2022年8月7日日曜日

『まんがタウン』2022年9月号

 『まんがタウン』2022年9月号、一昨日の続きです。

『押しかけギャルの中村さん』

久しぶりのバイトの情景。ずっと家の様子を見てきたから、外での雰囲気、その違いなどやっぱりずいぶん違うと感じられて、屈託なくやりとりしている中村と後藤を見てもやもやを溜め込んでしまう秋山とか。いや、これはふたりの仲に対する嫉妬とかじゃなくて、お高めの日本酒とかドデカいパフェの注文を成功させたふたりに対するもやもやか。

なんとか陽キャを装おうとするもどうにも無理がある秋山の苦難。注文をとるよりも、酔客に面白がられて困ってる様を肴にされてしまって、いや、こういうのわかるわ。でも実際うまくあしらえる人には、コミュニケーションからの注文獲得チャンスだったりするんでしょうね。

しかし困ったところを助けてくれた中村。いや、ちょっと嫉妬がありまして? 私には教えてほしいプライベートなことって、からまれてイジられていたあのことですか? そんなこと聞いてどないしますの? いや、なんかね、この子にはこの子なりの鬱屈があるんですね。気持ちの通じない秋山へのもやもやとか、どうにもこうにも煮えきらない秋山の態度とか、そういったことがわだかまりになっちゃってる。

ああ、でも待ってるだけじゃ一生ダメだと思うよ? 多分、秋山氏のような人間は、今のこの時の中村の気持ちに、数十年後、あれはもしやこういうことだったのでは!? と気づくのですよ。若い日々を、時間を無駄にしたくなかったら、さっさと言葉にしちゃわないと駄目ですよ。ほんと、あからさまなヒントを出しても、まあ絶対に気づかない。気づいたとしても、いや中村さんが自分「など」のことを、みたいに卑下するあまりなかったことにしてしまうのが秋山氏だと思うんですよね。

というわけで、今回の後藤氏。サラリーマンにからまれてる秋山のピンチに駆けつけちゃって、まあ! そうかあ、演技でも、嘘でも、秋山が誰かに告白しちゃうところ、見たくなかったんだね、後藤くん。強引な手を使ってでも秋山を危険なリーマンから引き離したかったんだね。おお、これも純愛。でも、さっさと言葉にしないと秋山は一生気づかないよ! 後藤氏、頑張って!

『食欲しか勝たん!』

こころん、本当にお仕事、休んじゃってるんだ! どうしても食べ物のことに気持ちが持っていかれちゃう自分に失望して、このままじゃ駄目だ、アイドル活動に専念できるよう、邪念、食欲を払うんだ!

その一心であったというのに、ふと気がつくとラーメン専門誌を手にして熟読。って、待って、そんな専門誌あるの? というか買っちゃってるの? いや、めっちゃ揃ってるね! アイドルの本棚がラーメンに支配されててもかまわないとは思うけど、いやもうこうなったら、ラーメンオタク系アイドルとして売っていこう。最近ならそういうのもアリだよ!

ラーメンの誘惑に混乱しながらも、なんとかアイドルとしての自分を取り戻そう。心を強く持とうとするも、テレビをつけたら即ラーメン特番! いやあ、これはしゃあないよ。回避不能攻撃ってやつだ。からの、涙するこころん、こころんを信じる仲間たち。エモーション揺さぶる描写が続いて、オチがラーメンめっちゃ食ってるところだよ、こころん!

いや、ほんと、とっとともうそんなもんだと認めちゃおう、こころん。食べたいものがあるのはしかたない!

『ルナナナ』

月での労働、一年ごとの契約更新時期がやってきました。残るか帰るか。それを話すのだけど、そこでメンバーそれぞれの月に対する思いや展望が明らかになっていくのは、これまでの月面暮らしとそこで培われてきたもの感じさせるものあって、なかなかによかったです。

月でアイドルプロデュースする日を夢見るようになったアキ。一番の常識人に見えるのに、アイドルが絡むと途端に加減がおかしくなりますよねこの人。そして謎多き女、ナオの過去が語られて、おおう、ナオさん、月生まれだったんだ。本来なら月では子供は生まれない制度になっている。ところが、ナオの母は送還制度を拒み、月で子を産み育てる決心をした。12歳まで月で暮らしてきたナオ。この生い立ちあらばこそ、月にて生まれ育つ子の未来を育みたい。そんな意識も芽生えたという。

おお、びっくりした、ナオさん、月にまつわる気持ち、すごくまっとうに見えるよ!? これまで描かれてきたどのナオよりも、今のナオはしっかりまともに見えますよ!

ひとりこれという理由も思いもなかったリコ。ひとり地球に帰ることを決意してというんですが、この人のいっていた月の暮らしをもっとよくするために戻ってくるといっていたその真意が最後に判明するの、めちゃくちゃ面白かったです。そうか、冒頭の慣れない合成めしがちゃんとフリになっていたんだ! この判明して納得の展開。うまかったなあ。いやもう、予想外で、でもなんか望んだものがそこにあった感がいい。

でもって、リコに加え3人の寮生が増えるって話ですよねこれ。ということは、次回からは登場人物増えて、さらなる騒動が!? いや、どうだろう。別の部屋で暮らしていることは示唆されるけど、あんまり出てこないモブになりそうな気もします。

『猫またはごはんを。』

サチ、ついに再就職のために動きはじめました。その理由というか心情をフクが聞くんですけど、世間体じゃない、職歴の空白はちょっとある、口座の残高はすごくある、そこからさらに失業保険の給付にまでつっこんで聞いていって、いったいどこでそういうことを知るのでしょう、フクさんは。

こないだからの、気づかぬフリしてさらっと流したい人の心の機微を読めないフクとは違い、おそろしく頼りになるフクでありますよ。と思ったら、獣医先生の仕事への熱意やフクも手伝いに入るということがまぶしいという、その比喩を言葉どおりに捉えるフク。ううん、フクの得手と不得手がなんだかだんだん見えてきた感じがする? 制度としてでも存在していることはわかるけど、人の思いや比喩表現のような、具体性に乏しくあやふやなものはわかりにくいのかも知れませんね。

さて、サチの再就職活動は履歴書作成からスタートです。って、ここでもうくじけそうに! いや、気持ちはめちゃくちゃよくわかるよ。いやもうほんとなー。サチの場合、あからさまなブラック職場の職歴がひっかかってくるのか。書きたくはない、書かないわけにもいかない。まったくの職歴空白は避けたい気持ちがにじんでいて、いやもう大変。でも実際、デフレ、不況期に世に出た人たちは、こういう感情にとらわれがちのような気がします。

そんなくじけぎみのサチ。フクの財テクに頼りたい。うん、気持ちめちゃくちゃよくわかる……。

今回の料理はすごく手が込んでましたね。じっくりと下拵えして、それをさらに時間かけて煮込んでというの、いやこれは絶対おいしいやつです。ブラックカレー! って、このタイミングで名前が悪いよ! と思ったら、黒を越えて前に進んだらホワイトにたどりつくというのがね、ああ、なにか沁みるものありますね。

とか思ってたのに、サチはきざみネギとか考えてたんだ。うん、フクさん、めっちゃ空振りしちゃいました。でも、ちゃんと読者は受け取ってくれてますよ!

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