなそうにしているんですね。
こうした様子を見ていると、高校でいろいろエンジョイしている彼女らとの違い、その中心となっているものがなんなのか、見えてくるように思われて、ええ、くるみですよ。中学の頃の彼女らには、くるみがいなかった。いや、くるみ自体はいるんですけど、高校でのくるみとはまるで違っていて、まず学校には通っていないし、またくるみ自身も内気で弱気なほんとちっちゃな子みたいな振る舞いしていたんですね。
このおとなしかったくるみが今みたいに奔放な性格になったのは、皆とそれだけ打ち解けられたからなのか、あるいはちあきの改造やらなんやらで自信みたいなの持つにいたったからなのか、それはよくわからないのだけど、高校に入学してからの彼女らにとってくるみの存在がどれだけ大きかったのかがうかがえるエピソードであったと思います。
それと、今回、あのワイド四コマ描写がなかったんですよ。和気あいあい、あるいはなにか楽しいことに皆がそれぞれ取り組んでる、そうした情景を描写するページ。それがなかった意味、なんてことも思わせてくれる回でありました。
『リリカお嬢様に振り回される!』
リリカお嬢様が振り回されとる! 永野にではなくて、邸宅に入り込んできた野良猫にでありますね。
リリカのための食事を用意していたら、まさかの展開、魚が猫に奪われて、追う永野、逃げる猫。その前に立ちはだかるのは我らがリリカ嬢なのですが、もうまったく抑止力にならないのね! いや、まあ、そりゃならんよね。とは思うんだけど、ここからの描写がもう面白くって、踏み付けにされた憤りから、永野動力でお嬢様の猫チェイスですよ。ドリフトする車イス、またも抑止力にならない飼い犬シャルロッテ。そして植え込みに突っ込んでいく車イス。
いやもう、これ、ものすごいテンポのよさ。あの茂みの中で顔面強打するリリカとかね、絵面からして面白かったです。
でも、面白いだけじゃなかったんですね。リリカがその野良猫から感じたこと。この子の優しさ、あるいは寂しさなどがうかがえて、ああ、この子もやっぱり悪い子じゃないんだ、そうしたことより強く感じさせてくれました。
『妖こそ怪異戸籍課へ』
新たな登場人物が鮮烈デビューですよ。なんと、山の中、大ナタ持って睦子を追いかけているという、なんだこの物騒極まりないシチュエーション。もとはというと、山で怪我をしたハイカー、白根の相談から始まっているこの騒動。身動きとれずにいた白根を助けてくれたのが、その大ナタの彼女、山姥の葵だったんですね。
それでふたり恋に落ちるとかね、まあ、素敵なお話! とはなかなかならなくて、ふたり正式に交際して、一緒に所帯を持とうとなると、やっぱり戸籍があった方がいい。でもそうしたことを切り出すと葵は姿を消してしまって……。
人に対する負い目とでもいえばいいんでしょうか。かつては人を捉えて食べたこともあった妖怪の末裔であるというその出自ゆえの苦しみがあった。はたして人の社会は自分を受け入れてくれるのか。妖怪である私たちだけが変化を迫られて、人の方から我々妖怪に歩み寄る、そんな選択肢はないのか。
そうした悩みを、睦子の先祖である山ン本が焚きつけた、みたいなところもあったようですね。人と妖怪、その相克や葛藤の浮き彫りにされた今回は、彼ら、ある種異質な存在のともに暮らす社会のあり方に思いを馳せさせる、そうした問い掛けにもなっていたと思われ、それはひいては現実に暮らす私たちにも無関係ではない、異文化、多様性、共存、そうしたキーワードに連なる大きな問になっていたのだと感じました。
しかし葵さん、かつて人を殺めた一族云々気にされてますけど、人からしてが人を殺してますし、襲ってますし、場合によっては食ってますし、そうそう気にされることもないんじゃないかって思いますよ。ええ、今の自分、葵自身が信じるに足る存在でさえあれば、昔の因縁もきっと越えていけるのだと思いました。というか、白根は悠々乗り越えていっちゃってましたね。
- 『まんがタイムきららMAX』第19巻第3号(2022年4月号)
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