『でいとりっぱー』については断片的に知っていました。タイムトリップものであるということ。ある日突然、主人公のもとに裸の女の子がタイムスリップしてきた! なるほど、裸か! なにか事件があるごとにタイムスリップでもって回避、解決して、つまりは全裸でドキドキ展開がお約束。主人公もいつしかその気に、いや違った、いつしか彼女のことが気になって、ってやつですか!? とか思ってたら、あ、こいつはちと違う感じであるな。ドキドキ展開、ありますよ! けど、これ、提示された問題とそれが解決されねば後にどのようなことになるか、顛末までが読者に示された状況で、その問題がぶらっぶら目の前にぶら下げられて、うわー、どうなる、どうやって回避、解決されるのん!? ってドキドキするやつだー! ええ、もうほんと、こいつはあれだ。サスペンスってやつですな。
しかし、これ、人物をわりと絞りながら進めて、けれどそれでも充分以上に複雑に展開してみせて、ほんと油断ならない話ですよ。突然の危機を突然のタイムスリップで回避した主人公。いったいこれはなにごとか、考察している彼のもとに彼同様にタイムスリップしてくる謎の女。どうもこの漫画ではタイムスリップは身ひとつ、すなわちなにも持ってはいけないっていうんです。なるほど、『ターミネーター』と同じ制限だ。
第1巻は、時を超えてやってくる謎の人物。彼らの正体や目的が判明していくことで、主人公トキヤの抱える問題が可視化されるといった具合です。最初はね、彼らはトキヤに敵対するなにかなのかな? あるいは彼らの問題ないしは抗争ないしにトキヤが巻き込まれていく? なんて思ってたんですよ。そうしたら、おお、すごいな、これはわかりやすい。もしタイムトラベルできるとしたら、いったいなにをしたい? そんな定番の質問ありますけど、そこでの選択肢、個人的でけれどもそれだけに切実だったりする、それかー! ことトキヤにまつわる問題は、タイムトラベルの機会があれば確かに介入したくなる、そうしたものであろうと思われるもので、ええ、かくして男たちはトキヤの関与する問題に介入し、そのピンチを回避したというんです。
ふう、これでもう一安心。って、え? ? え? あ、駄目じゃん。あいつ、やる気まんまんじゃん!
ひとつ問題が解消すれば次の問題がまた見えてくる。そうやって次へ、次へと課題が変わっていくと思えば、そうした行為自体が問題にもなって、しかもそれを問題にする側の情勢はどうにもキナ臭い。決して敵対するわけでもなく、だからといって友好的でばかりはいられない? そうした立場の危うさ。後に共闘する? いや、さすがに不可能? 少ない人数でいろいろ錯綜してきて、もう、こういうの組み立てられる人はすごいなって思わせられます。人数としてはそれなりにいますけれど、いや、このあたりにはあまり触れますまい。ともあれ、その、それなりにいる人物が、それぞれの思惑、意図を持って行動している。それは結構シンプルな理由で、けれどそれがただシンプルに解決する、そうしたものではなくなっていきそうな気配がしていてドキドキさせられて、とりあえずは直近のひとつ目ですね。ほんと、これ、どうやって解決するのだろう。考えてもわからない。それだけに、これからの彼らの行動、選択がいかなるものになろうというのか、注目せずにはおられません。
しかし、この漫画の最大の謎は、トキヤの部屋に現れたあの子になるのかなあ。いまだ知れない彼女の正体。それが明かされる時が、すべての問題の解消されて大団円にいたる、その時となるのではないかなあ。なんて思っています。少なくとも、この子のやってきた理由や目的、それがたまたまとか偶然とかなんとなくとか、それはさすがになかろう、そう思われて、だからこそすべての鍵は彼女にあるのではないかって、もう気になって、多分彼女につながるヒントはもう出てる。どれだろう、なにに、誰に連なっているんだろう。ほんと、わかんないから、悔しいんですよー。
- 長月みそか『でいとりっぱー』第1巻 (電撃コミックスNEXT) 東京:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス,2016年。
- 以下続刊
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