『まんがタイムきららMAX』2021年3月号、一昨日の続きです。
『エンとゆかり』
この漫画、ものすごいな。こんなにもバトルを躍動感もって、なのにびっくりするほどわかりやすく描いてくるの、ほんとものすごい。四コマというのは一定のテンポ感でもってトントンと進む感あるわけですが、バトルには緩急ある見せ方が重要だったりするでしょう。だからそうした表現をするためにコマ割りの配分を違えたりするなど多様な工夫があって、ひいてはそれが漫画の個性ともなってくるわけですが、『エンとゆかり』の場合、その基本のフォーマット、全然崩さないのな。もちろんひとつのコマに、複数の動作を段階持って描くとかしてね、切り替わりをクイックに表現したり、一連の動作をコンパクトに描いたりはするわけです。でも、やっぱり基本は四コマのフォーマットでというの、まるで崩そうとしないというの、なのにこんなにも緩急もって展開する戦闘描写の連続するというの、ほんとすごいと思う。
バトル、戦闘でもスポーツでもなんでもですけど、急激にカメラ位置が動いたりして、引いた画面から一気に寄ってみたりね、また攻守の入れ替わりで前後関係も入れ替わったりする。でも、この漫画は、人物の配置がわかりやすく、視線の誘導もかな? 登場人物の動きやその目の動きでもって流れがスムーズに繋がるようになってるから、全然こんがらがらない。絵はシンプルと感じるほどなのに、実はローネのスカートとかめちゃくちゃはためいていて、その動き、躍動を端的に伝えてきてる、すごくさりげなくな!
これはシンプルじゃないなあ。よく整理されているんだと思う。無駄がないんだと思う。必要なものが必要なだけ、しっかり充分けれど過剰にならないよう抑制されているからこそ成立した誌面だと思いました。いやもう、すごいですよね。こんなん、そうそうできんのじゃないですかね。見れば見るほど、必要なところに注がれた手間、その密度に驚嘆させられます。なのに、その密度、これ見よがしじゃないから、さらっと当たり前みたいに読んじゃって、でもこの密度、描きぶり、それあっての充実ですよ。いやほんと、すごいもの拝見しました。
ローネ可愛いなあ! とか、強くて素敵じゃん! とか、そういうの書く余地なくなってしまいました。エンも可愛いです。次回、めちゃくちゃ楽しみです。
『初恋*れ〜るとりっぷ』
新入生がやってくる、そんな時期が近づいてきています。というので、新歓の準備をしよう。部のアピールのためにポスターも作ろう。それでそらの絵心のなさが炸裂する。みかげは辛辣だ。そういう絵はそういう絵で、なにかキャッチーだったりするかもですよ!?
写真を撮りにいきましょう。学校の近辺でいいスポットを、そういわれて、琥珀が教えてくれたのが仙台貨物ターミナル駅。貨物駅かあ! 陸橋から一望できるんですね! たくさんのコンテナ、多種多様に積まれていて、こりゃあ貨物系マニアなら一日中見てられる場所だなあ。でもって、歩道橋、300mとかあるのん? そんだけターミナル駅が広いんだろうなあ。たくさんの車両、コンテナ、そしてそれらを送り出し迎え入れる線路、線路、線路、いくつものポイント! ああ、見どころばっかりですね。ええ、テンションあがる琥珀の気持ちもわかろうものです。
と、今回、そうした鉄道のトピックをとりあげながらも、そらと琥珀、ふたりの距離の近づいていく、そうした様子を描いてくれて、ああ、鉄道にこうした関係の深まる様、二本の柱、どちらもに注力して描かれた充実、とてもよかったです。喜ぶ琥珀がね、本当によかったんですね。
『桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい!』
この人の描く絵、ほんと魅力的だと思うんですよ。いやね、以前からネットで見てまして、めちゃくちゃ可愛いなあ、ものすごく魅力的だなあと思っていたから、この漫画が連載となったこと、ほんと嬉しいんですよ。ほら、今回の扉絵とかもね、めちゃくちゃ雰囲気あるでしょう? 描かれているイラスト、その場面までにどういう展開があったんかなってすごく想像がふくらんでいく、そうした物語性みたいなのよくよく内包して豊か、チャーミング。ええ、魅せてくれるんですね。
さて、本編は初詣ですよ。神様にしもべ100人を願う桔香、あいかわらずなわけですけど、そうか、布瀬繋ちゃん、奇特にもそんな桔香のしもべに、いやさワンコになりたいと自ら志願してくる子が現れてしまったっていうんですね。というか、犬になるのが夢って変わった子だな。いや、変わった子はこの子だけじゃない。桔香がそもそも変だった。
桔香の犬になるといったツナギ。でも犬だ、しもべだと卑屈になるんじゃないのが面白いなあ。むしろ、飼い主はペットに奉仕するとでもいいますか、桔香の責任感、面倒見? そういうのがよくよく発揮されて、ええ、なんだかんだで身を切っていますよね、桔香。あのたこ焼きのくだりね、イトちゃんだけでなくツナギにもご馳走することになっちゃって、それで帰りのバス代なくなっちゃったか……。イトにもいわれてますけど、飼い主は大変。保護者としての責任まっとうするその姿勢、見上げたものといいますか、この子の悪役になりきれない素直さ、純粋さみたいなの、こういうところにも見えてきちゃうんですよね。
終盤のね、ちょっとしたいさかいのはてにツナギを神社に放って帰ろうとしながらも見捨てられなかったところとか、ゆってることめちゃくちゃだったりするのに、なんせ悪役令嬢志望ですからなあ、でもやっぱり根が素直で優しい、悪くなりきれない、いい子だよなあって思うわけです。とかいってたら、イトちゃんが、イトちゃんが、この子もか、なんだかんだで可愛い子たちだなあ!
ツナギさん。この子はイトにとっても制御しきれない、そんな予測不能の存在になりそうな予感がします。
- 『まんがタイムきららMAX』第18巻第3号(2021年3月号)
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