2020年5月3日日曜日

『まんがタウン』2020年6月号

 『まんがタウン』2020年6月号、発売されています。表紙は『新婚のいろはさん』。ゴールデンウィークということで、牧場にお出かけですか? 初夏のよそおい、いろはさんが大変に愛らしい。この人、白のワンピースとか、ド定番かつシンプル、誤魔化しきかない系の衣装もばっちり似合って、これ、ものすごいことですなあ。手にしたでっかいソフトクリームが、この人のらしさをさらに押し出して魅力的です。今回のゲスト2本の告知はじめ、単行本発売やセンターカラーなど、カットもいろいろございます。

今月は新規ゲストが2本です。

『あの世で猫になる』

これ、すごいな、主人公は故人なんだ。気づいたらからっぽの部屋に倒れるように眠っていた。しかもここに新たな入居者が入ってきて、なんと、理由はわからないけれどもう死んじゃってるっていうんですね。というか、この部屋、事件がありすぎる! おかげで自分の死因もわからない。このちょっとシニカルな感じ? 作者、東屋めめの持ち味が出てて大変好みでした。

さて、この漫画の肝ですよ。あの世で猫になるってどういうことだろう。だって、霊の人、人の姿してるし自意識も人のままですよね? と思ったら、不動産屋の兄さんがかわいい猫の霊ですって入居者にいっちゃうんだ! これのすごいのね、最初わからんままに適当なこといってるのかと思ったら、しっかりきちんとわかった上で、物件の下見にきた人に猫だワンちゃんだとだまくらかして、入居のハードルをさげてたっていうんだ! おかげでこの町には、ペット扱い、赤ちゃん扱いされてる幽霊が山盛りで、ほんとこのシュールな情景、すごかった。ほんと、よくこんなの思いついたもんだと思いましたよ。

でも、霊として迷いながら? この世にとどまってる主人公の第二の人生? いや、死んでるんですけどね、猫扱いだけどやさしくしてもらって、なんかそこに情なんか感じてるぽいところ、不思議と沁みるんですね。寂しくないって笑顔の入居者さん。その言葉にちょっと嬉しさ感じてる霊の人。あのコマとか最高だったと思うのです。

『袖振り合えば、君との縁』

着付け教室にいった先で出会った女子高生。あまりに好みなのかどうなのか、JKだー、かわいいー、と叫んでぐいぐいいくの、あまりに不審な反応だから控えた方がいいですよ、お姉さん! もしおっさんだったら通報から逮捕まである流れだと思う。

初対面での対応誤ったせいで、さすがに距離をとられてしまうお姉さん、宇田川清乃。女子高生、若狭まゆこからは警戒されてるわけですけど、これ、着付けをともに習っていくうちに、だんだん打ち解けていくって流れなのかな? そう思っていたら、一気に打ち解けるきっかけがあるっていうんですね。

ふたりのインナー、シャツにプリントされていたキャラクターが一緒だったっていうんですね。ゆるだらニャンコの金次郎。思わぬ共通の趣味に一気に距離感近くなって、ここからのふたりの反応、対応、それが最初と大違い。ああ、この距離感はいいですね。もうすっかり仲良くなった、そんな感じとてもよかったです。

と、ここでさらにもうひとつ、今はまだ秘密のギミックあるんだ! 宇田川清乃が金次郎のイラストレーター! ああ、これをいつかまゆこに伝える? 気づかれる? その時がきたら、またなにか大きく関係も動いたりするのでしょうか。いずれくるだろうその日のこと、ちょっと楽しみでありますね。

『新婚のいろはさん』

はじめ、いろはがこのマンションに越してきて一年がたちました。ということは、もうちょいしたら新婚じゃなくなる!? というか、新婚ってどれくらいの期間有効なの!?

お隣の早倉さんのお母さん、登場ですよ。小学校で教師をしている照子さん。なんだか楽しそうなお姉さんで、いろはとのやりとりも軽妙で実にいい感じ。引っ越ししてこれで一年。一周年のお祝いといって、買ってきたケーキ、お父さんの分をいろはに出しちゃう! このお招きされての茶話会で、娘、哲子のいろいろ話してるところね、親の心配、子の成長、ご近所さんから聞かされる知らない娘のいろいろ、そういうのがちょっとくすぐったい感じして、そうか、親の視点だとこんな感じなんだなー、とか思ってたら、その様子を哲子がそっと見ていた! あの入りづらそうなところ、わかる。わかるわー。

娘と母の距離感、いろはとのもかな、それも面白くって、三人の年齢差とかね、むしろいろはは哲子に近いのに、既婚者となると母寄りに感じちゃうという哲子の印象。これもわかる感じがする。でも決して距離があるわけでもない。母と娘にしても同様でっていう、やりとりのはしばしにうかがえる母娘の関係、やっぱりなんかくすぐったくって、ちょっといいなって思ったんですね。ええ、仲良い母娘だと思います。

『珈琲と猫の隠れ家』

特別編だそうですよ。なんか不思議な感じ。ワイド四コマ、店の片隅から定点カメラでただただ店内の情景を切り取りましたといった風な見せ方が、ちょっとドキュメンタリーチック? お店のお客さんと後木や店長のやりとり、そのコミュニケーションする様子や、猫たちの気ままにのんびり楽しそうにやってる姿がありのままに描かれるの、思いがけないことにくすりとさせられることがあったりね、また馴染みの人のその後がうかがえたりと、深く踏み込んでドラマチックに描写するみたいなことはないんですよ? でも、ああ、その後、こんな感じなのかって、ああこういう風になってるんだとか、そうやって見守るみたいな、うかがうみたいな気持ちになれるのがちょっと嬉しかったりしたのです。

この構図、ほぼ位置が変化しない見せ方、この種明かしも最後にありましたね、ああ、最後の最後にこの店のお客さんとして参加させてくれてたんだ。そうか、この一連のできごとを追っている間、自分はこのお店に、ひとり静かに一席しめて、ゆったりと過ぎる時間を楽しむことができたんだ。そして膝には一匹の猫。ええ、これは嬉しい贈りものですね。店員さんに声をかけられて、ただの定点カメラではありえない、自分もまたこの店のひとつの情景をかたちづくる一員だったんだって気づかされる、その意識の転換させられる瞬間が鮮やか。素敵な時間を過ごさせていただいたことに嬉しさ覚える、その余韻がたまらない心地よさでした。

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