2024年3月18日月曜日

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~

 楽しみに読んでいる漫画です。知るきっかけとなったのはネットの広告でした。SNSで誹謗中傷をうける主婦が弁護士に相談、法的措置にて逆襲に出るという内容で、もう導入から身近に起こりそうな、加担まではせずとも日頃目にしていそうなできごとからはじまって、中傷を受ける当事者の実感から、法的措置に出ても残る徒労感まで、重さを持ってのしかかってくるようなリアリティが素晴しい。主人公である弁護士、保田のキャラクター、言葉も態度も軽くて、相談者の事情をしょせん他人事だというような一見人格に欠陥抱えてそうな人なんだけど、やるとなったらきっちりやる。この主人公があるからこそ、あまりに重くなりすぎず、かといって不愉快になることもなく、このシリアスなテーマの漫画を楽しく読むことができるのだと思います。

しかし本当に面白い。誹謗中傷やデマ、なりすましなど、ネットで日常目にしやすいこと、いうなればありふれていることを題材にして、それをめぐる法的バトル、というとちょっと違う感じもするのだけど、双方の当事者をまじえたもろもろが描かれて引き込むんです。

法的バトルとはちょっと違うというのは、別に特別なテクニックを駆使して勝ち目のない裁判で勝訴するとか、そういう漫画ではないからです。むしろだいたいはすっきり終わらない。民事に訴えた方も訴えられた方もダメージが残り、もやもやした気持ちが残る。だいたい決着は和解だし、華々しく裁判で戦うということもなければ、新証拠でウソをあばいたり、そして裁判官が重々しく判決を述べる、なんてこともなかったりして、法廷ものとしては地味といわざるを得ない。

それでもこんなに面白いと感じるのは、この漫画が持つリアリティのためなのだと思います。当事者になりうるリアリティとでもいいましょうか、ある日突然荒らされる、デマを撒かれる、誹謗中傷される。ネット上のもめ事に巻き込まれるリスクというのは、間違いなくこのネットが一般化した時代、以前よりも格段にあがっていて、そしてこの漫画に登場する被害者、いや弁護士保田に相談する当事者というべきでしょう、彼ら彼女らにしてもその日その時までは普通の暮らしを送っていた人で、なのに突然ふりかかってきた火の粉に、なぜ自分が、どうしてこんな目に、と慌て混乱しいきどおる。

そうした態度に、他人事ながら他人事ならぬ共感を得てしまうからなのだと思います。

しかしこの漫画、おそろしい。というのも、自分は誹謗中傷とか荒らしとかやらないし、と思っていても決して無関係ではいられないという可能性も提示されるから。今の時代、身内が、妻が、子供が、親が、なんてことやっぱりありえるわけですよ!

いやほんと、ある程度の年齢がいったお子さんをお持ちの親御さんとか、とりあえず買って読んでみて、子供が読みたくなるような場所にさりげなく転がしておくとかしておいた方がいいかも知れませんよ。

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