2019年10月23日水曜日

『まんがタイムスペシャル』2019年12月号

『まんがタイムスペシャル』2019年12月号、一昨日の続きです。

『六畳一間の憑き物石』。オカ研の亜依さん。瞬に入会を断わられてめちゃくちゃショックを受けてるの、気落ちしてる様子、気の毒なんだけど、この人、なんだろう、可愛いよなあ。この作者の漫画は人が可愛い。見た目とかではなく、その人の振る舞い、人となり、そこに愛らしさをのせてくる、そんな才能があるのだと思います。さて、瞬が入会を断った理由。漬物を食べたことでこいしのことを見えるようになったからというのだけど、この新たに増えた見える人。いずれその存在を目撃されてしまうのでは? なんて思ったら、ああー、まさに今回がそうでしたか。亜依に見られて、観念して、瞬もこいしもオカ研で活動する、そんな流れなのかなあ。と思ったら、そこにさらにこいしが見られてしまう異なるシチュエーション盛り込んで、ああー、そういう展開するとは予想外。予想外にして、なるほど乗り切れたと思ったピンチ、この動揺がために見事にバレましたか! もう誤魔化しも無理なレベルでバレましたか! でも、これ、亜依に見られたこと、これはもう大丈夫っぽい。ってのは、瞬に見られたのが大丈夫じゃないからか。この照れるこいし、鈍い瞬、ふたりのやりとり、なかなかに通いあわなくて、ちょっと微笑ましい。ふたりの関係、これでちょっと変わったりするのかな? 亜依の介在、これもなんらか影響しそうですよね。

『コスプレ地味子とカメコ課長』。課長が紫ノ井の家にやってきた。おお、さすがの課長も緊張するんだ。やっぱり女性の部屋だから? と思ったら、どうも違うな、なんか聖地巡礼っぽいノリになっとるよ? 自分の部屋に男性が? っていうので意識しちゃってる紫ノ井だけど、課長はそのへんは気にしないのかな? そう思ったら、あー、やっぱり意識はしてるみたいですね。紫ノ井の一人相撲みたいな話ではない。あのジッパーのくだりね、あの緊張しまくってるふたり、微妙に面白い。しかしこの漫画、コスプレイヤーの紫ノ井に対してもそうだけど、衣装の作り手としての紫ノ井にも課長がリスペクトを惜しまないところ。むしろ敬虔とさえいっていいほどに尊重しているところ、それがいいよなって。課長の態度、それが実に自然と思える。大げさでアンバランスでさえあるんだけど、それが不思議とおかしくない。いい魅力になってると思います。

『タヌバレ』。実は結構好きでした。まだまだ伸び代のある、そんな雰囲気ではあるのだけど、それだけに今のこの雰囲気、愛らしいキャラクターと楽しい雰囲気、それが貴重とも思われて、だって今あるこのよさというのは、作者の持ち味そのものだと思ったからなんですね。うまくなることで、このよさを伸ばしていけるのか、あるいはもっと違うよさを身につけていかれるのか、それはまだわからないのだけど、もしこの漫画が長く続いたら、そうした可能性、変化なんてのが見られたんだろうな。なんて思うから、この漫画の終わってしまったこと、さらにいえば、こういう漫画の受け皿となって、育て伸びていく場としての雑誌が失われること、残念に思われてならないのですね。

雑誌が一誌なくなるということは、掲載枠が一気になくなるわけで、スペシャルから他系列誌に移籍する漫画もあること、それ自体は嬉しいことではあるのだけど、それは逆に他誌の枠が減るということでもあって、それはやっぱり損失だなって思わざるを得ない。新たに現れる才能、育っていく才能、その可能性の場が減ってしまった。確かに今はwebが発表の場として(以前よりも確実に)機能していて、そこから現れる才能もある、そこで育つ才能もあるわけだけど、反面webでは見出されない表現もあるはずで、だからこそそうした場のひとつであったこの雑誌が休刊してしまうことを残念に思っています。

休刊を一番残念に思っているのはその作り手であった出版者、編集者、作家でありましょう。その可能性を信じていたのもおそらくは彼らでしょう。かなうなら存続させたい、そうした思いもきっとあったろう。それだけに雑誌という媒体を続けることがもう難しいという現実がつらく、歯痒い。こうした流れはもうとまらないのかも知れません。時代の節目に立っている。そういうことなのかも知れません。

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