『まんがタイムきららフォワード』2021年8月号、昨日の続きです。
『スローループ』
『スローループ』は面白くてタメになる漫画。今回は、以前に告知されていたとおり、大晦日のタイイング会が開かれました。楓の獲ったキジのコンプリートスキン。これを資材にしてフライを巻いていくっていうんですが、鳥一羽分材料があるものだから、いろいろやってみよう、オリジナルフライに挑戦してみようという流れができたのが実にいい。自然フライの基礎を解説しつつ、独自性を盛り込んでいけるポイントも示されることとなって、いやあ実にタメになりました。
いや、自分がフライを作ることはこの先一生一度もないだろうと思うのですけども。
恋先生のフライ講座、これが面白くて、クールな印象のある子がね、なんかノリよく授業はじめちゃう、その絵面からが面白くて、それになりよりなにかに詳しい人っていうのは魅力的だ。ただだらだらと情報を流してくるんじゃなくて、適宜ポイントを作りながら、ここという要点を見せていくのが実にいい。ほんと、実に面白かったです。
いくつか気になったポイントもありまして、漫画の感想じゃもうなくなっちゃいますが、ニンフを作る時に鉛のワイヤを使ったでしょう。最近は鉛による水汚染が問題になっていて、散弾とかも鉛使わなくなっていったりしてるわけですが、釣りの資材では大丈夫なんでしょうか。毛鉤も魚にとられたり、あるいは根がかりしたりして、どうしても回収しきれない時があると思うんですよね。と、そういや錘が鉛だったりしたな。このあたりどうなんだろう。後でちょっと調べてみよう。
と、こんな具合に与えられた情報が次の興味を引き出していく。それは、それだけもとの情報提示が魅力的だったからだと思うのですね。
ところで、恋の父上、狙いの魚がかからなくてがっかりしながら帰ってくるの、7年もぼうずなの? って双子のぼうずにいわれてますが、七年ぼうずっていうと海に出る妖怪じみてきますよね。それから恋の母上、ほんとよく似てらっしゃる!
今回はフライづくりあり、蕎麦づくりありと、見どころいっぱい、とても楽しい回でした。
『球詠』
前回に続き、深谷東方戦が描かれて、どんどん調子をあげていく松岡。試合は見事に投手戦の様相を見せ、けれどその戦いの果てに松岡と光、ふたりが互いを知り、認めあっていくように感じられた。その様子が本当に素晴しくて、スポーツを通じ育まれていく感情、友情なのか相互理解なのか、とてもよいなあと思っていたんですね。
でも、ずっと気にかかっていたのが今回のサブタイトル、「気づいてあげられなかった」。光に不調でもあったのか、どこか故障などあったりしたのか。みたいなこと気にしながら読み進めていたのですが、これがまさかヨミのこととは最後の最後まで思わず、でもって終盤に描かれた咲桜戦での鬼気迫るヨミの姿。これまで見せていた、どこかのんびりと、なにより野球を楽しむ姿とはまるで違う、魂を削るかのような渾身の投球。敵意さえ感じさせるその様子に驚かされてしまって、いったいなにごと!? なにがあった、どうしてここまで!? 当惑しないではおられなかった。
これについては次回以降に語られるのでしょうが、ほんと、予想もしない展開に茫然とする思いです。
『ちょっといっぱい!』
ちゆりの送別会。店にやってきたちゆりを迎えるはお店のスタッフ一同。たくさんの料理、そして飾り付け。もう見事なサプライズで、さらに渾身の寄せ書きまで。
これね、寄せ書きをただそのまま渡すのではなく、酔っ払い、ええと、花園の飛び入り追記を経た後に渡されることとなったの、すごく大きかったと思う。寄せ書きがある、思いの丈を込めました。けれどその披露は花園の介入で先延ばしにされて、その間、なぜちゆりがここで働くこととなったのか、ここでなにを経験し変わってこられたのか、そうした話をする余地が生まれた。
この余地が場を温めて、寄せ書きに込められた思いの数々、それをばっと広げふくらませるための助走となったのだと思うのですね。
いやもう、あの寄せ書き、それを見せられただけで感動的だと思いました。皆にとってちゆりがどれだけかけがえのない存在であったか、その感情が一度に押し寄せるようで、ああ、本当にひとつの節目だなあ。ちゆりの卒業は寂しいけれど、でもいい送別会になったなあ。
などと思ってたら、まだこの上に思いは重ねられて、送別会ではずっと明るく振る舞っていた真澄の本心、それは皆の帰った後、店長を前にしてはじめて明らかにされるのですね。ああ、ずっと我慢してきた、こらえてきた思いの一度に溢れるその様は、胸苦しさ感じさせるまでに深くしめやかで、ああ寂しいね、悲しいねと、ともに思わずにはおられないものでありました。
- 『まんがタイムきららフォワード』第15巻第8号(2021年8月号)
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