2016年10月4日火曜日

サクランボッチ

 『サクランボッチ』、表紙がめちゃくちゃ奇麗でびっくりしました。ヒロイン、木之花桜。ちょっとした天才少女ですよね。まだ中学生なんですけど、しっかりしなければいけないと、勉強に打ち込んで打ち込んで、どんどん先へ先へと進めていって、表紙見ればフランス語なんかも独習してる模様。そんな彼女、あんまりに勉強に打ち込みすぎたためか、ちょっと人付き合いの基本なんかが欠落してしまったようで、友達がいない……。そんな不器用な女の子たちが、なぜかひとつところに集まることとなって、そして深めていく友情。友情? ええ、友達ってどんなんだっけ。確認しながら少しずつ歩みを進めていく、そんな様が微笑ましくもいじらしい漫画であります。

桜も、人付き合いを避けてるとかじゃないんです。むしろ、自分なりになんとかしようと頑張ってはいる。話しかけてくれた友達には笑顔で受け答えして、と基本はちゃんとしてるんだけど、実践が伴わない。ああ、笑顔が笑顔になっていない。まったくの無表情にしか見えず、無理に笑えばむしろ怖くなってしまう。そんな彼女が、ちょっとした出会いをきっかけに変わっていくんですね。用事を頼まれて訪れた資料室。そこにいた先輩、文芸部の先輩に強引に入部を誘われて、最初はきっちりしっかり断る桜なんだけれど、もう一人ぼっちは寂しいんだよー、その言葉にほだされてしまった。ああ、先輩もそうなのか。ああ桜もそうなのか。きっと相通ずるものがあったのだろうなあ。そして、先輩からもらった髪留め、いつもと違う髪形が彼女にもたらしたもの。少し変化した、クラスでの人間関係。でも、このちょっとが桜には大きかったのだろうなあ。

などなど、こんな風に不器用で、友達を作るとか、仲良くなるとか、素直になるとか、そうしたことが得意でない女の子たち。桜に百合に小雪。期せずして花陽先輩のもと、文芸部に集まることとなったこの子たちが、それぞれに抱えている問題を相互に交流していくことで溶かしていく。ほんと、ほんと、ゆっくりで、ちょっとずつで、もどかしいといえばほんとそのとおりなんですよ。普通に挨拶すればいいだけのことじゃん! でも、ただそれだけのことができない、難しいとわかってるものにとっては、他人事ではない、まるで自分のことのように受けとめて、共感できる瞬間もあるのではないかな。もちろん、これは漫画だから誇張はあるでしょう。お嬢すぎて皆から高嶺の花扱いされてしまってる百合とか、小雪の思わずおかしな口調でしゃべってしまうとかも、さすがにそうそうありえない。でも、それでも、なにか近しく感じられるところあれば、きっと楽しく読める漫画だと思う。あるいは、彼女らのだんだんに距離を縮めていく不器用さすらを愛おしく思い、頑張れって応援するみたいに、見守るみたいに読める、そんな漫画であると思うのですね。

さて、私の気にいってるエピソードはキャンパスコンビニなんですけど、あれはいいよ。ゆっくりね、じっくりね、桜、花陽先輩、百合、小雪を描いてきて、そのひととなりが浸透したかなってところで、見事なコントを投入してくる。もう雑誌掲載の時に、うわーって、これはいいよ! って、すっかり魅了されてしまったのでした。ええ、いいキャラクターが揃ってる。そう思わされた小エピソード。こういうの好きなんですよね。ええ、じわじわきますよ。

  • 悠里なゆた『サクランボッチ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2016年。
  • 以下続刊

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