2021年2月5日金曜日

『まんがタウン』2021年3月号

 『まんがタウン』2021年3月号、発売されました。表紙は『新婚のいろはさん』。あざなわはカウンター席にてラーメンを食べるふたりなんですが、あのいろはの様子、すごいですよね。割り箸を元気にぱっと割りました。その大きく開かれた手、勢いよく割りましたね! ってのがわかるわけですが、これすなわちラーメンを前に高まる気持ちってやつですよ。その見開かれた目も、口もとの様子も、すべてがラーメンに対する期待を物語る。素晴しい、そんな瞬間が切り取られたイラストだと思います。となりでチャーシーに箸をつけるはじめもいい、そしてそんなふたりの様子に目を走らせるあざなわ店主。ええ、このバランス、見事です。

今月は新作ゲストが1本です。

『食欲しか勝たん!』

タイトルからまったく内容を予想できない系の漫画だ! まさかこのタイトルでアイドルものだとは思いもしない。3人組のアイドルの、末っ子ポジションの女の子、相守こころ。デビューコンサートのステージにて、満員の500人を前にして脳裏に浮かぶはハンバーグ。

ああー、そういうこと! なるほど、食欲がなによりも勝ってしまう、そんな子の食欲に抗いつつも抗いきれない、そんな様子が描かれて、ふと口に出してしまうハンバーグへの思いも、ファンたちには好意的に誤解してもらえて大成功! これではいかん、ステージに集中しようと思っても、まるで集中は続かなくって、まさか歓声がハンバーグを焼く音にしか聞こえないって!

いや、でも満場の拍手はね、天ぷらあげてる音に聞こえるんですよ。ほんとですよ。なるほど、それのバリエーションだなあ。今度、そう思って聞いてみたいと思います。

しかし、この子の内心わかって見れば、わりと酷いあの表情も、ファンからすれば感極まって涙をこぼす、そんないじらしさになってしまう。そんな誤解が生み出す美しい表層の物語と、その向こう側にある食に突き動かされる少女の姿。皆にすまぬと詫びながら食べるハンバーグ。なんかこれ、にやりとさせる、そんなラストでした。面白かったです。

『部長と2LDK』

菜々と暮らすようになっていろいろ変わった部長。よく変わったところもあれば、駄目になっちゃったところもあってという、その悪い方が今回のトピック。そうかあ、自堕落になっちゃいましたか。部屋が荒れる荒れる。そんなこといわれて、私のせいですかと抗議する菜々のその気持ちはよくわかります。でも気合いいれて片付けようとしたところに『おでん戦士』流されて、思わず見ずにはおられない部長。なんだよう、ほんと、可愛い人だよなあ。

菜々の妹、葉子が遊びにきます。ここからの葉子の大活躍! なんとか、自分をちゃんとした人間と思ってもらいたい部長の悪あがきが可愛くて、そしてよくよくわかってくれる妹葉子。相手が姉だもんだから、ほんと、容赦がないよなあ。そんなこんなで、部屋の片付け主導してくれて、さらには常備菜についても指南してくれてと、すごく頼りになる葉子なんですが、対照的に姉! 部長と一緒に脱線しちゃったりしてね、いやもう、やっぱり部長変わりましたよ! でも、この気の抜けたようなところ? いい変化だと思いましたよ。

今回、妹葉子に対し部長の気持ちが揺らいだんじゃないかってちょっと嫉妬しちゃう菜々がよかったですよね。どんだけ部長が好きなのか。そして妹への対抗心からか、ちょっと頼れる菜々になってみせるところ。ああ、掃除のとこでも妹が姉の操縦についていろいろ示唆していましたよね。これも、そうした姉の一側面。まだまだ知っていくべきところ、多そうなふたりです。

『新婚のいろはさん』

はじめくん、スーツだ。なにかと思ったら、専門学校でマンガについて教えようというんですね。しかし割りと自信がないっぽいはじめ。専門の生徒なんて絶対自分よりうまいとか、謙虚なのか卑屈なのか、しかしそんなでもいざ教えるとなれば、なにをどう語るべきか自分のなかにひとつ芯のように通ってるところがあって、しかもそれを余すところなく伝えようとする熱意が見える。

これ、いろは相手のリハーサルだからなのかな? 結構余裕があって、自信もしっかりあって、頼もしさ感じさせるはじめですよ。だからこそでしょうか、思ったようにいかなくて落ち込んでるその姿、落差が大きくて面白く感じられて、いやはやいろは相手のしっかりしたはじめは位置エネルギーを高めている、そんなプロセスだったのかも知れませんね。

でも、落ち込むはじめとそれをなぐさめるいろはと、ふたりのその様子は気持ちの通いあっている、そんな風に感じさせてくれて、こりゃもう理想的というか、ほんとうらやむような関係です。でもってはじめ、ちゃんと回復してね、しかも次にはこうしようって反省からの躍進感じさせるそんなラスト。素晴しいじゃありませんか。で、これがほんとに立派だからこそきつねうどんも映えようってもんですな! いやもうこのナンセンスなきつねどんの表情。いかしますよ。素晴しい。

『あの世で猫になる』

不動産屋のせいで猫扱いされている地縛霊。なんだかんだで同居する朝倉さんとはうまくやっているようで、人間扱いはされないけれど可愛がってもらえるのは悪くない? そんな様子のタマが可愛くて、そしていろいろと朝倉のこと気遣ってるところもね、すごくいいって思うんですね。だって、猫好きだけどアレルギーがっていってる朝倉のこと気の毒がって、精一杯猫のふりしてるんですよ? 身を削って奉仕する。その様子、その表情、胸を打ちましたよ。

さて今回はさらなる秘密の同居人。それはなんとネズミだっていうんですが、もうめちゃくちゃ面白いよな、ネズミはそれ実体なんだ。しかも人の言葉を操って、なにもの!? と思ったら、ここでもまたあの不動産屋か! 部屋についてる悪霊をネズミの中に封じました。2年ほどで寿命がきますよって! ほんと、あの不動産屋、大島、ろくなやつじゃないな。ほんと面白い。こういうところ、作者の持ち味、よくよく出ていたと思いますよ。大好きです。

このネズミ、なんだかんだでタマのいい相棒になりそうですね。悪霊だとかいってますが、今回のやりとりしてる感じではそうそう悪いやつではない模様。というか、大島が一番悪辣に見えるよな! ともあれ、いいキャラクター加わって、さらに面白くなりそうとわくわくさせられます。

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