『まんがタイムきららMAX』2021年8月号、発売されました。表紙は『ぼっち・ざ・ろっく!』。雨の夜、ひとり傘の下、憂鬱? いやこれで平常運転かな? ちょっと憂いを帯びた表情、物思いする様子など感じさせてくれますね。雨、すなわち梅雨の季節にあわせてのイラストでしょうか。気取るでもなくポーズつけるわけでもなく、笑顔見せるでもなく、あくまでも普段どおりの後藤ひとり。その自然体がこの子のよさだと思うんですよね。というか、緊張すると逆方向に振り切れて、自然じゃなくなる……。ええ、自然体が一番ですよ。
今月は新規ゲストが4本です。
『農道のファッショニスタ』
これ、面白いですね。テンポがいい、わかりやすい、キャラクターがのびのび動いてる。
基本、3人が3人とも無茶ですよね。一緒に出掛けるつもりが、あまりの私服のダサさに悶絶、おでかけはとりやめになりました。いや、ダサいとはいわれてるけど、エキセントリックお嬢サクラコはTPOわきまえてないだけで、決してダサかったりはしないよな……。それに引き換え主役のナーコ、不良っぽいカオルコ、ふたりはきっちりダサかった。いや、カオルコの方がずっとマシか。過剰な装飾をいくつかオミットしたらなんとか戦えるところまで持っていけると思う。対してナーコはすごいよな。制服やと、ちゃんと可愛い子やのになあ。
この子たちのやりとり、わりと危険球投げあうような言動がおかしくて、そのテンポ感、次へ次へと読み進む推進力生み出して、とてもよかったです。さらに男女平等な校風パンチの絵面。こういうスパイシーさ感じさせるインパクトが、ぽんと放り込まれてきて、昔の漫画みたいだ! とか思ってたら最後にまたくるっていうね! いやもう面白かったです。あれは笑いました。
基本、シンプルなのがいいと思います。目的、わかりやすい。キャラクター、それぞれの役割が明確。そしてこの一話で動機づけから目標設定、そして挫折まで描いてみせたの。これがとてもよかったと思います。
『リリカお嬢様に振り回される!』
脚が不自由なお嬢様、リリカ。我が身さえも自由にならないままならなさがためか、あるいは両親にまるで興味を持たれていない、その寂しさゆえか、ワガママをいっては家政婦のユリを困らせる。とはいえ、底意地の悪さ、陰険陰湿みたいなのがないのはいい感じ。むしろ、かまってもらいたさ、あるいは愛されていることの確認行動みたいなのが目につく感じですね。
困らせるようなことをしても受け入れてもらえる、見捨てられない、その確認を繰り返すことで、満たされない気持ちを慰撫している。そうした感触があるのですね。
第一回は、そうしたリリカについての情報や彼女の置かれている環境を整理して、伝えてくれた。そうした印象が強かったです。実際に事件ないしが起こるのか、あるいはリリカに意識変革をもたらすようなきっかけないしができるのか、そうしたことは続くエピソードでもって語られていきそうですね。
『ユメル・マジカル・ボタニカル』
植物園で学芸員として働くシーのもとに突如現れた魔女を自称する少女ユメル。自分を助け、魔法を授けてくれた恩人セラとの再会を願い、託された奇妙な植物図鑑の植物を収集しようとしている。シーはその手伝いをすることになるというんですが、謎の植物をただ探せばいいというのではなく、いわば植物のキメラ、図鑑の絵を頼りに様々な植物からパーツを集め、それを魔法で合成していくことになるのですね。
舞台は植物園なだけに、必要となる素材には困らない。シーの知識で必要な植物を見繕い、その種を採取して魔法で促成栽培していくというのですが、その収集の段階で植物についての解説など入るというのですね。
ちょっと普通のガーデニングにはならなさそうなこの漫画。わりかし危険、それこそ自然の摂理に逆らい、生命の禁忌にさえ触れそうな、神をも畏れぬ所業の数々。でもまあ魔女だもんな、魔法だもんな。しかしこの魔物じみた植物を集めきった先に訪れるもの、それはいったいなんなのか。不安が少々まじるスタートでありますよ。
『いただきますは天使と一緒に。』
漫画家を志すゆり子のもとに現れた、ふたごの天使? めめちゃんとももちゃん。人の世界で迷ってしまった、お腹がすいたというので、食事の用意をしていたゆり子の部屋の戸を叩いたというのですが、もやしの焼肉のタレ炒めでもこんなにも喜んでくれたふたり。その様子に、疲れたゆり子も癒しを覚えている模様です。
しかしこの話、ちょっと不穏さはらんでいるのですか? ゆり子が撮ったふたりの写真。友人に送ったものの、その写真にはただもやしのせご飯が2膳写るのみ。あー、天使だから写真には写らないんかねー。とか思ってたけど、いやいや、ゆり子の幻覚とかそういうのんなの!? だって撮った写真を送る時、いやそもそもそれ以前に撮った時点で、どんな写りか確かめるよね。ということは、この無人の写真にゆり子は天使を見ているというのですか!
実在の天使も写真に写った天使もゆり子にしか見えない。あるいは、そもそもゆり子は存在しない天使を見ている。いずれにしてもゆり子の精神状態、心配されてしまうやつだ! 仮に前者だったとして、天使の存在をどうやって友人に信じさせる?
思った以上に剣呑なシチュエーションかも知れませんね、これ。とりあえずゆり子は強く生きてください。
- 『まんがタイムきららMAX』第18巻第8号(2021年8月号)
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