2018年5月9日水曜日

『まんがタイムきらら』2018年6月号

『まんがタイムきらら』2018年6月号、発売されました。表紙は『棺担ぎのクロ。』。クロが、ニジュクとサンジュ、それにセンも、皆で一緒に笑いあっているというイラストですよ。淡く柔らかな色合い。光の溢れるそのもとにいる彼女らの姿に、これまでの苦労、苦しみ、そうしたものも溶けて消えていくように感じられる、ええ、実にさいわいといえる表紙でありました。辿り着いたよ、という言葉の意味。旅の終わりを喜ぶ姿であるのか、またあるいは、彼女らの月下での再会でもあるのでしょうか。思うところ溢れる、そんなイラストであります。

棺担ぎのクロ。 — 懐中旅話』。終わりましたね。正直なところ、クロは魔女と、ヒフミと、刺し違えて果てて終わるんじゃないか。そうした怖れをずっと以前から抱いていたのですが、いやあ、よかったではないですか。クロ生存! センも健在、元の姿を取り戻して、ええ、時間がいずれすべてを解決してくれるのではないか、そんなこと思わせてくれる状況を描いてくれて、そして姿を消したニジュク、サンジュの行方ですよ。ああ、前回私はふたりのことを、天上のもの思わせる、そういっていたのですが、まさか本当に天上のものになるとは予想をはるかに超えてきましたよ。マジかー! 月のような、不可思議な天体になったふたりの、その暗闇にあってまっ黒にならないという、その存在の意味深さ! 最後のくだりもね、もう見事に不思議なものを見せてくれたと、情感、叙情をともに、感慨を覚えました。

『一畳間まんきつ暮らし!』、ゲストです。田舎から東京に出てきた女の子、森田芽衣子は高校の寮に入る予定でいたのですが、その寮というのがなんだかおかしい。建物には漫画喫茶ヘッジホッグの文字があり、同じ建物に寮もある? かと思いきや、この漫画喫茶自体が寮でもあるというんですね。寮長の雨宮梨絵。校名と同じ姓を持つこの子、理事長の娘とか孫とかなんでしょうか? ともあれ、漫画喫茶の一角を寮にしている。さらには蔵書はすべてこの子のコレクションなのだそうで、どうも寮生は漫画喫茶の手伝いなどしなければならないようですね。しかし、芽衣子は特別扱い。漫画家のもりためいこと混同されている。これ、結構困った状況ですね。しかし、寮の居住スペース。まんま漫画喫茶の設備なのか。なるほど、それで一畳間暮らしであるわけですね。くつろぐにはなかなか厳しそうな状況。けれど漫画もPCも利用し放題? プロゲーマー志望の中埜音緒なる子とも親しくなって……、そういうところはいいのだけれど、なかなか一筋縄ではいかなさそうな寮であります。

『ぽんこつヒーローアイリーン』。すごくいい話だったんじゃないでしょうか。地球に残されたラブリーメロン、この子の、将来をおぼろげにでも模索しはじめるところ。それ、いいなあと思う気持ちと、状況の進んで変化していくということの寂しさ、同時に感じさせられるようで、ええ、人はいつまでも同じ場所には居続けられないんだってこと、思わされたように思います。そして火星のアイリーン。久しぶりに怪人と戦うことになって、けれど以前のように単純ではもういられないんですね。怪人イコール倒す対象ではなくなってしまってるんだ。相手の事情など思いやろうとするアイリーンの姿勢。ツーシャやマリーヌには理解してもらえない、たとえ理解を示したとしても、ヒーローってそういう仕事じゃないって、つらそうにしているツーシャがいたたまれないですね。でも、ここで一旦否定されたアイリーンが、けれど本当はここ火星に新しい可能性をもたらしうる存在であるのだと描かれた終盤、これ、すごく胸に迫って、よかったです。地球で経験したこと、それがアイリーンの力になっている。誰かを否定し痛めつける力ではなく、違いを受け入れ癒す、そんな力。ひとつ新たなヒーローのあり方を見せたアイリーンの姿、輝いてた。本当のヒーローだって、胸が熱くなりました。

『ないしょのシオリ』、ゲストです。文芸部所属の東城紅葉。本の続きを楽しみに部室へとやってきたらば、見知らぬ子がご主人様といって飛びついてきたっていうから驚きです。その子、自分のことを、文芸部にあったしおりだという。ずっとご主人様と話がしたかった。ある種、尋常でない状況であるのですが、そうしたことをまるで信じない紅葉の姿勢がよかったですよ。しおりが状況説明しても説明しても、入部希望者あるいは演劇部員かといって信じようとしない。こうした常識でもって物事を判断していこうというところ、嫌いじゃないですよ。むしろこうした紅葉の態度があるからこそ、不思議、非日常、非常識がより明確にされるように感じました。坂之上光里先輩。この人の胸元に挟み込まれにいったしおり。なにかに挟まると落ち着くといって、これが証拠だっていうの、いやいや、証拠になりますか? 頑として受け入れない紅葉、安定感ありますね。というか、紅葉の気持ちよくわかるように思われましたよ。坂之上先輩はしおりの言い分、受け入れてるんですね。ある意味、紅葉に対極的な人なわけですね。今回、しおりの紅葉に話したかったこと。このところ悩みがあると思しい紅葉の、その悩みを解決しにきたんだっていうしおり。ああ、なんだよ、優しい子じゃないか、そう思わせて、思いっきりミステリーのネタバレ食らわせるとか、ムゴい! あの、しかばねみたいになった紅葉は、本当に、気の毒なんだけど、面白かったです。そしてしおりの魔法? めでたしめでたしなんですけど、これで紅葉はしおりのこと、信じることになったって感じでしたね。

  • 『まんがタイムきらら』第16巻第6号(2018年6月号)

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