2020年3月28日土曜日

『まんがタイムきららキャラット』2020年5月号

 『まんがタイムきららキャラット』2020年5月号、発売されました。表紙は『恋する小惑星』、みらとあおのツーショット。満開の桜の下、腕を組んで立つふたりなんですけれど、あおがちょっと男の子っぽい服装だったり、対してみら、服装もそのポーズもちょっと可愛くしてたりと、この好対照がとてもいい。今回のイラスト、全体にフィルム感感じさせる粒状の表現されてましてね、ちょっと昔のスナップ写真みたい。ISO400とかで撮った感? この表現が、なんかちょっと写真が特別だったころの感覚思い出させて、またこの瞬間を切り取ったという印象をより強めてくれるようで、さらに加えて思い出フィルタ? 素敵な雰囲気感じさせています。

今月は新規ゲストが2本です。

『内気な内側くるんでポイっ』

人に見つめられるのが苦手な女の子。大空心晴に急接近する不審なうさぎのぬいぐるみ。クラスの自己紹介で失敗したのを悔んでいたこの子を見て、先輩が助けようとしてくれてるっていうんですけど、その対処法、劇薬すぎない? ともあれ、うさぎの着ぐるみで迫って、そのまま確保。そして心晴に着ぐるみを着せて、そのままクラスにポイっってことか!

一度出ていってクラスに戻ってきた着ぐるみうさぎ、さっきまでと言動が少し違っていて、この仕掛け、わりとすぐに明かされちゃったんだけど、いっそ最後まで引っぱってもよかったかも。この種明かしがやっぱり一番の見せ場だったと思ったんですよ。見られて緊張するなら、気ぐるみに入って、いつもとは違う自分になればいい。それで自信がつけばいいという作戦だったのだけど、この種明かしの驚き、ああ、やっぱり! と思わされる感じ、もっともっと大きなものにしてくれたら、さらに面白くなったと思ったのですね。

ともあれ、着ぐるみの中で奮闘していた時の心晴。その表情はとてもよかったと思います。後で知って、ああ、こんな風に頑張ってたんだなってわかる。後から振り返って想像する分を残してくれている、そういうところ、よかったと思います。

『アノコウリャク』

授業が終わればさっさと帰ってしまうシオン。ある日、突然捕われの身になってしまったこの子が危機を脱出するまでの話、と思ったら、これ、あんまり危機じゃないなあ。飲み物に薬を盛られて、気づいたら椅子にしばられててと、わりと大胆な行動してるけど、そこからが結構ショボくって、脱出に失敗したら命にかかわるとかかと思ったら、強制的にキス顔にされるとか、これ、ちょっと吹いちゃいましたよ。さらに装置のカギというのも、それ持ったゲームマスターが同じ教室に倒れてたり、しかもそれが倒れたふりだったりと、微妙にナンセンス。大げさに見せて実は結構ショボいという、そのショボさの見せ方、これが面白かったです。

下校時間までに脱出できなければ負けというルール。この条件での必勝の手があのアップデート待ちだったの? VRゴーグルつけたら、画面半分見えにくいとか、さらにはアップデート開始とか、これねおかしかった。とりわけアップデートのくだり、これ、結構経験してる人もあるでしょうから、ゲームしようと思ったらアップデートがはじまっちゃったりね? ああー、あるある、そう思わされるところもあるんじゃないでしょうか。その経験? 共感? に働きかけるところ、これよかったですよ。

『紡ぐ乙女と大正の月』

大正時分のエス事情? そっち方面をより押していこうってことになったのかな? これまでも、主に旭方面で描かれてきたことではありましたけど、今回はクラスの子たちの雰囲気にあてられた紡が、唯月とのロマンスを夢想? いや、夢想じゃないな。これ、本当に夢だ。授業中に見た夢。そこからの旭、初野ふたりとの会話ね、なんだかんだいっても21世紀日本に育った紡ですから、発想が皆よりちょっと過激? ちゅーとかいわれて狼狽する旭、覚悟決める初野。それぞれの反応の違いなど面白かったです。

夏休みを前にして、お目 — 相思相愛の相手を見つけるべく活発に活動している皆。上級生も同様で、唯月に手紙を渡しにきた島津様。え? あの島津家? てなことは、もしかして公爵家? 同級生のいってた共に高貴な家柄のというところからしてもきっとそうなんだろうなあ。唯月のお家も公爵でした。

先輩の申し出を案の定断った唯月。なぜ断ったのか、先輩の問、紡は唯月のなんなのか、その答を聞くことなくうやむやになってしまったわけですが、今回終盤、唯月の見せた思わぬシリアスな表情。そしてその問い掛け、紡の秘密とはなんぞや。なにか波乱を予感させます。

この漫画、紡の前ではわりとほがらかさ見せる唯月の、けれどどこか謎めいたところ。それがかなり気がかりにさせてくれるんですね。時にほのめかされるこの子の内心抱えているもの、憂いを感じさせて、なにか放っておけないって思いにさせる。そして、唯月が受け取った父からの手紙。やばくない? これ、下手したらお嫁入りだぞ。この時分の女学は、卒業を待たず婚約、結婚で退学ってのがいわばひとつの花道だったっていうじゃありませんか。ああ、唯月さん、お嫁になんかいかないで。しかし、これが本当に輿入れ案件だったとしたら、いくら唯月が抗っても抗いきれるものじゃない。紡だって、ましてや旭、初野にしたって介入できる余地などない。

ああ、手紙の内容、気になるばかり。これ、一気に状況塗り替える、そんな火急の話じゃありませんように! もしそんなことになれば、唯月があまりに可哀そうです。

『恋する小惑星』

今回は地質案件。ショッピングモールのイベント、化石発掘体験をしにいくっていうんですね。でも、みらの説明不足でナナチカちゃん、アウトドア衣装で登場。というか、ナナは体操服にジャージ、加えてヘルメット。モールにいくにはちょっと向かないスタイルです。

ショッピングモールで着替えを購入、そのくだり面白かった。ナナはサンドイッチのTシャツ。直角二等辺三角形だ! 角度の記号ついてるの、なんか可愛いなあ。対しチカはお高い服に心奪われてて、あの花散らしてるの可愛いなあ。

化石発掘の催しには500円の買い物が必要、というので本を買いにいったみらとあお、そこで新聞部の宇佐美と出会って、ああ、化石に興味持ってくれたんだ。ナチュラルにみらたちに合流してくるの、なんか人の興味の幅、違いが交錯するところ見せられてるようで、ほんとこれが魅力的。体験のおみやげ、アンモナイトの化石見て嬉しそうにしてる宇佐美なんかも、とてもよかったって思ったんですね。

今回、千景が面白い。体験キットにご不満!? さらに手持ちの発掘ツール出して、イベントの係員のお姉さんからガチな子だっていわれてるのも面白い。加えてアンモナイトについての解説でしょう。縫合線について軽く触れるんですけど、みらにあお、さらには係員のお姉さんまでへぇーって感心してるの。この、知識に触れて興味が広がるのがね、すごく面白いんですね。

チカ、キットの中に入っていた小さい貝や骨の化石まで甘さず楽しんでるの、それ知らずに捨てちゃったの悔しがるナナもね、知るほどに広がる世界があって、世界が広がるということがどんなにか面白さを増やしてくれるかっていうの示してるみたいでね、こういうところ、本当にいいと思っています。この知って広がるものは、知識、興味、好奇心、そして先輩後輩、友人たちとの交流も同じということがよくよく伝わる、そんなエピソードだったと思います。

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