『まんがタイムきららフォワード』2020年7月号、発売されました。表紙は『スローループ』。パーカー着た小春が、釣竿手にして座ってる。そのちょこんっといった感触が、この子のコンパクトさ、キュートさ、押し出していて実にいいと思います。見た目はすごく女の子っぽい小春だけど、帽子がね、この子の活発な一面をほのめかすワンポイントになってる。またその笑顔、ちょっといたずらっぽい? ええ、可愛い、いい表情だと思いました。かたわらに書かれたキャッチフレーズ。かわいい! 楽しい☆ 美味しい♡ というの、なんだか釣り込まれるものありますね。美味しいがきちゃうの、これがなんか面白いんですね。
今月は新作ゲストが3本です。
『ゆめぐりっ!』
なるほど、湯を巡るからゆめぐり、なんですね。実家が銭湯やっている花街ゆの。隣のクラスの子が所在なげにうろうろしているところを見かけて声をかけてみたら富士山を探しているという。富士山といえば銭湯。それでゆのの友人、温希がゆのの家の銭湯に迷子の久遠院さんを誘って、そして皆で一緒にお湯につかるというんですね。
銭湯ははじめての久遠院。わからないこと沢山で戸惑いながらも、壁画の富士山、大きな湯船、皆で湯につかってくつろぐ楽しみを知って、そして仲良くなっていく。途中、久遠院では長いからと名前、巡と呼ぶようになって、そして最後にはもうすでに友達だっていう。続きものの導入思わせる、そんな感触もあるお話でした。
最後に、また3人で湯めぐりしようっていって終わるの。めぐるというからには、ゆのの家の銭湯だけでなく、他の銭湯にいってみたり、あるいは温泉とか、そういう発展性があるの、エピソードを重ねていきやすそうに感じました。ただお湯の紹介になるのではない、この3人ならではの広がり。それを積み上げていったらきっとなにか特別なものになっていく、そんなことを思ったのですね。
『ギャルが図書室に来ちゃダメですか?』
こちらも長く続くお話の導入感ある一話ですよ。学校の図書室、カウンターで静かに過ごしたかった図書委員の相原栞。なのに一番苦手というギャルがきてしまって、脳裏をよぎるのはかつての嫌な思い出。自分の居場所が侵食されちゃう! やたらと警戒するっていうんですね。
しかし、栞さん、ギャルが本を読まないっての、偏見ですよ。たくさんの本を持ってきたら本でドミノ倒しする気が! って、いやいや飛躍も飛躍だけど、ギャルはドミノ倒しするものなんですかい!? けれどこのギャルの人、予想外にも原稿用紙を前に黙々と書き物はじめて、気になる、見たい、知りたい、けれど近づくこともかなわずにいて……。
この子、小説書いてたんですね。なのに原稿を忘れて帰ってしまって、それを栞に読まれてしまって。自信がなかった。恥ずかしいな、面白くないしっていうこの子に栞が面白かったという時の表情、決意に溢れたその感じ、これがよかったんですよ。思いきった。いわずにはおられなかった。そんな感情が先にたって、ぐいっと前に出るしかない、そんな思いの先走り。
かくしてふたりは友達になってというの。この一連のことで、ふたりそれぞれになにか壁を越えた感じがするんですね。
『もとドル。』
アイドルを引退した音色かれんは、中元千咲として目立たず地味に学園生活を送りたいのだけど、自分のこと元アイドルと気づかれてしまって、しかもバラされたくないのにしつこく元アイドル元アイドルって呼ばりたりして、この空気を読まない井萩さん。ウザいと思っちゃダメですか!?
でも、なんだかんだで、それなりににつきあってますよね。バラされちゃ困るからか目を離せない、常に近くにいようとしてる? それがために素の自分で話せるみたいな関係になってるじゃないですか。さらには井萩のこと、顔整ってるだ肌きれいだとかいっちゃって、その様子、委員長に恋愛関係!? って誤解されちゃったりなんかして、ともあれこの最初は相性悪そうだったふたりが、なんだかんだで話せる間柄になっているところ、これは悪くなかったって思うんですよ。
そして、千咲、委員長のことその魅力でもって虜にしてしまって、ああー、こういう感じで元アイドルとはバレないながらも学内ファンを増やしていく方向性? いいのではないでしょうか。
井萩が空気読まないっていってましたけど、千咲も負けないくらいに押しが強かったりする、そうしたところ強さのバランスがとれててよかったと思いました。あと、委員長。この子、最初からずっと振り回されてますよね。ええ、この子が時には振り回すようなポジションにたったりしても、また面白いものが見られそうに思いました。
- 『まんがタイムきららフォワード』第14巻第7号(2020年7月号)
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