『まんがタイムオリジナル』2020年5月号、発売されました。表紙は『ラディカル・ホスピタル』、テーマはなんだろう。パワー全開な感じ? 腕まくりする勢い、いや、半袖なんですけどね、山下さんがこれまた頼もしい表紙であります。後ろに立つ赤坂先生も素敵ですよね。他に『小森さんは断れない!』、友達と一緒のしゅりたち。そして『らいか・デイズ』、らいかに蒔奈、ふたりのちょっとおしゃれしてる感じがいいですね。
今月は新作が2本です。
『Dr. こよりの美味カルテ』
これは四コマではなくコマ割りの漫画ですね。消化器内科医、原邊こよりが主人公。内視鏡処置を終え、さっそうと立ち去る先生の脳裏に浮かぶのは、院内の売店、飲食店の閉店時間。今は7時50分、タイムリミット10分という状況。ここでなにかを食べないと、明日の朝までごはんぬきで当直だ!
いや、これ、きついな。すごく大変。実際、こういうお医者さんって食事抜きでぶっつづけみたいなことあるみたいにいいますもんね。あの、ずっとかっこよかった先生が、ごはんぬきを意識してなんか緩くなる瞬間、ちょっと可愛いなって思いましたよ。
こより先生、同僚の神経内科医、岡田みきからぺこちゃんって呼ばれてるの、なるほど、はらべのべ、こよりのこをとって、ぺこちゃんなのか。岡田みきはみーちゃん。わかりやすくいい名前。
この漫画、急変対応やらなんやらで食事にありつけなかったぺこちゃんが、みーちゃんからの差し入れで一息つく、カップ麺やコンビニおにぎり、サラダなどをおいしそうに食べる、その様子を楽しもうというのがひとつの軸になってるっぽいですね。けど、ほんと、厚生労働省の示す食生活の指針っていうの、守ってるっていうけど、結構ばっさり省略してますよね。その強引さ、わりと嫌いではありませんでしたよ。
『負け恋。〜ずるい恋の始め方〜』
恋に破れた男がひとり、公園のベンチでたそがれているところからスタート。この人、長きに渡る片想いが終わった、なんていってますけど、話を聞けば、まあ片思いだったのはいいとして、そもそも最初から芽の出る可能性もない恋だったんじゃありませんか。中学の頃から好きだった。けれど大学生の時にフられて、そして三十過ぎの今まで引き摺りながらも、なんら進展を見ることがなかった。ああー、まあ気持ちはわからんでもないけど、うん、大変だな。
そんな主人公が出会った女子高生? 恋愛成就のお守りをぶん投げてきたっていう、えらい出会い方しちゃったわけですけど、この子もまた失恋したのだそう。この失恋したふたり組、一緒に泣いて、そして別れて、再会? それもなんかお酒の出る席? これ、合コン?
ここからの展開は次回を待つほかないわけですが、これ、もしかして、女子高生に擬態してたってやつなのかな? とりあえずこの子、ちょっと食わせものっぽい雰囲気出してきてますね。
『ローカル女子の遠吠え』
今回は桐島美織をメインに描いて、というんですが、決してこの人にとっていい話ではなかったよね。むしろ、この子の危うさにズームイン、ってな感じもあって、ずっと静岡に暮らしているこの人の、狭い世界での生き方、狭い視野みたいなの、かなりキツめにつっこまれてましてね、しかも桐島、江崎から心配されてたっていうの。ああー、可愛くてチヤホヤされてきた知人が、その可愛さアドバンテージを失うとともになくしてしまった安定。メチャクチャ病んでるっていうの、いつか桐島もそうなるんじゃないか、いうならば勝手な憐みみたいなもんでもあるんですけど、この見守られようはキツい。でも、こうして親身になって心配してくれてる人がいるっていうのはいいことなのかもなあ。まあ、桐島は決して気づいちゃいないと思うんですけども。
この漫画、桐島にわりと当たりがキツめだと思ってるんですが、でもこの子、りん子に対置されてる、そんなポジションですよね? 確かに視野の狭い人ではあるけれど、それはなんでも仕事中心に考えがちなりん子も同様、いわばベクトル違いの裏表みたいなキャラクター。そう考えると、わりと辛辣な描かれかたしつつも、タフでポジティブで、受けたダメージも即座に癒せる、そんなスキル持ちの桐島は、まぎれもなくダブルヒロインの一翼を担っているんでしょうなあ。
『ネコがOLに見えて困ります』
ぐおお、扉絵の破壊力よ。貫通ダメージだよ、こんなの。
さて、なんでOLさんがこんな格好してるのかというと、兄貴さんが入院するという同僚から預かってきた猫ちゃん、たまのスタイルにあわせてだったんですね。たま。ちんまりした、けど気位いの高そうな猫ちゃん。その格好はフリルついたドレス、いいとこのお嬢さんっぽくって、髪はツインテール。目つき悪しの金髪ガール。ただ、いきなり知らない場所に連れてこられたもんだから、神経質になって、ふてくされちゃって、しかもそこに兄貴さんがぐいぐいいっちゃうものだから、えらいこと怒っちゃってともう大変。さらには食事もとらないっていうんですね。さあ、このピンチをどう切り抜けるのか。
ミコトは、動物が人の姿に見えることで、その気持ちなんかもかなり推し量れるようになってるわけですけど、言葉が通じたりするわけじゃない。だから、いらだってるたまの気持ちを直接にほぐしたりもできないし、とりあえず効果のありそうなこと、いろいろ試していくしかないっていうの。お腹が減ってそうだからとご飯用意してみたり、おやつをあげてみたりと、でもそれもどうも芳しくなく、しかも悪いことに、たまのこと心配しすぎて、そっち優先みたいにしちゃったから、OLさんまですねる! ああー、こういうことあるっていいますね。先にいる猫は、後からきた猫よりも優先してやらないと、気分害するとかって聞いたことありますよ。まさに、そんな感じになっちゃった。
今回は、ご飯食べて嬉しそうなOLさんが、とにかくいっぱい描かれていて、基本クールなお姉さんじゃないですか。なのに、子供みたいに表情豊かにガツガツいっちゃうのね。いや、まあ、猫だからそれでなんもおかしくないんでしょうけど、ミコト視点からしたら、確かにこれは相当なギャップだよなあ。でもって、おいしそうにご飯食べるOLさんに感化されて、ついにはたまも態度を軟化! いや、でも、兄貴さん、猫の気持ちを逆撫でする天才なのか!? 間が悪いよねえ。ほんと、猫が大好きで、大事にしようとしてるのすごくよくわかるだけに、ほんとお気の毒。でも、そのすれ違いも面白みになっているからなあ。
今回のたまの顛末。飼い主と一緒で嬉しそうな様子、あれは可愛いな! そして、あらためてOLさんのこと考えて、自分たちの体調にも気をつけようって結論に落ちついたのがよかった。ええ、生き物を飼うことの責任のひとつであるんでしょうね。ちょっと考えさせられるエピソードでした。
- 『まんがタイムオリジナル』第39巻第5号(2020年5月号)
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