『まんがタイムきらら』2019年6月号、一昨日の続きです。
『スロウスタート』。今回は光希編かと思いきや栄依子編でした。学校見学にやってきた光希に姉の制服着せまして、校内見てまわろう。そして姉栄依子はというと、生徒会に頼まれた封筒づめの仕事、ひとりで担うことになりました。ここからの栄依子の冒険、これがちょっとわくわくさせて、妹の中学の制服着て校内をうろうろしてみる。スリルとかいってますが、ちょっとわかる気がする。先生に見つかっても、中学生のふりしてやりすごしてみたりね、そうしたら榎並先生に見つかって、そこからのやりとり。ああ、栄依子の先生との出会い、そのリフレインだ。ふたりの会話の、核心に踏み込みそうでその周辺をくすぐりながら踏み込まない、その距離感。これは本当に見せるなって、もどかしささえ感じる、その感触がたまりません。ええ、この距離感にかもしだされる関係の機微。空白さえ意味を持って響く、そんな中、あの栄依子の表情。素晴しいものありましたよ。
『うらら迷路帖』。最終回直前回ですよ。迷路町の呪いを受けた友人たちとともに挑んだ迷路町中枢。そこで出会った母の姿は、呪いで真っ黒に染まっていて、しかし意識はきちんとあるのか。この悲しい母娘の再会。そして対峙するは迷路町の神。ここで千矢の選ぼうとした道、これに驚かされました。神の申し出るまま、その花嫁になることを了承する? 神の花嫁になるべく、一番占になろうとする? これじゃ母の辿った悲劇再来なのでは? けれど、この選択の先に、母の辿ったものとは違う、千矢でこそ掴みとれるような可能性があるのかも、そう思わせるものがあって、それこそを見たいと思わせる強さあったんですね。そこからはもう千矢と両親の世界。町より解放された母とともに、崩れる町中枢から逃げ出すその場面。もう長くない命を嘆くのではなく、再会を喜び、友人たちにメッセージを残し、そして娘の言葉をともに旅立っていく。これは悲しいけれど、その悲しさを越えさせる、そんな強い場面でした。
『夢見るルネサンス』。ひとり過去の世界から異国、現代日本にやってきたリーチャ。さぞや日中はさみしいのではないか。ひよりにいわれてレンが心配するんだけど、リーチャ、めちゃくちゃエンジョイしてますよね。肉屋のおばさんとの交流、これがいいんですよ。なんかすごくほっとして、嬉しくなる、そんな関係だと思います。ここからの展開も面白かったです。レンがリーチャのために料理をするっていうんだけど、料理が得意ってわけじゃないのか。というか、むしろ苦手なのか。ついつい気を散らしてみたりとあやしさ満載なんですが、なにがあれって、出来合いのピザ生地に具材のせて焼くだけというので失敗するっていうんだものなあ。でも、リーチャ、喜んでくれて、健気で素直ないい子ですよ。でも、16世紀イタリアにはまだピザがなかったっていうの、悲しいんだか面白いんだか、でしたよ。レン、リーチャが今の暮らしを楽しんでるってこと、ちゃんとわかってよかったですね。そして今後はリーチャが料理することに? なにがすごいって、インターネット使いこなしてるのか。レンにネットすすめるリーチャ、このくだり、最高でした。
『下を向いて歩こう』。シエルのゴールデンウィークですよ。硝子もさざれも連休中は忙しい。なので連休はふたりと遊べないんだけど、やけにシエルが素直で、いつもなら遊べないこと嘆いたりしそうなところなのに、なぜなのか? そうか、シエルの母も忙しいんだ。フォローしないといけないからシエルも暇がない。なるほど、なるほど。といったわけで、今回、シエルの身のまわり、いろいろ知ることができて、母が小説家だったり、締め切りに追われて大変だったり、そうか、修羅場か。シエル、掃除、選択、買い物から食事の用意まで、全部やってるんだね。この、なんかしっかりものに見えたシエル、印象変わってよかったですよ。連休中は浜も人でいっぱいで、ちょっとおりていけそうにはない。そこでシエルが今回見つけたもの、四ツ葉のクローバー。いつもとはちょっと違った連休中の情景。友達の知らない表情を知れたりね、そういうの、素敵でした。途中、硝子の思っていたこと、わかるべきことはきっと自然にわかっていく。それを体現するような、ゆっくりと、しみじみと進んでいったエピソードでした。
- 『まんがタイムきらら』第17巻第6号(2019年6月号)
0 件のコメント:
コメントを投稿