『まんがタウン』2021年3月号、一昨日の続きです。
『立ち呑み布袋でもう一杯』
立ち飲み屋だからといっていいんでしょうか。ウチは間口全開ですからっていうの、この換気抜群の店構え、昨今のご時世にはよさそうですけど、もう単純に冬は寒い。この状態でエアコン全力っていうんですから、結構電気代とかかかるんかも知れませんなあ。お店も大変。というか、エアコン全力のコマ、この漫画でこんなダイナミックな見上げ構図、見る日がくるとは思いもしませんでした。
しかしこの店、なんか面白いシステムありますね。いや、システムなのか? たまたまそういう了解で折りあっただけかも。お客さんが持ち込んだお酒、店に差し入れて店はそれを販売するっていうの、うおお、独特! 持ち込み料とかとるところありますよね。いってみれば、これもそんな具合なんでしょうか。
今回のお酒はテキーラ。ロックでやってるの? あれ、めちゃくちゃキツいでしょう? 白瀬は一杯でとりあえず休憩。二杯たて続けはさすがにしんどいっていうんですが、店長はジョッキでやってるの!? ヤバい、ヤバい、この人どんだけ強いのか。でもって続けてジンとくる。この持ち込みのお客さん、強い酒、スピリッツ系が好きなんかな。ともあれ、こうしておごり? お酒をご馳走するっていうの、たしかに飲み屋なんかじゃ見る情景で、自分も昔おでん屋にいってた頃なんか、大将にビール一杯、みたいなことやったりありましたなあ。
そんな飲み屋のノリ思い出させてくれた今回の立ち呑み布袋。飲み屋というのはただ酒を飲むだけの店ってわけじゃないっていうの、こういう交流があるから楽しかったりするんですよね。
『君と銀木犀に』
葉介と泉。ふたり、性格というか好みの傾向というか、その現れ方というか、それが結構対照的だったりするから面白いのか、なんて思わせてくれた今回。勉強は好きじゃないけど、自分の人生の選択肢を増やせるから頑張って取り組む、そうした考え持ってる泉と、好きなことに打ち込みながら勉強はぼーっと過ごしちゃうみたいな葉介と、ほんと対照的。けど、その違いから自分自身を振り返ってみたりするのがね、自分自身の模索をおこなう年頃にいる彼らにとっていい刺激になってるんだろうな。いい友人関係を築けているなあって思うんですね。
そしてもひとつバレンタインの話からね、おいしいものを食べた時にこれを食べさせたいなあって思うのが好きな人なんだって話になって、葉介が泉のことを思ってるのがわかるようになってる。このね、BL的な意味じゃあないよ? 葉介が泉のことが好きで、大切な友達と思っているのが自然にさらりと語られているわけですよ。そのさりげなさ。沸き立つような好きではなく、自然と心のどこかに大切に息づいている、そんな好きが描かれたのだなあ。
読後感が素敵です。
『夜明けのふたりごはん』
正社員になったすばる。夜勤だけでなく日勤の日もできて、それですれ違うほたるとの生活? ってほど大げさな話じゃないんですけどさ、これまでのリズムが噛み合っていた生活から、また違った暮らしのパターンができて、それですばる、ルームシェアをする理由がなくなったって?
いや、でも、気遣いなく暮らせているなら別にルームシェアを解消する必要もなくない? 手狭になったとか、一緒に暮らせない理由ができたとか、そういうのでもない限り、このまんまでも問題なくない?
そんなこと思っていたら、ああ、すばるにちゃんと存在価値ができましたよ。いや、本人もつっこんでますけどさ、そんな即物的な価値でいいのんか!? いえいえ、起こしてくれるから、コーヒーいれてくれるから、それが価値じゃないんだよ。一緒に暮らして、おかえりと迎えてくれて、その関係の、つながりのあるからこそのふたり暮らし。ええ、これこそが理由っていうの、ほっと安心させてくれて、ああいい関係ですね。ラストの情景も、そんなふたりの距離感がほのかに浮き立つ、とてもよいものでありました。
- 『まんがタウン』第22巻第3号(2021年3月号)
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