まさか、こんな展開があるとは想像だにしませんでした。京都市地下鉄や市バスのアピールのために生み出されたキャラクター、太秦萌であります。もともとは、若手職員有志によるキャンペーンプロジェクトだったんですね。その名も燃え燃えチャレンジ班? 地下鉄の広報キャラクターといったらよいのかなあ、「太秦萌のおふたいむ」なる四コマ漫画があったりしたようで、好評だったのか、家族以外のキャラクターが増えたりなどなど、じわじわその存在感を増していたのですが、キャラクターが現在のものにリファインされて、なんだか爆発した模様。気付けば京都学園大学に従姉が通っていたり、京都国際マンガミュージアムにも関連キャラクターがいたりして、いったいどこまで広がるのん? そう思っていたら、北神急行電鉄も触発されてしまった。いやもう、この一連の展開、素晴しいな、わくわくしながら見守っていたのですが、それがまさかのライトノベル化、しかも講談社ラノベ文庫からの発行というのだから驚きました。いやあ、ほんと、いきなりの全国区じゃありませんか。もう、盆と正月が一度にきたみたいな勢いで、これ、もう、ほんと素晴しいですよね。
発売日、いつも利用している書店の棚をひとめぐりしてみたのですが、残念、売ってませんでして、ああ、やっぱりなあ、私は京都在住とはいえ京都市民ではありません。京都地下鉄の沿線でさえないわけで、そうなるとやっぱり周辺の動きは鈍い。むしろ、このあたりだと京都学園大学の太秦そのの方が目立った活動しています。しかたがないので通販で購入して、その後電子書籍になったから電子でも購入した。いえね、もうね、電子じゃないと読めないんですよ。講談社だからいずれ電子化するだろう、そう思ってはいたんですが、それを待てずに冊子体を購入してしまう、そうしたところに私の太秦萌への傾倒を感じとっていただけますとさいわいです。
時間を見つけては、少しずつ読んでいってますよ。まだ序盤を抜けたところ、いよいよ本題に踏み込もうといったところで、だからまだなにも語れるほどではないんですけど、それでもね、やっぱりいろいろ思うところがあるんです。舞台がですね、京都でしょう。京都市民でないとはいえ、地下鉄を利用する機会はあるわけです。また交通機関を利用せずとも、いろいろ市内を移動したりもするわけです。土地勘があるんですよね。ああ、あそこか。ああ、あれか。いろいろ思うところがあるんですね。これ、最近は聖地だ巡礼だっていいますけど、アニメやなにかでその場所を知り、実際に赴く。その逆の体験ができるのは実に新鮮でありまして、ああ、これきっと東京在住者だと日常茶飯事なんだろうな、みたいに思ったりもするんですが、ともあれすごく面白い。北山駅を利用する萌が、京都市立芸術大学の学生の作品展示を見るところとか、ああ、あの通路かってわかる。三人の待ち合わせる烏丸丸太町の交差点もありありと情景が目に浮ぶ。京都国際マンガミュージアムだってそうだし、鴨川デルタなんて、たまさかついこないだいったところだよ! しかし、鴨川デルタで、小野ミサが、アニメの聖地だとかいって写真撮ってたりするのね。しかもこの子、そのアニメがきっかけでギターはじめたりしてるのね。ってことは、ギター買ったの、あそこかー! みたいなことを思うわけで、ほんと、なんだろう、キャラクターの設定、うまいこと面白み加えて、広がり持たせてるわ。そう感じさせられたりしたのです。しかも、この設定、どうも最初からあった模様。すごいよね。
土地の持っている雰囲気を、登場人物と共有している。その感覚があるだけで、こんなにも魅力的と感じるとは思わなかった。あるいは、太秦萌たち、京都地下鉄のキャラクター自体がもともとそうだったのかも知れません。自分たちの暮らす、生活の場所、そこに彼女らもいる、そうした感触が長い時間かけて培われてきた。それがこうして物語に注ぎ込まれたものだから、まるでよく見知った子らが頑張っている、その様子を見守るみたいな気持ちで、一緒に街を散策しているように思える。京都に暮らす彼女らと、彼女らの暮らす街、京都、その両者がともに主役となって、物語を動かしている、そうした思いがするのですね。
ところで、都くん。いったい誰かと思ってたら、なんと、君か! 君、都くんか! 知りませんでしたよ。それと、お姉ちゃん、太秦麗、いいですよね。
- 幹『京・ガールズデイズ — 太秦萌の九十九戯曲』賀茂川イラストレーション (講談社ラノベ文庫 — 「地下鉄に乗るっ」シリーズ;第1巻) 東京:講談社,2015年。
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