2021年9月24日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2021年11月号

 『まんがタイムきららフォワード』2021年11月号、発売されました。表紙は『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』からアリナ・グレイが登場です。本編でも登場ですね。かっちりとした衣装、魔法少女っぽさよりもなにか組織の一員、制服を強く意識させる衣装が印象的です。またその表情のせいもあるのかな? 大人っぽさ感じさせて、元のゲームのイラストと比べてみてもずっとシャープな印象が際立つ表紙であります。

今月は新規ゲストが3本です。

『しあわせ色ごはん』

家族と離れて一人暮らししている女の子、高梨柚希は料理が苦手。おじいちゃんが送ってくれた野菜や鮮魚を持て余してしまって、困っていたところにあらわれたのが家庭料理部の雛野咲花。せっかく借りた家庭科室、咲花のリードで鯛の炊き込みご飯を作りはじめるんですね。

高校受験の失敗で、家族との、とりわけ父との関係が悪化してしまった柚希。母のすすめで家を出て一人暮らしすることとなったというのですが、少なくとも祖父は孫娘のこと心配していますよね。たくさん食材送ってくれたりするの、それだけ見てもよくわかる。そして咲花の料理にまつわるエピソード。かつて母と一緒に作っていた料理、その味が父と自分を亡き母と結ぶよすがとなった。ええ、咲花にとって料理とは特別なものなのですね。

うまく作れた鯛めし。その味に、無理に押し隠していた寂しさを自覚することとなった柚希。咲花の助けもあったけど、自分で挑戦して、成し遂げたという実感が、受験の失敗以来ずっと後ろ向きでいた自分自身に気づかせ、前向きになろうという気をおこさせたというのですね。

今回は、まずは柚希自身の問題に着目し、最初の一歩を踏み出させることとなりました。これ、家庭料理部での活動が今後も続いていくのなら、柚希と家族の、父との関係についても踏み込み、分け入っていくことになりそうな予感がしますね。咲花のエピソードが、そうしたことを予感させるのです。

『どしたん?話聞コカσ^_^;』

SNSで出会った知らない人と会ってはいけません!

くるむが実際に会うことにした人、たけおさんは、その文面からもおじさんを感じさせる人。オフ会に憧れるのはいいとして、よく知らない人と会うのは危ないよ! なんてことをまずは思ってしまうわけですけれど、くるむの前に現れたのはおじさんどころか、どう見ても素敵な美人さん。最初はどうにも信じられなかったくるむだけど、届いたメッセージ、そして自撮り写真がまぎれもないたけおさんであることを指し示して、ここでネナベを疑うくるむがちょっと面白かった。女性がネットトラブルを避けるため、性別を偽って男として活動してるとかありそうだもんね、と思ったら、おっさん口調は普段からなのかー!

この時のくるむの感想、リアルでおじさん構文で話してる。そうか、そうか、こういうの、おじさん構文っていうんですね。

たけおさん、基本表情が固まってるのがおかしいですよね。緊張してるのかな? どうにも人づきあいが苦手そう。とか思ってたら、シアトル系コーヒーチェーン店の注文にも慣れてないみたいで、注文でまごまごして、また出てきた甘いコーヒーも飲み切れなくてと、そうしたところからも頑張ってる様子が思いっきり見てとれる! その後の言動見てみても、苦手ながらもなんとかしてくるむを楽しませたい、そういう気持ちが伝わってくるんですね。

自分のことを優先してくれている。くるむもそうしたたけおさんの気持ちを理解して、そこから逆にたけおさんのこと気づかうようになるでしょう。互いが互いに相手によくしたい、楽しんでもらいたい。そういう気持ちで接しているところ、優しさがあっていいですよね。そして終盤、ついに語られるたけおさんの本当の気持ち。その素直さにもまた心打たれて、いやもう、これはたけおさんこそがヒロインですよ!

たけおさんの気持ちとくるむの気持ちが通じた友情の印、意図せず成立したペアチャーム。この人を大切にしたいという気持ちの証、それがとても素敵でした。あと、終盤にね、緊張が解けたか、あるいはそのままの自分でもくるむは受け入れてくれるとわかって安心したか、表情の少し緩んだたけおさんがまた素敵で、ええ、このふたりの関係、ずっと続いて、より深まっていったらいいなと思った、そんな読み切りでありました。

『リアルの知人にSNSを知られたくない陰キャvsクラス全員と友達になりたい陽キャ』

陰キャを自認する伊藤沙耶。3次元に友などいらぬ、えらく割り切ったお嬢さんなわけだけれど、誰も近寄ってくるなオーラを放っていたにもかかわらず、声をかけてきたのが一ノ瀬真由。クラス全員と友達になりたいタイプの女なのだそうですよ!

沙耶にとってはありがた迷惑、いや、そもそもありがたくもないか、純然たる迷惑か。けど真由の攻勢に徐々に心を開いていくこととなって、決め手は自分もやってるアプリ、ゲームを真由がはじめたこと。同じ興味、通じる会話、共通項ができたことで自然と会話もはずみ、またそれまで知らなかった真由の側面も見えてくるなど、ちょっとずつ距離の近づいていく様子が描かれるの、説得力あってよかったなと思ったのでした。

それだけに、近すぎすぎた? 真由の影響力が自分に及ぼすもの。あるいは自分に自信がないゆえ? 自分の感じたことさえも、真由の言葉を聞けば揺らいでしまう、そんな自分を知って苦しくなっていく沙耶の心情。その揺らぐ思いさえも、確かな重みをもって感じられたの、丁寧な筆致ゆえか、それとも沙耶への共感ゆえか。しみじみと伝わるものあって、沙耶のこと、ずっと好きになれた。

だからこそでしょう、公園で出会ったふたりの会話。また知らなかった真由の側面に触れ、そして語られる真由の言葉。なぜいろいろな人と知りあっていきたいのか、その理由にうっと胸が詰まって、ああ沙耶が迷い苦しんだように、真由は真由でまた違ったアプローチで自分というものの境界、かたちを模索し続けているんだ。

似ていて違うふたり。違って似ていたふたり。そのふたりの関係、踏み込んでくる真由に、開きなおったように攻めに転じはじめる沙耶、知ることで変わっていく、変わっていくことがまた新たな側面に気づかせる。そんな人と人との関係を描いて鮮やか。いい漫画でした。

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