『まんがタウン』2021年7月号、発売されました。表紙は『かりあげクン』。植田まさし先生画業50周年とありまして、かくしてかりあげ正太も紋付袴でご挨拶でありますよ。いやあめでたいといいましょうか、すごいですよね。自分が子供の頃にはすでに大人気で、いくつもの連載があって、どれもが単行本になってて、みたいな印象がありますよ。で、どれも面白かった。それぞれに個性というか違ってましてね、中でも好きだったのは『かりあげクン』でしたねえ。いや、『フリテンくん』とかも読んでましたけどさ、小学生は麻雀やらんしさ、体で払うネタとかわからんしさ、やっぱこのへんは懲りないいたずらを素直に笑って楽しい『かりあげクン』が圧勝でしょう。みんな読んでた、そんな印象ありますよ。
今月は新連載が1本、新作ゲストが1本です。
『んじゃま、ここらでお茶にしましょうか。』
さすが胡桃ちの、ベテランの技だと思う。ざっと初回で主人公のキャラクター、思い切りよくて、ちょっと粗忽で、コミュニケーションに長けていて、そして食べることが大好き、そうしたことがしっかりばっちり伝えられつつも、人物紹介に留まらずひとつのエピソードがしっかり展開されてまとまりもって締められる。
しかもこのエピソードに、吉野山の桜についての情報盛り込み、重ねて当地の名物、柿の葉寿司にさくら羊羹紹介していく流れ。こうしたところも実にうまいと思うのですよ。
四コマ漫画って、いろいろ情報盛り込んでいくタイプのジャンルがありますが、食事、旅行、レシピとかですね、これもその系統と考えていいのかな? 奈良吉野が毎回の舞台となるのか、あるいは次は違う土地、違う風物に名物を紹介していくことになるのか。後者かな? こうした話の広がっていきそう感を見せていくところも絶妙だったと思います。
しかし、吉野山を取り上げるのに葉桜の時期を選ぶというのもまたすごい。あえてハズしてくる。いや、普通桜の盛りを描きたくなりそうなもんじゃないですか! これもまた思い切りでありますね。
『相方が俺を好きすぎる』
コンビ解消したばかりのお笑い芸人のもとに相方志望の若者が現れる。その彼が自分のこと好きすぎるっていうんですが、のっけから自分の顔プリントのシャツ着てくるとかね、えらい方法でファンアピール。好きなんだな! というよりも、ヤベえ! ってのを的確に表現してきたの、見事でしたよ。
この彼が、寡黙ながらも時に情熱的にぐいぐいと迫ってくるところ。結構な恐怖展開でもあると思うんですが、あんまりそこまでヤバいと感じなくなってくるの、なんだかんだでキャラクターの持ち味なのかな。主人公の天津昇のちょっと気弱な感じがうまく利いてると思う。いくらなんでも自宅に呼んじゃうのはマズくない!? と思ったらもうご飯まで作ってもらってるしというスピード展開。ぐいぐいいかれてるやん! これは櫛田泰斗、ヤベえファンの押しの強さがためなのか、あるいは断わりきれなかった!? 後者だろうなあ。ってのが読んでいくほどに強く感じられるのはよかったです。
泰斗、わりと昇への気持ち、しっかりしたもの持ってるんですよね。でも言葉が少なすぎてルックスで一目惚れみたいになっとる。ヤベえ。でもって的確な説得、そして抱擁!
いいのではないでしょうか。いいのではないでしょうか。次回も期待したい、そう思わせる初回でしたよ。
『ルナナナ』
これ、いいですね。月ならではの事情盛り込んできて、そうか月ってそうなのか! そうした意外さ感じさせてくれた上で、作者の持ち味っていっていいでしょう、それでそうなっちゃうの!? みたいな展開してみせるのが本当に面白かった。
今回の月情報は自転速度ですね。月の一日は約4週間です! っていうの。なので、昼と夜が2週間ずつ続く。なるほどなあ、地球に同じ面を向けて一ヶ月かけて回るんだからそうなるよなあと思わせるのが最初の意外で、そこに乗っけてくるのが、月の日の出は祝日。日の入りは労働報酬半額。日の出の祝日はわかるけど、なんで日の入りは罰ゲームに罰ゲームを重ねるみたいなことになっちゃってるの!? ええ、こういうバランス感覚いかれてる様子を具体例もって見せてくれるところ、思わずふふふふって笑ってしまう、そんな面白みあるんですね。
実際、夜が2週間続いてからの夜明けって相当なテンションになってしまったりするものなんでしょうか。かも知れんなあ。街も賑わいを見せて、まさかの路上パフォーマンスで小遣い稼ぎとかね、でもこれ寮則違反なのか。ぱっと稼いで、ぱっと飲んで、それでふらふらしてたらまたお金が増えてるとかいうのも、なんか楽しくてよかったんですね。
この常識からズレた感覚と、なんかわかるという共感。その合間を突いてくるようなバランスが絶妙だと思います。そこに加えてあの見事な落ち。あー、冒頭の振り! じっくり見せてからのきれいな回収。見事でした。舌を巻きますよね。
- 『まんがタウン』第22巻第7号(2021年7月号)
0 件のコメント:
コメントを投稿