『まんがタイムきらら』2022年2月号、発売されました。表紙は『奥さまは新妻ちゃん』。新妻ちゃんがメインで、その周囲を今年の干支、寅にちなんだ虎コスチュームを着た面々が、ちんまり取り囲んでおりますよ。しかし一口に虎コスチュームといっても、それぞれに個性が違っていて面白い。パーカーがあったかと思えば和装まであるのね。これ、みんなポーズついてますから正面からの見た目、よくわからないところもあるんですけど、ひととおり正面から見たらどんな風なのかとか、ちょっと興味出ますよね。実に可愛い格好です。
今月は新規ゲストが3本です。
『甘く溶けたら完成です』
宮嶋美羽が目を覚ましたら、そこは見知らぬ部屋。目の前には小さな女の子がいて、いったいどういうことだろう。その子がいうには、ふたりなかよくおうちにいるようにとの手紙があったっていうんだけど、ということは母の友人とか親戚とか?
いやいや、美羽さん、素直に信じすぎでは? 家から出ようとしたらそのちびっ子にとめられる。テレビを見ようとしてもテレビがつかない。携帯電話も圏外で、この家、完全に外界から隔離されている!? まさか、世界にはこの一室だけが残されて、一歩外に出ればなにもない虚空が広がっている、みたいなことになってたり!? はしていないみたいです。
しかし若干怖ろしい話ですよ。この小さな子が、ペットを飼いたい、その一心で学校帰りの美羽をかどかわしたんだ! どこかぼんやりしている美羽。その美しさ? 可愛さがちびっ子に見初められた理由? 暗示なのか催眠なのか、自室に美羽を連れ帰り、外界との接点を断って、そして見事に囲い込む。
おおお、怖ろしい。でも、この作者、春日沙生らしい世界観だと思います。ゆるい、やわらかなお姉さんと、アンファン・テリブル、早熟で大人顔負けに頭の回る小さな女の子。その見た目からは想像できない関係性、その転倒感、ここにこそ作者の持ち味があるのですね。
『ぐーたら魔王のドキドキ世界滅亡計画』
大好きなゲーム、その続編が出るというのでフラゲ目当てに学校サボって買いに走ってみたら、なんの因果か異世界に召喚されてしまってさあ大変。ああ、これ、そのゲーム、『プリンセスクエスト2』の世界に転生してしまったってやつね? と思ったら、うーん、どうもそうじゃないみたい。知らぬ世界に召喚された。しかもそこでやらされることが魔王というから輪をかけて大変。なんと、1年で寿命が尽きます。その前に世界を滅ぼしてくださいときた。
これ、世界を滅ぼしたら帰れるってことでいいのかな? だとしたら死に物狂いで世界を滅ぼさなくちゃ! 実際、魔王に担がれたその子、笹木のの、は魔王としての才能にあふれているみたいだし、頑張ればなんとかなる!?
と思いきや、この世界にはゲーム機がない、ということは折角入手した『プリクエ2』も遊べない。いくら才能があろうと心の栄養が摂取できないでは、魔王のの、活躍以前の問題!? いやもう、これからが思いやられる、そんな導入でありますよ。
『学校帰りのエトランゼ』
入学式の初日に発熱、学校を休まざるを得なくなった清洲飛鳥の不幸。なにしろそこから風邪をこじらせて、3週間休みっぱなし。学校に出れば、クラスの人間関係はもう完全にできあがってしまっていて、飛鳥の立ち入る隙もなし。
期待していた、楽しみにしていた高校生活なのに、のっけから閉ざされてしまった、そんな気持ちになってしまったというのですね。
そんな飛鳥、傷心に背を押されるようにして、電車に運ばれるまま鎌倉までいってしまった。眼前に広がるは、夕日に照らされた海。美しさに心奪われるも、すぐさまひとりぼっちの寂しさにとらわれてしまって、けれどそんな飛鳥に意外な出会い。同じ制服の、同じ学年の子と、知らぬ海にて知り合い、話す機会を得たのです。
こうして話して、そして一緒に眺めた海は、さっきまでの寂しい海ではなくなって、より広く、大きな世界に触れられる、そんな景色になっていました。気持ちが変わったんだね。閉じてしまっていた心が、気持ちが、その子と知りあったことをきっかけに、一度に開いたのだね。
少しのきっかけででも世界はがらりと姿を変えてしまう。そうした描写、はっとさせてくれるものありましたよ。そしてこの子が学校にいる、再びあえる機会もあろう、そう思えれば、あんなにも孤独だった学校も、また違う印象をもって飛鳥を迎えてくれることにもなるのでしょう。
- 『まんがタイムきらら』第20巻第2号(2021年2月号)
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