『まんがタイムきららMAX』2018年2月号、昨日の続きです。
『TCGirls』、本当に面白い。文化祭でTCG体験会をやる。その様子なんですが、アン、のっけから飛ばしてますよ。イベントにふさわしいコスプレを追求するのはいいけど、それで無地のカード!? なにかさっぱりわからない、謎の白ぬりかべ、あるいは豆腐。伝わってなさが素晴しい。しかも、チラシに描かれてるのと、実際の体験会の雰囲気、ずいぶん違っていて、これ、再現性の問題じゃないよね? 方向性が違うよね? って、これ、アンの都合か。なるほど、担当声優箔押しサインカードっていうのが封入されてるキャンペーンやってるのか。サインカード欲しさにアンがこれをチョイスしたわけか。ほんと、アン、やりたい放題です。今回ね、いろいろ明らかになったことがまたおかしくて、シオンも参加してたティーチングビデオなんですが、この体験会のプレゼン目的って知らされてなかったとかね、アン、手段を選ばないな、君! ニイナに着せた衣装も、アンの一推し。このアンのやりたい放題。でも、なんか面白くて、楽しくて、クラスの皆もうまいこと乗っかてきて、この一体感がすごくいい。メイ参戦からの流れもね、まったく予定にないのにエキシビションマッチにしてしまうとか、でもってメイの実力発揮できなかった理由とか、これね、アンがやりたい放題やってるように、クラスの皆もやりたいようにやってる、その気兼ねのなさがよかったのだと思ったのですね。でもって、アン。これ、目的達成なんでしょうか。最後に描かれる皆との隔たり。ええ、この台無し感。これでこそアンなんでしょうね。
『こみっくがーるず』。これ、いい話だなあ。琉姫と翼のデビュー前からの物語。琉姫のピンチを救ってくれた、これが琉姫と翼との出会いだったんですね。この出会いをきっかけに、翼が漫画を描くことを知り、また母の厳しさに疲弊してる翼にとっては、琉姫のそばが安らげる場所になったりと、ああ、ふたりの関係の深さというもの、よくよく感じられる話でありました。ふたりで漫画を描くのが楽しくて、本格的に道具を揃えて、出版社に持ち込んで — 。ふたり一緒に支えあいながらステップアップしていくところなどね、見ていてまぶしく感じられるほど。大人向けの雑誌を紹介されたものの乗り気でなかった琉姫が、なぜその道を選択したのかも、そうかあ、琉姫にはここでなんとしても漫画家としてデビューしなければならないわけがあったんだ。琉姫、翼を救いたい一心だったんだなあ。その思い、その気迫、胸に迫るものありました。子供の頃は自分の好きなものを好きといえなかった、そんな琉姫が好きな友達のためにあそこまで行動できるようになった。その成長、秘めた強さを見せたところなど、涙ぐむ思いで読みました。
『夢見るプリマ・ガール!』。ダンスに出会った小さなみゆの思い出。世界がキラキラと輝きだしたという、その輝きの先に今回のステージはあったのだ。そうしたことをしっかりと見せようとする描写は、言葉少なく、絵の力によってダンスと、ダンスに打ち込む彼女らと、そしてそのすべての輝きを、雄弁に物語るものであったと思うのです。ステージに向かう彼女らの後ろ姿。みゆのその立ち姿、足の自然ととったポジションからさえも、この子のこれまで積み上げてきたものが見えた気がしました。そしてそれからの描写の連続は、ひとりひとりにスポットライトをあてるかのように、踊る彼女らの身体の躍動や高揚、ダンスを好きだという気持ちさえも明らかにして見せて、美しく、華やかにして晴れやか、皆ののびのびとして健やかな魅力を引き出して、素晴しかった。続くみゆのモノローグに、自然心も寄り添うように導かれて、ああ、いいステージだったなと、演者である彼女らにとっても、それを見る観客にとっても、彼女らを見守ってきた人たちにも、ひとしくよいものであったのだと、心の底から思わされたのでした。美しかった。最後のみゆの表情も高揚を残しながらもさっぱりとして、とても美しかったです。
蛇足ですが、踊っているみゆの上半身の肉付き。細身に見せて筋肉質ということがわかる描写、これもすごかったですね。ちょっとただごとではない感じがしました。
『FASHION MUSIC』。なんだろう、不思議な面白さがありますよね。皆でカラオケにいくことになりました。皆が皆、楽しみにしているのはいいとして、AM3時、眠れないって、よっぽど楽しみなんだね! 有紀がギター持ってやってきたのがいいですよね。ええと、まだ弾けないんだっけ? このカラオケ店ではマイクスタンドが借りられるからって、ギター弾きながら歌う、そんな気分になりたいっていうのがね、ちょっとアホっぽいけど素朴な憧れ感じさせて、面白いし、可愛いなって思っちゃいましてね、でもって実際借りるかというと弱気になっていいだせないとか。百合、ナイスサポートでしたよ。歌う様子、選ぶ曲に、皆それぞれの個性が見えて面白いかと思ったら、やっぱり有紀が全部持っていきますよ。セッティングから考えてて、しかもライブ形式。あの、歌ってるところ、いい雰囲気じゃないですか! これだけで全部持ってっちゃうくらい魅力的な見せ場になってましたよ。でもってMC入れてきた! って、ほんと、この子、楽しいなあ。まだバンドとしてはかたちになるところまでいけてないわけですが、それでも一緒になにか方向性を見付けだそうとするかのような姿、様子が魅力的です。最後のバンドを組もう! ってとこから、有紀の歌詞が没になるところまで、一連の流れもね、皆のわくわく、浮き立つ気持ちが感じられて、大変によかったです。
『いちごの入ったソーダ水』。ひとつの節目となる今回描かれたものもまた素晴しくて、いよいよ進級する彼女らの、別れとまではいわないけれど、ずっと一緒に過ごしてきた月とこひめの独り立ち、変化と成長を感じさせるような描写には、埋めがたい空白と、けどもうこの子は大丈夫という信頼とを感じさせてくれるよさがあって、ああ、これは作者の力量たっぷりにして実に豊かでありました。漫画に描かれる人たちにそそがれる愛情なども感じとれるようで、細やかな描写に、切なくて、いじらしい、そんな感情の降り積むような思いがします。杏奈のくだりもね……、素晴しかった。
- 『まんがタイムきららMAX』第15巻第2号(2018年2月号)
0 件のコメント:
コメントを投稿