『まんがタイムきららフォワード』2022年3月号、昨日の続きです。
『ちょっといっぱい!』
もみじの向かう方向、それがより明確になってきた、そんな感じがありますよ。
瑞樹とともに仙台に帰ったもみじ。瑞樹の兄、ケイと落ちあって、それから流れで市場、仙台朝市にいきました。新鮮な魚介の数々。ウニなど鮮度を保たなければならないようなものも、ここなら簡単に手に入る。こはる屋では提供の難しいものも、市場に近いすずめ亭だと問題なくメニューに加えられる。
すずめ亭、かつてもみじの祖父母がやっていた店。瑞樹が仕入れを手伝っていた関係で、今でも市場で声をかけられる。もみじの知らずにいたすずめ亭のバックヤード。それを見て聞いて知ることのできた今回。さらにはまだ建物も残っていると知って、もみじ、見にいきたい。かつての思い出の場所、再び。今のもみじの目で見るすずめ亭とはどんな場所になるのであろうか。
もみじの向かおうとする方向。すずめ亭再建? いきがかりでバイトをすることになったこはる屋をきっかけとして、思い出の店へとついに辿り着いた、そんな感がありますね。もみじのテーマが決まりつつある、そんな感じがするのです。
『最果てのともだち』
前回いっていましたね。アサヒと一緒にいるサキのこと。アサヒについてこられないはずのサキとアサヒが話していたのはどういうことなのだろう。この答が今回描かれて、ああ、アサヒは自分を信じ応援してくれるサキと先生のことを大切に、自分の胸の中に抱くようにしてこの林間学校に臨んでいたのですね。
あくまでもサキはここにはいない。けれどサキならきっとこういってはげましてくれる。その思いをともに、ひとり逆境の場にて踏み止まったアサヒ。ああ、信じてくれている、自分を尊重してくれている、そんな誰かがいるだけで人生は違ってくるんだな。アサヒにとってはサキがそう、先生もそう、そしてお母さんもそうなのでしょう。あの場で大切な人たちのことを思い出すことができてよかった。本当にそう思えた描写でした。
そして、昼のこと、ひとり後片づけを押しつけられていたアサヒを手伝ってくれたユウにお礼をいう機会ができて、そしてそこからはじまる交流。アサヒを知ってくれたユウ。アサヒの言葉を待って、聞いてくれて、受け入れてくれる、そんな人が増えた。その嬉しさ。その心強さに、またアサヒの世界の確かに開かれていく様を見たのでした。
しかし、ユウとの交流、これは嬉しいことだったのだけど、ちょっとサキが気になりますよ!? ああ、これまでアサヒにはサキだけだった。ところがサキ以外の存在が現れて、サキ、アサヒへの執着をあらわにするのですか!? えらいことだ。いや、考えすぎかも知れんけど、でもこれはちょっと怖い。一波乱ありそうな気がします。
『ねことちよ』
前回ラストに不穏を感じていましたが、ちょっと考えすぎだったみたいですね。折り紙の猫、どう見ても猫、これを猫と認識しないまきとちよのことは今なお気になるんですが、折り紙をするねこにそっと働きかけた手の持ち主。ああ、ちよのお母さんなのか。
ねこが話しているんですね。その様子を見るふみには、ねこの話しかける相手が見えない。これは怖い話とかじゃないよね。さらにいえば、ねこの出生の秘密のどうこうでもないよね、きっと。ただ、ねこを見守る、そんな人がちよたちのほかにもいるんだ、そういった感じ。ねこを大切に思ってくれている。そんな彼女の残した折り紙、ちよも知らない折り方のそれを、今こうしてちよが手にして、そして物思う。懐かしむよりももっと深い、驚きよりももっと穏やかに染みいる、そんな感情だったんじゃないか。ちよを育ててくれた大切な人のことを、こうしてふたたび身近に感じることができたんですね。
自分のついぞ教わることのなかった折り方を、ねこを通じて教わる機会を得た。その、ちょっと奇跡にも似て、心にしっとりと跡を残す、そのやわらかな感触になにかほっと息をつくような安らいだ気持ちを覚えるのでした。
- 『まんがタイムきららフォワード』第16巻第3号(2022年3月号)
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