『まんがタイムきらら』2024年1月号、発売されました。表紙は『星屑テレパス』。睫毛に涙をためた海果が抱きしめるのは瞬。そのいつになく気弱な表情は、素直な気持ちのあらわれでしょうか。こうしてふたり、気持ちと気持ちを通わせあっている。おでこぱしーならずとも、こうして伝わる思いがある。そのあたたかさ、そこには思いやりやいつくしみがある。そう思えるイラストなのであります。
今月は新規ゲストが3本です。
『ほしのおにわ』
『ほしのおにわ』とは絵本の名前。そこで描かれていた、死んだらたどりつくという星の庭。それを思うヒロインは、今まさに死に瀕している。いよいよ今際の時、というその瞬間、なんの奇跡がおきたか、この地に降り立った神様の力でもって蘇生。ようやく死ねる、もう両親に迷惑をかけることもない。そう思っていたミライに、生を押し売りするかのごとく押しつけようというのですね。
その理由は自己の存続。ミライがかつて読んだ『ほしのおにわ』に描かれていた神リリィ。今や、その神を覚えているのはミライのみ。ミライがいなくなれば、神リリィを知るものはいなくなくなり、一緒にリリィも消えてしまう。それを阻止せんがための蘇生であったのですね。
かくして病も癒え、ふたたび家族とともに過ごす時間を持てたミライ。母の作ったオムライスを口にしてポツリともらした、生きててよかったの言葉。そこにこそこの漫画の主眼があると思われた瞬間でした。
『はじまりの剣は抜けない』
面白いな。なにがって、この設定が面白い。はじまりの剣は抜けないっていうから、異世界転生みたいなやつなのかな? と思ったら、事故かなにかで記憶を失った女子高生が主人公。その子、ヒスイはかつて中二病だったけれど今やその記憶もなく、生活の片鱗から、周囲の人たちの反応から、自分の中二趣味を知らされては赤面する、そんな日々を送ってるんですが、だいたいにしてこの街自体がどこかおかしくて、あちらこちらに中二的センスがあふれているというんですね。
なぜか? その理由が友鳴松咲から語られる。ヒスイの中二と咲の中二がもとになってはじまった、中二病まちおこし! 公園にひっそりと立つ伝説のはじまりの剣。ヒスイと咲で作ったオブジェながら、まさにこれがはじまりになっていたというのがね、うわあ、面白いなあ! そう思わせるに充分な驚きを与えてくれて、これはいい、すごくいいと思ったのでした。
街のちゅうにセンスは私たちの努力の結晶。ほがらかに告げる咲が素敵でした。で、ヒスイが鼻血ふいて倒れちゃうの!? いやもう、あざやかな導入。これは期待の一本です。
『おかるとすぺーす』
地球を調査すべくやってきた宇宙人、佐藤ユメ。学生に身をやつし、潜入した学校でさっそく迷子になったユメを助けてくれたのが上級生の黒木ねね。職員室に案内すると見せかけて、連れていかれたのがオカルト研究部。
廃部をまぬがれるため、強引な手を使ってもこうして新入部員を獲得しようというのですね。
しかしユメはオカルト研だけは絶対嫌。ああー、宇宙人ってバレるとマズいからかな? と思ったら全然違うんだ! 姉、ユリから強引に見せられたオカルト番組が心の傷になっていて、もう駄目っていうんですね。
でもオカルト部部長の長谷川なおは本当に強引。まるで話を聞いてくれない。副部長の市原小雪はまだ話がわかりそうなんですけど、なおの勢いをとめるには至らない。そんな彼女らが繰り出した旧校舎にて、出会ったのは謎の白いふわふわ。ケセランパサラン? いや、こんなデカいケセランパサランはいない。
でも謎のこいつ、ユメに懐いちゃったもんだから、ユメも気を許して、こいつのお世話だけならと部に身を置くことにしたんだけど、こいつ、見た目は可愛いけど食事する時は怖いな! あれだ、クリオネのたぐいだ! ほんと、ユメ、はやまっちまいましたね、というお話でした。
- 『まんがタイムきらら』第22巻第1号(2024年1月号)
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