『まんがタイムきららフォワード』2019年12月号、昨日の続きです。
『球詠』。うわー、今回、冒頭からすごいな。柳大川越によるヨミ攻略ですよ。皆でヨミの投球フォームを分析していく。ヨミの投球場面、球種ごとの違いを比較して、明確なクセがある強直球を確実に見抜く。強直球は脅威ではあるものの、くるとわかっていたら対処できる。その恐怖。今はまだ対応しきれていないけれど、回を重ねるうちにタイミングもあわせてくるだろう。いずれ通用しなくなる、そんな状況で、こちらも相手の球に手が出ない。当ててもうまく処理されて、一進一退、どちらもこれといった当たりがないという中、悪送球で2塁打をこうむってしまう新越谷。これ、ほんと、ここから相手の流れになりそうな感じがある。ヨミの決め球を攻略できる、その確信がある柳大川越。対し新越谷はエラーをひきずりそうな気配漂わせて、ああ、怖い。ここで負けるわけにはいかんのですよ。まだまだ勝っていかないといかんのですよ。でも、ここから勝つにはどうしたらいい? ヨミの投球数、その多さも気にかかる。いやもう、ここにきて過去最大級のハラハラです。
『はるかなレシーブ』。この漫画は、ビーチバレーを通じ対話を重ねていくはるかとかなたの物語。改めてそうしたこと思わされた今回。はるかなの追撃をかわし、その攻撃を寄せ付けない夏希、沙都子組。あまりに手強いふたりに対峙して、なぜ沙都子は前に出ようとしないのか。はるかの感じた疑問が攻略の糸口となるのだけど、それは相手の弱点を突くのではなく、ただただ理解しようとする意識というのが素晴しいなって思ったんですね。沙都子へと一歩踏み込もうとするはるか。その姿勢は、沙都子を知り、沙都子の気持ちに寄り添おうというものに他ならず、たとえそれが攻略の足掛かりとなったとしても、敵対する気持ちじゃあないんだ。深く理解し、より近しくあろう、いうならば仲よくなろうとする意識になんら違いのないものなのだ。そんな風に感じられたのですね。この戦いの先にあらわれる関係、見えてくる景色がある。そのいまだたどりつかぬ場所への歩みがいよいよはじまって、ああ、なにを見せてくれるのか。ただ勝負の行方が気になるだけでないこの幅の厚みが実に魅力的です。
『SA07』。絵について、人と人の関係について、しっかり踏み込んできていい感じですよ。今回はクロッキーをやります。って、未体験の人もいるだろうって、小中でクロッキーやらんかった? 短時間で描く訓練。対象のかたちを捉え絵にする。ああ、美大にいった友人が延々やっとったなあ。こうした教室だけでなく、それこそそこらに立ってるだけの人でもなんでも手当たり次第に描いてた。今回は、そうしたとにかく描くということの大切さが語られたり、またこのたくさん描くということ、うまいと思ってる人がどれだけ描いてるのかって聞いてごらんって先生にいわれてね、ああ、絵を学ぶ同志としての関係性、そこにひとつのとっかかりができたじゃん。そして、宮田と茉愛の関係、いろいろあってちょっと気まずくなったふたりだけど、その関係修復の兆し! これも絵とおんなじかあ。はじめての気持ちにどしたらいいかわからない。人との関わり、その経験が少ないせいでどう接したらいいかわからない。そんな彼、彼女の、いろいろ話して知りあって、ちょっとのことでもう以前とは全然違う関係になってという、その様子。ああ、これも絵と同じだなって。たくさん描くこと、たくさん知っていろんな気持ちを経験していくこと。この重ねていくということが、この漫画のテーマなのかもと思わされたエピソードでありました。
- 『まんがタイムきららフォワード』第13巻第12号(2019年12月号)
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