『まんがタイムきらら』2023年9月号、発売されました。表紙は『あっちこっち』。夏らしく水遊び? ホースを手に水を浴びせてくるつみきさん。こちらに向かって、飛び上がってくるかのようなその躍動感。きっとこちらには伊御さんがいるのでしょう! と思ったけど、そのわりにつみきの表情がニュートラル。けれど伊御ともなれば、その表情の向こうに隠しきれぬ気持ちを読み取ったりするのかも知れませんね。
今月は新規ゲストが3本です。
『恋と硝子とキューピッド』
先輩、桜佳乃に憧れるも声をかけることができない葵唯真。今日もひとり、屋上にて昼食をとっていたら、その眼前に現れた謎の存在、天使の天風ホノリ。恋を成就させるキューピッドを自称するホノリには、ユマの思いも御見通し。この不器用な恋を成就させねばと、ユマの前に降臨したというのですね。
しかしこの天使、やることが直球ですごくいい。ユマへのアプローチも直球。さらに、ユマと佳乃を近づけるそのやり口もまた直球。真正面からお近づきになりたいって話しかけて、ユマにしてダイレクトアタックかよと怖れられるほど。
けど、この突撃が正解だったんですね。皆から憧れられる硝子のプリンセス、お嬢様の中のお嬢様、桜佳乃。けれど本当は、ただ本好きで図書室にこもっていたら、皆との距離ができてしまった。本当はもっとお話もしたいというその思いを、ホノリの直接攻撃が開いてくれたというんですね。
ユマはユマで、海咲の王子くんと呼ばれ憧れられる存在。けれどその向こうに隠された思いがゆえに佳乃に魅かれ、そして知りあうことでその思いから解き放たれたというのですね。
かくして新たに知る佳乃の人知れぬ側面。これからもさらに意外な佳乃の魅力を知っていくことになりそうですね。
『魔法少女不思議のありすちゃん』
アリスモチーフの読み切りです。宙に浮いた大門。羽があってフワフワ浮いてるんですが、扉を開いて通ってみればそこは不思議な世界。林立する巨大きのこの森を抜けきらぬうちに、眠気にいざなわれて眠ろうとしたありすの前に現れたのが、青虫に似た姿の妖精。青虫いわく、僕は追われている。追っているものは、他でもないウサギだというのですね。
アリスの物語でウサギといえば、時計を持った白ウサギじゃありませんか。ところがここに現れたウサギは、なにやら悪辣な面相、見るからにヤバそうな悪役なのでありました。妖精の力を自らのものとして、魔力を得ようとしている。そんなウサギに、ありすと青虫妖精が立ち向かおうという話なのですね。
お話の登場人物をシンプルに3人に絞ったことで、読みやすく、わかりやすくなったのはとてもよかったと思います。妖精の力を得て変身。魔法が使えるようになったありすとウサギの魔法バトルも、がっかり魔法と思わせておいて、工夫でウサギを圧倒する。そうした、物語のアップダウンが読みやすさに面白さを乗せて、これもまたよかったと感じました。
そして最後の落ちのニューヨーク。これにはやられましたよ。いや、なにがいいって、見知らぬ土地に放り出されたありすがワクワクしてるところ! いやもう、このメンタリティ。最高だと思います。
『死ねない少女は天使の夢を見る』
母を亡くしてしまった。生きる目的も失って、自ら死を選んだ少女、灰村志瑠。しかし首を吊っても死ねなかった。包丁を頭に刺しても死ねなかった。理由はまるでわからないけれど、不死身になってしまった志瑠。雨の中、街にさまよい出たところ、金髪の少女に傘を差し延べられた。
この少女、どうも不運な身の上なのでしょうか。横断歩道で転んだところに走り込んでくるトラック。身を呈して少女を救う志瑠ですが、助けたいというよりも、むしろ自分が死にたかった。けれどやっぱり死ぬことはできず、絶望にかられるまま気を失ってしまったのでした。
目覚めたら、そこは少女の部屋。有数の富豪、白金森のお嬢様。白金森伊織に拾われて、志瑠はこの屋敷にて働くことになる。伊織を危険から守るため。そしてその対価は、死ねる方法を見つけてくれること?
なんとも不思議な縁と出会い。志瑠の不死身の秘密とはいかなるものか。そして伊織にもなにかしらの秘密がありそうで、この正反対なふたりの関係。どのように深まっていくのだろうと思わせてくれる、そんな導入だったと思います。
- 『まんがタイムきらら』第21巻第9号(2022年9月号)
0 件のコメント:
コメントを投稿