2016年7月29日金曜日

『まんがタイムオリジナル』2016年9月号

『まんがタイムオリジナル』2016年9月号、一昨日の続きです。

『北斎のむすめ。』、これが美しい。扉にて、うだる夏の暑さにうんざりするように髪かきあげているお栄が実に美しく、ほんと、いつもなんか奇行が目立つお嬢さんですが、なんとまあこうも色っぽい。さて本編でも夏の暑さ。父親北斎のこと、この夏は越せないかもとかえらいこといってる娘ですけど、ああ、引っ越し。夏ならではの話、汗で絵が台無しとかね、そういった話があると思えば、歌川国芳の猫目の話あり。これ、全般に馬鹿馬鹿しいナンセンスなんですけど、そういう味わいもとてもいい。そうか、当時の油は菜種と魚油とあって、魚の方が安かった。それで猫が集まる。これでわかったんですが、化け猫が行燈油をなめるの、魚油だからなのか。目から鱗でした。歌川一門と葛飾派の対立とかも知りませんでした。そんなこと気にしてなさそうなお栄ですけど、最後の最後ね、仲間はずれになっちゃって気分害してるの、ああ、ここに栄のコンプレックスあるんですね。ええ、いい若者じゃないですか。そうそう、山東京伝のすごさを天ぷらで知る、そんなお栄もよかったです。

『ゆらゆら薬局プラリネ』も最終回。そうか、兄貴さん、池田に会うのに緊張してるんだ。前回ね、池田の姉、すなわち女装池田と会ってたでしょう。あれで決定的な進展なりあったのかな? みたいなこと思ってたんですけど、あれ、兄貴さん、気づいてないのか! ほんとに姉だと思ってたんだ。でもそこでの会話ね、池田について語る兄貴、知らず本人の前で心配していること、気にかけていること告げてしまってるっていうんですが、ほんと、あの瞬間の池田の、思いもしない言葉にふいを突かれたような姿、でもそのニュートラルな顔がほんといい表情だったなって思ったんですね。兄貴と池田の再会はすっかり皆のエンターテイメントですけど、再会したふたり、素敵な池田の笑顔に山内もまた笑顔で答えて、あー、あー、もうね、ほんと、なんでもないことが特別でありますね。いいふたりだよねえ、もう。

『おかん』、めちゃくちゃ面白いよ。夏休みにお泊まり会をしよう。サツキ、ヒカリ、佳子の三人で話してるんですけど、場所がサツキの家と決まった瞬間にお泊まり会が合宿に変わる。しかもお泊まりのメインがサツキの母になってしまってて、しかもこのおかんがよく応える応える。お泊まり会のしおりなんて作ってる。しかも七並べで娘の友達とガチ親子げんか。すげえな、おい。川の字ならぬ河の字とかね、母が私ひとりで3画とってるの気に入らないとかいってるのも地味に面白い。そして恋バナ。あー、娘はちょっと複雑か。しかしお母さん、お父さんの名前忘れてるんだね! もうほんと、キャラクターの威力といっていいのか、おかんが一番面白いのだけれど、サツキの友人ふたりも負けてないし、もちろんサツキもジュンもいい。最高におかしい連中ですよ。

『ぎんぶら』、今回は南国の楽園思わせる星にきました。日がな一日釣り糸をたれる、そんな生活。ゆったりと時間が流れ、あくせく生きるなんてことまったくない。そうした一種の理想郷みたいなの描きながらね、その都度キビしい言葉をいわせるんだからたまりません。のっけから、飽きたらつらい、でしょう。憧れとかそういうの、ことごとくぶち壊しにしていくスタイル。この星を訪れて、心と体を癒やした後にまた旅立っていく、そんな旅人に向けては、定住はイヤなんだ? すごいわ、めっちゃしびれる。この星がこんなことになってる理由っていうのも、あらゆる娯楽が成立しない、そんな逆風がすごくて、よくここの住民、そこまで進化できたなあ。今回一番面白かったのは、若竹たちが釣りをしている8コマでしょう。どんどん飽きていく。どんどんもてあましていく。そんな様子が実にリアリティたっぷり共感性たっぷりに描かれて、そしてこの星の一日。ほんとに時間ゆっくりなんだ! 12時間たっても日が暮れないんだ! 魚も果物も一種だけ。ゆえに食事も期待できなくて、ほんと、見事に徹底してますよね。そしてお決まりの権田原。最後の最後にダイナミックな落ちがきて、この予想外感! すっかりやられました。

  • 『まんがタイムオリジナル』第35巻第9号(2016年9月号)

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