『まんがタイムきらら』2021年10月号、発売されました。表紙は『星屑テレパス』。海果、ユウ、遥乃の三人が、本に埋もれるようにして横になっているのが面白い。ユウが涙浮かべて目をこすってるのは、これ、眠たいからだな? 調べものでしょうか。揃いの生地の、でもちょっとずつデザインの違っている衣装が可愛くていいですね。三人、頭を揃えてるその様子に、仲のよさ、繋がる気持ちといったもの感じさせてくれるのがとてもいい。ああ、いつかはここに瞬も加わればいいなって思います。
今月は新規ゲストが4本です。
『ゆりっと♡かんちがい』
この強引さ、嫌いじゃないですよ。
友達を作れずにいた転校生、野々下が友達を作ろうと頑張る話なんですけど、なぜかつきあうつきあわないって話になってしまうというのがおかしくて、いやいや、どんどん誤解深まるなあ! 親切にしてくれた七海さんに、友達になってください、そういおうとしたところ、緊張のあまり周囲の会話に影響されて、つきあってくださいなんていっちゃった。しかも本人、その間違いに気がついてない。
つきあうのは無理、友達ならという言葉に喜んだ野々下。野々下としてはこれでもう目標達成してるんだけど、七海から見た状況はまるで違ってるというのが面白かったです。野々下の言動もろもろから、なんとしても友達以上になろう、つきあおう、そうした意図を読み取ってしまって、誤解なんだけどなあ、それでもなんだかいい雰囲気になるのもおかしくて、で、誤解の果てに野々下のことなにがあっても諦めないおばけメンタルと評価するにいたる。
ちょっと強引な展開ではあるんだけど、最初にいったように嫌いじゃない。むしろ、この方向性でがんがん突き進んでほしい。野々下がどれだけ天然に七海にアプローチするか、その面白さこそに魅力を感じたものだから、どんなにアクロバチックな展開がきたとしてもウェルカムです。
『Vドルあーかいぶ!』
会話のテンポがよくって、そこかしこに面白みを盛り込んでくるのがうまいですね。よくわからないままバーチャルアイドルを目指そうとした日ノ河リコが、たまたま知ってたバーチャルアイドルの中身とほんとにほんとの偶然で出会えてしまった。その時のセリフ、「今日が命日だ」、これがまさかの殺害予告と思われるとかね、ちょっとのやりとりに思わず笑いを誘われて、これはいける、実感をともにそう思わされたのでした。
基本対話で展開していく感じですね。最初にリコ、元気ポジティブキャラがひとりでいろいろやってる時から、註釈がツッコミ入れていたりしましたが、クールキャラ、神木ふゆが加わったらそうしたツッコミも自然と対話の中に出てくるようになって、けどこのノリが一番生きてきたのはツンデレキャラ、来栖川絵美も加わって三人で話すようになった時だったと感じます。
リコと絵美がわあわあやってるところに、対話外からふゆがツッコミを入れてくる。1対1のやりとりから、外から眺める視点も加わることで、ツッコミのバリエーションが増え、テンポの面でも、指摘の内容の面でも、より自由になってると感じたんですね。短いスパンでのツッコミが四コマの流れを引き締めながら、最後の落ちとなる強いツッコミまでを飽きさせない。この退屈させない刺激的、魅力的な対話は強みだなあって思ったのでした。
ずいぶん昔ですが、対話のおかしみが光る作家がいらっしゃって、それがまた面白かった。きらら誌には軽妙な会話の面白さを受け入れる、求めている層がかつてはあって、そして今も間違いなくいると思っているので、こうした作風は実際いけそうに思います。
『桜色プルーフ』
推理ものは珍しいですね。でもって、面白かったです。推理ものとは知らずに読みはじめて、途中、学校内で起こった小さな事件の顛末を追うくだりで、ああ、これ推理ものだ。気づいてからは、読んでいるこちらも頭の回転が上がり出した感があって、謎を知りたいという欲求と、謎解き役の図書委員、桜庭のキャラの立て方のうまさに、ぐーっと引き込まれるようにして読みました。
