2018年7月19日木曜日

『まんがタイムきららMAX』2018年9月号

 『まんがタイムきららMAX』2018年9月号、発売されました。表紙は『きんいろモザイク』、アリスがどーんとソロで登場です。白のドレスを着て、手にはバラのブーケ。ちょこんと座ってこちらに微笑みかけるその様子は、香奈ならずとも妖精じみたビジョンを見てしまいそうになるくらいです。しかし、背景を真っ白に、またアリス自体もほのかにあわくそっと乗せられた色の静けさは、その白基調にそって溶け込むようであります。バラのブーケもパステル調に強く主張しないものの、そこから延びるリボンだけがはっきりとした輪郭を持って、けれど決して調和を乱すことなく、静かに落ち着く白の世界にゆるやかな動きを与えて優雅です。

『社畜さんと家出少女』。なんともいえない侘しさ、ふいに心に吹き込むやるせなさなんてのを感じさせる漫画ですね。嫌いじゃない。嫌いじゃないですよ。残業続きの仕事には楽しみや面白みなんてものはまるでなく、ただ生きるため、暮らしを維持するために、あくせく働いての帰り道。疲れてすさんだ心を癒すのは、安く酔えるアルコール飲料。うん、ほんと、わびしい……。でも主人公にはまた酒とは違う癒しがあって、それは同居している女子高生。でむかえてくれて、いたわってくれて、そうしたいろいろが、やさぐれた社会人の心に沁みる。タイトルからすれば、その女子高生、ユキが家出少女なのかな? 同居するようになってから2週間。だんだんとふたりの暮らしに馴染んできた頃? とりあえずぱっと見た感じ、なにか訳有りみたいな感じではないのかな? と思わせたところで、最後のあの夜の場面。グサッときましたね。見た目には、普通に、平気に、明るくしていても、その向こうにはなにがあるかなんてわからない。傷ついた心を抱えていたり、やるせない気持ちに打ち拉がれていたりする、そんな自分がふいに顔を出す瞬間があるんだ。そんなこと思わせてくれて、ええ、この共感、これはなかなかにくるのではないか。ふっと一息ついたその一瞬に踏み込んできて跡を残していった — 、そうした感触ありました。

『16時のお忍び窓』。これ、なんだろう。面白いな。東京からやってきた館花ひめ。新しい環境に不安いっぱいだっていうんですが、そんな彼女のこの街での楽しみというのが変わってる。16時、夕方、自室の窓の外、髪をふんわり、高くふたつにゆわえた女の子が通るというのですね。ここは忍者の里。というので、その子のこと忍者かと疑ってみたりね、けど服装は普通に制服ですよね。その子が隠れ身やってみせたり、それから分身? いや、双子とかじゃないのん? いや、三つ子!? ひめの育てた鉢植えを見て、綺麗だっていってくれたりするの、なかなか近くに寄ってお話ししてみたいにはいかない不思議な関係だけど、そっとかすかなつながり感じさせるみたいなコミュニケーションが可愛いですね。ひめが、16時にアラームセットするくらい、この子と出会うこと楽しみにしてるのがいい。そしてその忍者の子、本当に忍の末裔か! 四ツ蛇の跡継ぎ、こゝろ。不思議なテイスト。空蝉の術で残していった切り株がぬいぐるみとかね、なんともいえないニュアンス、悪くなさそうな予感です。

『徒然ゆにおん』。コミュニケーションとるのが苦手なのかな? 入学してからの数日。クラス内に次々生まれるグループのどこにも入れず、ひとりぼっちでいる鈴木スズ。なんとかしないと、そう思っても動けずにいる彼女のもとにやってきたのが、シンシアという女の子。一緒に学校の中を見てまわらないかと誘ってくれて、いや、しかし、なぜ? やたらとアクティブで、やたらと辛辣なシンシア。途中忍び込んだ教室で、ふたりの先輩、松風雅奈と上野まひろと出会って、そうか、スズは同年代が苦手なタイプ? 先輩相手だと普通にしゃべれちゃったりするタイプ? わかるー。終盤に、なぜシンシアがスズに声をかけてくれたのか、それが一気に明らかになるくだり、ああ、自分のこと忘れてるスズのこと、シンシアがちょっと怒ってる? あの表情、いいなあ! そしてシンシアのこの気持ち、かつてキラキラしてたスズが今はすっかりしょんぼりしてる、そのことにも思うところあったのかも知れませんね。かつてスズに助けられた自分が今度はスズを助けようという、そのシンシアがすっきりとしてキレイに見えてよかったですよ。そうそう、この漫画、全然そうとはいってませんけど、なんだか異世界ものっぽいですよね。松風先輩とか、ツノありますよ?

きんいろモザイク』。なんだこれ、めちゃくちゃ面白い。というか、面白くてめちゃくちゃといった方がいいのか? 金髪少女と暮らす忍を心の底からうらやむ穂乃花が今回のメインなんですけど、金髪にモテモテの忍のこと、まるで漫画の主人公とかいいだしたり、ああ、ギリギリだ! 結構ギリギリだ! カレンとの同居、ルームシェアを想像して過呼吸ぎみになってみたり、泊まりにいきたいというカレンの言葉を、勝手に同居希望とねじまげて理解したりと、こっちもギリギリだ! 登場当初、穂乃花は常識サイドの人だと思ってたのだけど、とんだ誤解だった! 穂乃花に巻き込まれる香奈もおかしかった。穂乃花の部屋にはカレンのポスターが貼られてたとかギリギリの嘘ついてみせたりして、ほんと、なんだろうなあ今回は、実に油断ならない笑いがそこかしこに仕込まれていたように思います。しかし穂乃花、カレンと接近しすぎると身がもたないみたいにいわれてますけど、仮に一緒に暮らすとなれば、いずれ慣れたりはしないのか? いや、慣れる前に命の危険があるのか……。今回はアンリミテッドな穂乃花が大活躍。なぜだか印象は大暴れみたいになっています。

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