『まんがタイムきららMAX』2022年3月号、昨日の続きです。
『桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい!』
桔香はほんとにシモベ思いのいい子だよなあって、あらためて思わされた今回。学級新聞の四コマ漫画、なにかしら描いて埋めないといけないんだけど、桔香は絵が苦手。そういったら委員長、アオイが自分が描くと申し出てくれたんですね。
渡りに船ではないですか。でもアオイが描いてきた漫画、桔香一読してつまらないと衝撃受けるんですが、いやいや小学生の描く漫画なんだからこれくらいでいいのよ。ネコッピ可愛いでしょう? それでいいのよ。でもつまらない。その事実をアオイに告げられない桔香。あんなにも目をキラキラさせてくるアオイを前にして、つまらないといえる人はそうそういないよねえ。自分? ええ、私だっていいません。
で、それでやる気出しちゃうアオイが可愛いじゃないですか。まさに寝食を忘れて少しの余暇もあまさず漫画に振り向けて、で、それがあの量! すごいな。出来のよしあしは別にしてもこれはこれで異能の人じゃない? 怖ろしいほどに量産してくる漫画。それがことごとくつまらないのだけど、やっぱり桔香にはそれを告げることができない。
これね、もし桔香が言葉を選んでリテイクさせることができたら、この生産量ですよ? なにかしらモノになった、そんな可能性もあったのかなあなんて思ったんですが、まあ桔香も小学生ですもんね、それはあまりにも過大な要求です。
今回はアオイの挫折回といっていいのでしょうか。勢いよく出版社に持ち込みなんてしちゃってね、その出来、結果は別としても、この行動力は評価すべきだと思う。なにはなくとも動ける人間が最終的に勝利に、成功に近づけるのだと思うのですよ。まずは踏み出した、そのアオイのチャレンジは賞賛すべきことで、結果こそは残念で、アオイの漫画もこれでおしまいみたいだけど、こうして打ち込んで、チャレンジしてみたこと、それはアオイにとって大切な記憶になるんじゃないかなあ。なってほしいなあ、なんて思ったんですね。
『今日の授業は恋愛です!』
りっかにとってこの恋こそが一世一代の大恋愛。それが描かれた今回。ともに描かれたなとせの人となりもまた! 実に読みごたえあるエピソードでありました。
りっかとなとせ、ふたりずいぶんとその性格は違っていて、当たり柔らかく優柔不断ともいえるりっかと、なにごとにもきっぱりしっかり、四角四面ともいえそうななとせ。でも譲れない思いがあるのはふたりともに同じで、その思いがゆえにふたりの結びつきも強まるという流れ、これが本当によかった。
りっかが中学の頃の友人から、3人カップルになることを提案された。5人でカップルを作っているのを見て、だったら私たちと3人で組んでもいいんじゃない?
これ、りっかの気持ちが誤解されていたんでしょうね。どうしてもふたりで組まないといけないとなったらりっかは外れてしまうけど、りっかがそれこそ4分割の恋情で満足してるなら、私たちの組に入っても問題ないんじゃないか。りっかが、りっかたちが、さがりを中心に5人で組んだカップル、そこにある切実な思いが外からはうかがい知ることができなかったのでしょうね。
かつてのりっかがいった、誰かの一番になりたいって思ったことがなかった。その曖昧な態度もこの誤解に繋がったのでしょう。でも、今のりっかはもう以前のりっかではないということ。それを友達に話そうと思ったら、きっぱり決然なとせさんが介入ですよ!
なとせの行動はまったくのおせっかいで勇み足だったんだけど、見てられなかったんだろうなあ。りっかに変わらぬ状況で、同じく譲れない気持ちを抱えているなとせです。りっかの思いがわかるがゆえに、この子が後悔するような選択をしてほしくなかったのでしょう。いつもどこか余裕を感じさせるなとせが、あんなにも必死にりっかの思いを代弁するんですよ。もう、どれだけの思いがこの子のうちに渦巻き動揺していたというのだろう。この場面、そして続く一連の流れは、引き込まれるものありました。ぐっと胸に迫って、そのふたりの関係に涙誘われる、そんな力がありました。
しかし、ふたりの様子をうかがいながら、終始クール、あるいはぞんざいなさがりがめちゃくちゃ面白かった。もうちょっと気にしてさしあげて! いや、でも、さがりはそれでいいのかもしれません。りっかやなとせたち、苦労しそうですけどね。
『SAN値直葬!闇バイト』
これ、ちょっとすごいもの見せられた感あるな。なんだか飄々? 魔術だ空間移動だ、常軌を逸した描写が連続するというのに、どこかスタティック、静かに、動揺なしに進行する、そんな雰囲気のある漫画。淡々と、見知らぬ荒地に放り出されたあかりとこよ、ふたりの様子を追いながら、これ不思議な味わいだよなあなんて思ってた。出てきた脅威、暗黒ぬいもちんまり微妙な感じで、これ、なにかしらの苦労はするんだろうけど、あかりもいうようにわりかしサクッと片づいちゃったりするのかなあ。
みたいに思ってたらとんでもない。
ページめくったら、うわ、えらいことになっとる! あの、あかりののけぞりつつも状況掴めずにいる感覚、それを同時に味わったかのように一瞬呆気にとられて、え? まさしく脳裏に空白が生じたようになすがまま一方的に状況を運ばれてしまった。
この感触はそうそうは感じられない。だって、まったくの予想外だったもの。うわあ、なるほどこういう見せ方! これまでのスタティックな感じ、それもこの瞬間を際立たせるためだったかと納得させられて、いやあ、あの1ページの遭遇感は特筆ものでした。なるほど、これが宇宙的事象に遭遇した感触か。本当、稀有な体験をさせていただきました。ありがとうございます。
で、この衝撃があるからこそ、ここからの展開がおかしい。くびり殺されるところだったあかりが、一気に正気を取り戻してからの仕返し! このコミカルさに笑ったら、続くこよの魔術のヤバさ! あかんがな、こよが正気度チェックで負けてる!
この暗黒ぬい、ダゴン様だったんですね。仕事初回からえらいの相手にさせられましたね。いやほんと、このバイトめちゃくちゃヤバい。あかりは賃金に目がくらんで継続する気でいるみたいですが、身代りぬいがなかったら生きて戻れてなかったよ!? 脅威との遭遇が一度ずつだったから助かったものの、それが複数回にわたったりしたらほんとアウト。悪いことはいわないからやめておきなさい、といいたいところですが、自分だったらどうだろう……。ほんとどうなのだろう。
人間とは意外やあかり的な選択をしてしまいがちなのかも知れません。
- 『まんがタイムきららMAX』第19巻第3号(2022年3月号)
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