桜庭来実、物静かで読書が好きな女の子。甘いお菓子が好きで、読書中、頭を使っていると脳が糖分を欲するタイプなのだそう。思えばこの冒頭にいろいろヒントがありますよね。そうか、桜庭の姉は推理作家なんだ。この子が姉の薫陶を受けていたとすると、残された証拠をもとに推理し事件を解決に導くことに素養のあるのもうなづけるように思えます。
桜庭を学内事件の捜査に引き込んだのは、ジャーナリストを自称する南宮一穂。この子、たまたま図書室に調べものしにきたわけじゃなく、お菓子で釣れる図書委員がいるという事前情報を得てやってきてたというんだから、第一印象よりもずっとやり手っぽいですね。だって、最初は人の話を聞かない、自分の興味に猪突猛進、軽挙妄動の落ち着かない系女子だと思ったじゃん。
当初の聞き込みで得られた情報をもとに学内新聞を調べにくるとかね、アプローチとしては正統派。で、甘党図書委員を懐柔すべくお菓子を用意して、ここぞという時に手札として切ってくる。ほら、有能だ。で、この漫画の人物関係。捜査する人と推理する人、その関係性もいい感じに揃ってるように感じられて、事件を捜査するレストレードがホームズに事件を持ち込む、波越警部が明智小五郎に……、といった具合に、役者が揃っている感がしたのです。
桜庭のキャラの立て方といっていました。これ、当初は事件の捜査に乗り気でなかった桜庭が、現場の調査や聞き込みから得られた情報を頭の中で組み立てはじめるでしょう。その際、脳が糖分を欲する。探偵が思考するモードに入ったことを明示するギミックとしてのお菓子の使い方のうまさ。そして繋がっていく証拠と証拠が導き出す結論。この見せ方はスムーズで、スリリングで、面白かった。
私はこの漫画、気に入りました。続きが読みたい。ゲスト分だけでまだ残り3話あるんですか? それは嬉しい。ええ、楽しみが増えましたよ。
『三毛猫アイスクリーム』
これからはじまる物語、その冒頭といった感じ。さらに続くものに期待がふくらむお話でした。
ここに登場するのは人の姿に描かれた猫たちなんですね。主人公は、あ、名前が出てきてないな? コミュニケーションが苦手で猫集会への参加もためらわれる、そんな内気な子。猫の中にも建前みたいのがあるのか。好きにしていいといいながら暗黙のルールに縛られている、そんな猫社会に溶け込めずにいるこの子が、もしかしたら友達になれそうな子たちと知りあって、さらには仲を深めていくこともできるかも知れない!
そんな予感をさせた第1話、いや連続ゲストではないのか……。ともあれ、これは続きを読まないではおられない。そんな感じが強いですよ。
ひとりでいる主人公に声をかけてくれた小夏。元気でちょっと強引な子。あの、柵の上をたたっと楽しそうに走ってる様子とか、すごくチャーミングで、この小夏という子の個性をよく表現していたと思います。とにかく活発、楽しいことが好きなんだな。あとずっとニコニコしてたね、この子。
もうひとりの猫の子、こちらはまた個性ががらりと違って、自称アメリア、皆からはみぃたんって呼ばれてるの? ちょっと気難しそうな子なんですけど、リボンをあっちこっちにたくさんつけてて、おしゃれさん? ちょっと怒りっぽくも感じるけど、心底気分を害したりはしてない模様、むしろ自分からネタにのっていったりもする、そんな柔軟さがある? きっちりしているおしゃまさん。この子のキャラクターいいですね。申し訳ないけど好きなタイプです。
さて、こうして登場人物3人が出揃って、それぞれどんな子なのか紹介がされて、最後に一端別れた主人公の子と小夏、みぃたんが再び出会う。さあ、いよいよここからが本番だ! といったところで終了じゃあ、あまりにも殺生というものでありますよ。続き、続きの枠をお願いしますよ。本気でそう思います。
- 『まんがタイムきらら』第19巻第10号(2021年10月号)
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