ちょっと和声を学びなおそうかなと思っているところです。去年ですかね、東京芸大で使う和声の教科書がかわりますという一報が飛び込んできましてね、正直なところ申しまして、最初なにをいってるのか理解ができなかった。いえね、芸大といえばいわゆる芸大和声。島岡和声ともいいますね、これが長く使われてきて、また芸大に限らず他の音楽教育課程においても広く使われてきたものでありますから、これが今になって変わる。え? マジで? いや、まさかあ、きっと自分が読み間違えてるんだ、なにか意図を誤解してるんだ、そう思って何度も読み返して、いや、ほんとにかわるのか。やっとこさその事実を受け入れて、でもほんとにあの分厚い3冊がこれ1冊になるの? いや芸大の課程をちゃんと確認してないからまだちょっとうたがってるところがあるっぽい……。ともあれ、芸大の和声の教科書がかわるのなら、ちょっとそいつにも触れておいた方がいいんじゃないか、そう思うところがあったので、いずれ習ってみよう。そう思っていたのでした。
テキストを買ったのは、つい今月のことです。なんで今まで買わずにいたのかといいますと、新しい本には訂正がつきものでしょう。その誤りが出尽くして、訂正が反映されてから買おう、なんて思っていたんです。
先日、版元の情報を確認したんです。そうしたら4刷が出たのだそうですよ。それでお詫びと訂正を見てみたところ、第3刷で修正との記述はあれど、第4刷での修正箇所はない模様。よし3刷で当座の誤りは出切ったか、そう判断してネットで注文。運がよければ4刷、運が悪くとも3刷が届くことを期待していたところ、今私の手元にあるのは第2刷。おおー、ぬかった。面倒でも現物確認して買うべきであったかー。
芸大和声、いやさ島岡和声との違いは、島岡和声に特有の和声記号にもとづく学習ではなく、ヨーロッパの、というよりフランスの? 伝統的な学習ないし実施の場で用いられている数字付き低音に由来する学習をするところにあります。数字付き低音っていうのは、バスの声部に数字をふって和声を指示していくもので、今でいうところのコードネームみたいなものと思っていただいたらいいのですが、コードネームとは違って、バスの上に積み上がる音が何度上に位置するか、それを数字で指示します。
大学に入って私が最初に学んだのが、この数字でもって和声を示すタイプの記号だったんですね。私の学んだ大学では、作曲科以外の学生に向けた和声の授業は和音数字で学ばせた。なので数字にはある程度のなじみがあって、けれど、後に科を移って、そこでは島岡和声のやり方でもって和声を扱ったから、どっちつかずでしてね、島岡和声は結局2巻の最後までやって、第3巻は手付かず、というか教科書も買ってないんですけど、高くて……、それでもいつかはちゃんとやろうと思ったたところに、昔の馴染みの記法でやりますよー、ときたから、ああ、じゃあこっちもやってみようか。軽薄なものです。
本が届きましてね、楽譜、課題とか実施例とか見ましたらね、あ、これさっぱりわからないわ。ぱっと見た時にすーっと入ってこない。和音数字、慣れてるつもりだったんですけど、最初の2年だけの付き合いでした。その後はもうずーっと島岡和声でやってきて、そちらに馴染んでしまったんだなあ。いたく思い知らされました。
まだちゃんとははじめていません。冒頭の解説、やっぱり禁則とかあるんだなあ、限定進行音とか、これと厳しく明示されてはいないのだけど、基本は島岡和声にかわらないのだな。などなどふんふんうなづきながら読み進めているのですが、本番はまだまだこれから、実施をしてからですよね。いろいろ周囲見回してみたら、批判も多い教科書で、実際、これ事前になんらかで和声ないしに触れたことのない人には独習とか無理だな、システマティックに組み上げられてる島岡和声みたいにはいかないな、みたいな実感などもあるのですが、とりあえずは実施して音にしてみて、習っていってみたいと思います。
- 林達也『新しい和声 — 理論と聴感覚の統合』東京:アルテスパブリッシング,2015年。
0 件のコメント:
コメントを投稿