2021年2月24日水曜日

『まんがタイムきららフォワード』2021年4月号

 『まんがタイムきららフォワード』2021年4月号、発売されました。表紙は『球詠』。希と光ですね。バットを構える希に、遠くから希を見守る光。このふたり、本編では勝負だと、結構際どい状況にあるんですよね。それが表紙ではこんなにも穏やかな表情を見せて、ああ、このところ結果が出せず悩んでいる希。そんな彼女を心配し、苦境脱出のきっかけを作ってくれた光。はたして表紙のこのふたりは、そうした勝負のその果てに見ることのできる情景なのかも知れませんね。

今月は新連載が1本、新規ゲストが4本です。

『さよなら幽霊ちゃん』

いい味出してますね。空き教室に集まってわいわいやってる一年生たち。当初こそは、たまたまここに集まっただけといった感じだったんですが、一緒に過ごしているうちに、なんとなく自分たちの問題点とか課題とか、そういうのが見えてきた感じ? みき、めぐ、とうこ、それぞれに積み残しの先送りを抱えていて、もともと入っていた部活に、居づらくなって出席しなくなって長いのに、退部届を出すこともできずにいる。この、ぐずぐずくすぶってる感じ? でもなんかちょっとちゃんとしたい気持ちもあった? いや、それってみきだけかな。ともあれ、皆でぐだぐだと語ってきたその挙句に、名前だけ残していた部活をやめて、新しく部活動をはじめようというんですね。

ただ、この集まり、部活に居場所をなくした3人だけじゃなく、ひとり本物の幽霊がいるというのがおかしい。当たり前みたいに溶け込んで、当たり前みたいに交流して、このゆるさはいい持ち味であると思いましたよ。

ちんまりとして可愛らしい絵、ちょっとシュールさ感じさせるやりとりなんかもありながら、時に真摯に自分の気持ちに向き合う、そんな描写がまじるのがいいなと思いました。ゆるさだけでなく、悩みがあったり反省があったりと、うまいことつなひきするみたいにバランスとって進んでいく、そういうの悪くないテイストでした。

『夢想のまち』

これはCOMIC FUZからの出張ゲストなんですね。

惹句にある、不思議な街「雲ヶ浦」というの、この世の世界なのでしょうか。あるいは、人の世を離れた、この世ならざる世界? ともあれ、そこで学生として過ごしているまよわと輝夜というふたりの少女。あやふやな世界? 雲ヶ浦を旅するようにあちらこちら訪ねながら、つぶさに街のいろいろを見つめ拾い上げていく。そうした詩情、叙情感じさせる物語が独特のタッチでつむがれていく。

これという向かう先のない、そんな漫画なのかも知れないけれど、そこにまよわたちがなにか確かさ? と思えるなにかを見つけていくように、気持ちにひっかかるものをすくいあげながら読むことのできる人には、ピィンとなにか響いてくる、そんな手触りある漫画なのかも知れませんね。

『宅配ガールズ』

自分から動いて、働きかけて。そうしたことの苦手な子、紗倉凛加。高校に入れば新しいなにかがはじまるのではと期待していたものの、なにもはじまる気配なく2年生になってしまった。いや、でもそんなもんですよ。クラスだ、部活だ、そこでうまく友人ないし作れなかったら、ただただ無為に時間ばかり過ぎてしまう。変わりたいという気持ちだけはあるけれど、人の目が気になる、誰かになにかいわれるかもと、くよくよ考えるばかりで動けずにいたからこそのこの結果。この状況が自分の行動に根差していること、本人も気づいているっていうのが物悲しいですね。

ずっとなにか変われるきっかけを待ってたこの子に、向こうからきっかけがやってきた。宅配を頼んだお弁当、それを運んできてくれたのがクラスの中心的な子で、その子が声をかけてくれた。変われずにいる自分を駄目という凛加に、その子が自分と一緒に働かないかと。自分も変わりたいからバイトをはじめたんだといってくれて、ついに凛加、動き出すんですね。

いうならば、この子の変わりゆく、その第一歩がいよいよ踏み出された、序章、導入といった感じの物語。ここから凛加はどのように変化していくのか。それこそに興味が向かいます。

『アクマちゃん注意報!』

きれいにまとまって、さらに次への広がりも感じさせる終わり方。絵柄も可愛さあっていい感じ。いい子一辺倒でやってきたみゆのもとに現れたアクマの子。ちんまりしたちびっ子ながら、不敵な笑みを浮べるその様子。驚くみゆの無垢な表情との対比もあって、なかなかに印象的。ちょっと昔の少女漫画誌に載ってたっぽい愛らしさあるといったらいいんかな、悪くない、結構好きな雰囲気です。

アクマの子、腹を空かせているこの子の求めるものは、食べ物ではなく人の悪事であるというのですね。なので、みゆも慣れぬ悪事に手を染めて、というんですが、いやいや、スカートが校則より2mm短いって、そりゃあ誰も気づかないよ! 廊下を走ってみたり宿題忘れてみたりと、このみゆにとっては思い切った悪事が、実際には小さな小さな、ささやかすぎて悪事でさえないというのがおかしかったんですね。

クラスのちょっと派手な子、秋山さんとお近付きになったみゆが、ゲームセンターに出入りしてみたり、メイクも教えてもらったりと、それを悪いことといってしまう、不良みたいといってしまうみゆの感覚がまた愛らしくって、でもね、秋山とのつきあいを通じて、悪いことってなんだろう、自分自身の判断で物事の善悪をはかろうとするようになってきて、ああ、みゆ、目が開きましたね。誰かの価値観に判断を委ねるのではなく、いろいろ経験して、自分の価値観を育てる、そんな時期を迎えたのですね。

悩みを抜けたみゆの見せた明るく自然な笑顔。それを見て安心したかのように去っていくアクマの子。人にかかわりを得て、その成長を見届けて去っていく。そんなひとつの成長のエピソード、きれいなまとまりもって、読んで満足感あるものにしあがっていたと感じます。

『ヤンキーVSロボ娘』

面白かった。と、それはいいんですが、彼女がロボットとか、一般にはナシなんですかい……!? カルチャーショックだ……。

学園最強を自認するヤンキー少年、猪鹿蝶太が売ってはいけない相手に喧嘩を売ってしまった。それがロボ娘メルカ。科学部が作ったロボットなんだそうですが、半端じゃなく強いな! むしろこれ兵器なのでは? それぐらい強いんだけど、学園最強であるためにと、くじけずメルカに挑み続ける蝶太。この単純明快な蝶太の価値観。これが結果的にメルカを救うにいたったその流れ。シンプルなんだけど、それだけに明解でぐっと迫ってきましたよ。

メルカ、少女漫画に触れて、恋というものに憧れを感じるんですね。しかしこの人と思って告白したらフラれてしまって、えぇ……、彼女がロボットとか無理ですか……!? カルチャーショックだ……、というのは最初にもういったからいいとして、人だロボットだと区別することなく自分に向き合ってくれる蝶太にメルカの心が解き放たれるあの描写は、実際見ていてぱっと気持ちが持っていかれてともに開かれた、そんな感覚あって気持ちよかった。で、その先があれでしょう! あれは面白かった。そうか、メルカが本気で応えるとそうなるんだ! もうその思いきりのよさに、がーんときましたね。あれはほんと、見事な見せ場でした。

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