これをタイムリーといっていいものか。『ぷれっぱ!』。プレッパーとは備える者という意味。いつか起こるかも知れない災害に備えるべく、物資をたくわえ、シェルターを整備する。舞台は天羽学園防災部。起きないと信じつつ備えるをモットーとする彼女らの活動を通し、防災対策について知ることのできるというこの漫画。折しも我々は、災害とその備えについて意識せざるをえない状況にあって、猛威を奮う台風、いつ起こるかわからない地震、ひとたび被災すれば日常は簡単に非日常に変わり、当たり前が当たり前でなくなってしまう。そうした現実、可能性を前に我々はなにをどう備えればよいのか。この漫画を読むことで、具体的な行動の指針を得ることもできるかも知れません。
とはいうものの、『ぷれっぱ!』は学習漫画っぽくないんですよ。作者は氷川へきる。『ぱにぽに』の作者、といえばわかってくれる人も多いのではないかと思うのですが、あの投げっぱなし? 人を食った? なんともいいがたいテイスト、作風はこの漫画にも健在で、読み手を選ぶかも知れない、そんな感じがひしひしとしています。
私なんかはかなりこういうの好みなので、もう始終笑いながら読み進めることができましたが、例えばうちの年寄りとかに、防災に役立つ漫画だから読むがよい! といって渡して、そのまますんなり読んで、受け入れてくれるかというと、無理かな? っていわざるをえない、みたいにいうとわかってもらえるでしょうか。
だから、まずは自分が読んで、漉しとった知識でもって周囲をリードせよ! この漫画を防災に役立てるには、そんな具合にするのがよさそうです。
防災に対する情報は、作中でもノルマだなんていってますけど、シチュエーション含めちゃんとした説明とともに紹介されるので、読んで無駄になるってことはまずありません。食品の備蓄について、どうするのがいいのか。定番の非常食を買い置きするだけでなく、普通の食品でも、多めに購入したものを普段使いして補充するのがいいとかね、ローリング・ストック方式がわかりやすく紹介されているし、災害時の定番品とバリエーションみたいなのにも軽く触れられているなど、その見せ方は幅広く柔軟です。
まずは漫画で様々な情報に触れ、続くコラムにてしっかりと学ぶというのが基本でしょうか。避難について、備蓄について、具体的にどう行動すればいいかなど、まずはこれをとっかかりにさらりと概観できるように作られています。気を張るでなく、氷川へきる漫画を楽しむついでに防災について知り、さらなるステップアップをはかるなら、『東京防災』などそれに特化したものを読んでみたり、あるいは地域の防災イベントに参加したりするのがよいのではないか。そんな風に思いました。
この漫画では、賞味期限を迎える前に備蓄品を消費するイベントを開いたり、普段から備蓄食料を提供したりする様子が描かれていて、これは防災を身近なものにすることの大切さの指摘でありますね。皆が理解者で協力者で参加者なのが防災の理想形
、我々の敵は無知や無理解
などの言葉は実に示唆に富んでいて、防災の現場においては、ただサービスを提供されるだけの受け身でいてはいけないこと、個人として災害に備えるとともに社会がどう災害に向きあっているかを知っておくことの大切さ、そしてそれら意識の醸成には普段からつとめるべきであることなどなど、登場人物の姿勢や活動、その言葉をきっかけに考えたり、気づけたりすることも多い、そんな漫画にしあがっています。
- 氷川へきる『ぷれっぱ!』第1巻 (電撃コミックスNEXT) KADOKAWA,2019年。
- 以下続刊?
引用
- 氷川へきる『ぷれっぱ!』第1巻 (KADOKAWA,2019年),23頁。
- 同前,35頁
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