2019年11月22日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2020年1月号

 『まんがタイムきららフォワード』2020年1月号、発売されました。表紙は『がっこうぐらし!』。すっかり廃墟然とした校舎に、手を繋ぎ明るい笑顔を見せてくれる学園生活部の4人ですよ。それはさながらカーテンコールのようで、ああ、物語は終わったんだ。果たして大団円か!? 不安はあれど、かつての不穏さ感じさせる開幕の情景からこの屈託ない笑顔がまぶしい状況にいたるまでのいろいろ。苦難も不安も乗り越えた今だからこその笑顔、なのでしょうね。ほっとさせてくれる、そんな表紙であります。

今月は新作ゲストが1本です。

『れっつえくすたしー♡』。おお、フォワードはこういう方面でいこうというのかな? サキュバス候補生の女の子ふたり。なんと、種族ではなく職業なの? 間違えて進路表のサキュバス欄にチェックいれてしまったせいで、向いてないふたりが一人前のサキュバスになるべく夜な夜な頑張る。というんだけど、向いてないというだけあって、ちっとも成功しやしない。体つきこそは豊満でも、どうにもがさつで色気のないめありと、いい感じに攻めるもその体つきがゆえにうまくいかないサヨコと、というけど、サヨコいいじゃんよ。ともあれ、どうにもうまくいかないふたりが、互いに支えあいながら、なんとか合格目指そうという流れ。最後の打開のチャンスがネットはSNSに打って出るっていうのが今風なのかも知れませんね。自信のなかったサヨコもこれでポジティブになれたみたいで、ふたりの今後やいかにって感じですが、やっぱこれ反則なのか。なかなか実らんわけですね。

『がっこうぐらし!』。完結しましたね。時は過ぎ3年後。少し成長した学園生活部の皆のその後が描かれるのですが、この顛末にほっとさせられました。美紀とリセの対話によってことの顛末と皆の近況が伝えられるのですが、ランダルの差し迫った状況。そこに割ってはいったゆきからの通信。最後の最後、ぎりぎりで踏み止まらせたきっかけが、あの時のあの通信だったというんですね。まだ生きている人がいるということ。そしてこのことが世界に希望を残させることに繋がったということ。けど、ここにいたるまでが本当にハードでしたよね。美紀は助かった。ゆきも健在。なら他のふたりは? ああ、りーさんは復興にあたってるんだ。そしてくるみは医者を目指しているというんだけど、そうか、よかった、一番あやうかったこの子がこうして助かっていること。それは、きっとぎりぎりで助かった人が他にもいるということなんじゃないか。これもまた希望ですよね。そしてゆき。廃墟になった学校に子供たちを集めて青空教室しているんだ。この情景見れば、あの一連の事件でどれだけの損害があったかわかろうというもの。そこからまた踏み出そうという、その一歩を、皆が皆、それぞれのやり方で実現させようとしているのですね。最後の、少し大人になったゆきの言葉。これは感動的でした。長くこの漫画を読んできてよかった、そう思える最終回でした。

『球詠』。いやもうピンチの連続でまいっちゃいますよ。見抜かれているヨミの強直球の癖。そしてエラーの恐怖をひきずっている守備。そして息吹の不調。ここで先制点がはいって、さあこれからどうこの1点を取り返すのか。そう思ったら、続いてヨミの強直球を見事に打ち返されて追加の2点が入るっていうんだから、大ピンチも大ピンチです。はたしてこれだけの点差、どう取り返していくのだろう。頼みの強直球も絶対ではないとはっきりした今、なにか打てる手は、あるいは状況を動かす策はあるんだろうか。まさかここで敗退はないだろう、そう思うからこそ、今後の展開から目が離せないですよね。しかし今回は、戦っている相手、柳大川越の面々にぐーっと接近して、いいやつらじゃないですか! 倒れた息吹を気遣って飲み物持ってきてくれたりね、そして一年生たちも、自分たちにできること、それがなにかと見事に示してみせた。ああ、なんだよこのドラマ。柳大川越のこと、応援したくなるじゃんか。でもどちらかが勝って、どちらかが敗退するんです。だからこそ、この両チームに情の入る見せ方、これが憎い! 当然新越谷には勝って欲しい。でも、こんなの見せられたら柳大川越負けろー! とは思えないじゃないですか。ああ、この板挟み。そうだよ、前もそうだったよ。もう、こいつはたまらんですよ。

『ちょっといっぱい!』。力感たっぷりではないですか。これまで語られてきた皐月店長の過去。そこから今のこはる屋に戻ってきてですよ、ああ、なごやかで和気あいあいとして、この雰囲気、この店のあり方! これ、今までこれがこはる屋の普通なんだな、個性なんだなって思ってきたわけですけれど、皐月の経験したきたこと、それを知ってしまった今となっては、ちょっと景色が違って感じられるのですよ。ああ、かつての皐月の思いに発して今にいたる流れの先にこの店はあるんだ。ひとつなにか動けば呼応して皆それぞれに自分の思うところを伝えあうその様子。また皆がそれぞれの居場所をここに見いだしているというところにも、この店のあたたかさは感じられて、そしてこれこそが皐月のみずきに見せたかったものだったのだろうなあ。ええ、みずきがこの店で過ごしたひととき、そこで感じたもの、思ったこと、それが伝わってくるようで大変に豊かでした。情感あふれる、いいエピソードでした。

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