2020年9月4日金曜日

『まんがタウン』2020年10月号

 『まんがタウン』2020年10月号、発売されました。表紙は『部長と2LDK』。菜々と部長が手に手をとってジャンプでありますよ。いや、手に手をとってない。部長の手首、菜々が一方的につかんでるんだこれ! しかし、ふたりのその様子。思いっきりのびのびしてる菜々のはじけるような笑顔と、ちょっと戸惑いながらも菜々につきあってる部長の不思議とあどけなさ感じさせるその表情、それがいい感じにマッチしてまして、これめちゃくちゃ可愛いですよね。というか、どんどん部長が可愛くなっていってませんか? なんか、菜々の上司どころか同期、いやさ妹みたいに見えるほどの愛らしさですよ。いったいどうなってるのか。責任者はどこか。

今月は新連載が1本です。

『君と銀木犀に』

ああ、猫と珈琲の人か! こうして新連載がくるってことは『珈琲と猫の隠れ家』、好評だったのかもですね。

さて、新連載は中学生の男子が主人公。中学が統廃合したせいで、遠くの学校に通うことになったのだけど、定期代着服して毎日2時間歩いてるっていうんか! これ、若いうちしかできんことよな。でもわかるわ。自分も基本徒歩移動。バスが苦手だったこともあるけど、普通ならバスなり地下鉄なり使う距離でも、平気で歩いてた。これ、今となってはかかる時間とか疲労とか考えて、金払った方が得という判断しちゃうわけですけど、昔は、それこそ学生時分はまとまった収入なんてなかったわけでね、となるとこの漫画の主人公みたく、遠かろうが暑かろうが歩くわけです。彼は半年分の定期代、3万を着服してる。ということはひと月5千円か。学生にとっては結構な額だな。CDでもゲームでも、あ、いや、最近の中学生はCDなんか買わんか。ともあれ、なにか好きなものひとつふたつ余計に買えるだけの額ですよね。

と、こんなことでいきなり親近感といいますか感じまして、そんな彼が同じようにふうふう汗をかきながら歩いてくる違う学校の生徒、毎朝すれ違うその彼と、ふと目があって、そして自分でも思いもかけず話しかけてしまって、そしていつもの当たり前の田舎の光景が、ちょっと違って見えたっていうね、その情景。ああ、これは魅力的。

この漫画、この名前も知らない彼と一緒に過ごす時間、見る風景、そこに特別ななにかを見出していこう、そんなことになりそうですね。期待させられます。

『新婚のいろはさん』

テーマパークにいきました。魔法使いがテーマのウィザードランド。いろんなライドに乗って、苦手なジェットコースターも勢いでこなし、テーマパークのキャラクター眺めながら食事をしたり、ぱっと見わかりにくいキャラクターを探してみたりもしながら、時間を過ごしていくその一日の流れ。今回はできごと、ネタで駆動するというよりも、時系列、いつなにをしたか、そのふたりで過ごす時間というのを際立たせる、そんな見せ方しているんですね。

これ、どういう趣旨なのか、それが最後にわかる。魔法のテーマパークというのも、はじめにとっての魔法のようなできごと、それがいろは来訪と突然のプロポーズ、結婚だったという。その突然の魔法を、今度は自分からかけにいこうとするはじめ。いろはからのアプローチを受けるばかりでなく、自ら能動的に結婚申し込みをしたいと、いろはの茶目っけに、いわばドのつくくらいのシリアスで応えてみせたっていうんですね。

ある意味しきりなおし? いや、違うよね。自分の気持ちをより明確に示していきたい。そんなはじめのいろはに対する思いがばっちり押し出された今回。なにかいつもとは違う、そんなピリっとした張り詰めたもの感じさせるところなどありました。

『勇者様!?こ…これってそういう意味ですかっ?!♡』

この漫画は、朴念仁の勇者と色ボケ? 妄想過多の僧侶ソーニャがRPG的お約束踏まえながら冒険する様を見せるというのですが、タイトルからするとソーニャの妄想とか暴走とか、あとお色気描写? が売りになるんですよね? でも、むしろ、勇者の発想に見え隠れするプレイヤーの発想が面白くてですね、ああ、『レトロゲーとかマジウケる!』の作者だけあります。RPGで遊ぶプレイヤーのせせこましい節約発想がいいところ突いてまして、わかる! わかるわー! ってな具合にめっちゃハマってたまらんのですよ。

今回のダンジョン探索も、正しいルートを進んでたのに、あえて分岐まで戻って違うルートも確認したい。さらに落とし穴があったら落ちてみようかなんて考える。だって、そこに宝箱があるかも知れないから! って、これ、わかる。ほんと、絶対やる! っていうのが描かれて、さらに宝箱の中身、さっきの町で買わなくてよかった、ゴールドの節約できて喜ぶところとかもね、もうほんとめっちゃわかるの。

極めつけは、強敵相手に苦戦強いられている時の勇者が発したかっこいい台詞! 2人で生きるか2人で死ぬかだ。ソーニャを決して死なせはしない! そんな意思を感じさせるセリフにきゅんときてるソーニャだけど、その本心がもう最高。経験値の効率かよ! って、わかる、わかるわ。ボス戦の経験値、大量獲得が期待されるのに無駄にしてなるものかって気持ちね。せせこましいんだけどさ! でも、プレイヤーっていうのはそういうもんなんだよ!

この漫画の本筋、見せたいものはむしろこちらなのではないか? そんなこと思わされて、いやもう、わかる、わかる、そうそうそう! の連続でした。

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