『まんがホーム』2020年3月号、発売されました。表紙は『らいか・デイズ』、らいかが胸にチョコレートの包みを抱いて、なにやら不安げな表情。ああ、これは思いを伝えにいこうという、そんな情景であるわけですね。本編でこそ竹田と揺るぎない関係築けているらいかだけど、もしそうじゃなかったらこんな表情をみせることもあったのかも知れませんね。他に『河原課長とギャル部下ちゃん』三崎は渾身のチョコができたのかな? 早速スマホで撮影です。『キャバ嬢とヒモ猫』詩織はおそろしく豪華なボンちゃんあしらったチョコ作ったみたいだけど、残念ボンちゃんは食べられない。それでなのか、詩織さんがさっそく耳かじってます。『孔明のヨメ。』は、茶運び人形ならぬチョコ運び月英人形でしょうか。まさに届いた贈り物。嬉しそうにしている孔明がいいですね。
『孔明のヨメ。』
新野から樊城への引越し。まさか民までもがついてくるといいだして、さあ大変。加えて劉備が最後のひとりが避難するまでここに残るだなんていっちゃったから、輪をかけて大変なことになってしまって、ええ今こそ孔明の力の見せどころです。
的確に状況をみて、自軍のリソースを割り振っていく孔明。その卒のなさはさすがで、けれどこの確かな采配のかげにはかつての戦災の記憶がある。それを知る劉備たちの感慨、それはちょっと切なさを帯びて、今度の戦いではもうそんな悲しいことなど起こらなければいい、そんな叶いそうにない願いを思ってしまいます。
喫緊の状況で役割をはたすべく考えをめぐらす孔明ですが、取りこぼしていたこと、それがなにかというの、荊州の行方か! このタイミングで劉表が死去。息子劉琮に継がせるか、あるいは曹操に対抗すべく劉備に任せるか、ふたつの選択肢が託された蔡夫人。いやまさかこの人が劉備に荊州を与えるなんて選択するわけないよね! そう思ったら案の定、どころか、蔡瑁の発案受けて、曹操に降伏してしまうってのか。
これ、樊城に無事たどりつけても、もう荊州からのバックアップは望めない。どころか敵にまわる可能性まで出てきているわけで、ピンチもピンチ。ここからの顛末、どう描かれるか、そこが楽しみでありますね。
『天国のススメ!』
草間、ただでさえオカルトマニアという業を背負っているのに、これに加えて罵倒されて喜ぶまでにいたったというのか!? いや、ここは前向きに、罵倒してきたのが霊だったからという理解でいこう。というか、相手が霊ならなんでもいいのか。いろいろ心配になってしまうボーイです。
美しい歌声でいざない、そして罵倒する霊の噂。見事に草間がやられてしまっていたわけですが、この歌声の主、その思いというのが切々としてひたむきで、かなうべくもない、そんなことはわかっていながらも、一縷の望みにかけて届かないかも知れない歌を歌い続けていたというのだからいじらしい。
この漫画は、霊といえどもこうやって自分の思いを大切にただただ大切な誰かに届けようとしている、そんな姿が印象に残って、今回も、生前に応援してくれていた名も顔も声さえも知らぬ誰かに、感謝の気持ちを届けようとする思いが描かれて、切ない。この願いのかなうところがこの漫画の甘さであるのかも知れないのですが、それはすなわち優しさで、その優しさにこそ胸打たれる思いがするのです。
『恋はリベンジのあとで』
タイトルのとおりとすれば、今はまだリベンジのターンであるわけですね。
小学生のころの因縁が残る鬼久保花き園芸の娘、泉と、役所で働く石田。園芸好きの上司によく思われようとしてますよね、石田、鬼久保社長に挨拶にきたところ、まさかの泉と対面。この、よく思っちゃあいないが波風立たせたくない。穏便にすませるべく、せっかく石田が上辺ばっちりとりつくろってさらりと流そうとしたのに、相手にされないのが気に食わない泉、まさか煽ってくるんだ! 社会人としていろいろあかん人や! いや、あるいはそうであってこその辻灯子漫画の主人公って感じでもあるのだけど!
タイトルにいうリベンジというのは、便宜図るといってしまった泉を、上司の覚えめでたくすべく活用する石田のそれであるのか、あるいは泉にも、かつての職場での、得てそして失うこととなったいろいろ、人間関係のもろもろ、そこに向けるなにかが今後あろうというのか。
ともあれ前者、石田のリベンジでいうならば、その後に恋がくるというのでしょう? ということは、まさしく園芸好き上司こそが恋の架け橋になるってわけでありますね。上司、知ることがあったらびっくりですね。
『僕のパパになってください』
実は結構好きなんです。
一度は灰田と距離を作ってしまった春樹だけど、灰田からのクリスマスの呼び出しに応じてみれば、まさかのサンタクロース姿で現れる灰田ですよ! あまりに驚いたんでしょうね、思惑も疑念もなにも吹っ飛んでしまって逆に素直になれたようで、素直な笑顔と、それを受けてめてくれる灰田ですよ。ふたりの関係はなにか不思議な縁ではじまった、擬似的な親子関係であったわけだけれど、それをずっと大切にしてくれている灰田の思い。それがまたクリスマスのプレゼントにも現れていて、この心情、しっとりとして暖かで、これは美しかったな。
次回クライマックスということは、芳文社用語からすると最終回ってことですか? ともあれ、クリスマスを楽しく過ごしたその夜の、いつになくしみじみとした語らい、そっと気持ちも寄り添うかのようなふたりの距離。それが優しくて、やわらかな時間、ふたりのともに得られなかったり失ってしまったもの、それを取り戻すでもなく埋め合わせるでもなく、けれど新たに大切ななにかを育もうとする、そんな様子を思わせて、とてもよかった。
このふたりの今後がどうなるかはわからないけれど、それでもふたりがこの関係を、互いの存在を大切に、いつくしむように過ごしていくこと、それを願わせる情景でありました。
- 『まんがホーム』第34巻第3号(2020年3月号)
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