2017年8月14日月曜日

広がる地図とホウキ星

 『広がる地図とホウキ星』、ゲスト掲載時、いや第1話時点からすでに魅了されていた漫画でありますよ。魔法使いの学校に通うことになったリン。この子が田舎の実家を出て、首都にある魔法学校に向かうその道すがらに出会う事柄、そして人々、それがもう本当に魅力的で、もうわくわくの連続。テンポよく展開していく物語に、愛らしいキャラクター、そして魔法のダイナミズム! 小さなできごと、身近なトラブルに惜しむことなく使われる魔法からは、それがこの世界において特別でありながらもポピュラーなものであることをよく物語り、また魔法が導く思いがけない出来事の推移は、この世界の広がりをこれでもかと描き出して、すごいよ、この描写力! ささやかな出来事さえもが世界をありありと色付けていく。もう最高だと思います。

掲載誌は『まんがタイムきららミラク』。もともとのページの多さもありますが、加えて持ち前のテンポのよさがあるものですから、毎月毎月の掲載に語られるエピソードの充実していることったらありません。比較的大きめの目標がしっかりと描かれる。そこに加えて、本筋にまつわる小さな出来事がこうもたくさん描けるものなのかと感心するほどに盛り込まれるのだからすごい。それら小エピソードはキャラクターを、世界を豊かに語ったかと思えば、時に目にも楽しくしあわせな情景を描き出して、そうしたたびにリンたちの暮らす世界が愛おしく感じられようもの。うわあ、素敵な世界であるなあ。面白くって、わくわくさせられる。身近な出来事、出会いからも、こんなにダイナミックな展開がある。ああ、世界が開けていく。その喜びときたら格別です。

面白いのは、主要人物であるリン、ゼルダ、ヴェリ、3人の得意としている魔法とその代償でしょう。ゼルダの魔法は花火魔法だったり燃料切れた機械を動かす魔法だったりと、それはそれは楽しそうだったり、もう端的に生活の役にたちそうだったり。で、魔法使うとお腹がすくのね。いろんなところで起こるトラブルを魔法で解決していくリン。とたんに鳴りだすお腹。それをね、助けてもらった人たちが食べ物をわけてくれたりするという、このほのぼのとした助け合い。それがまた楽しいのですけれど、得意の魔法は人によって違ってて、代償もまた違ってて、その違いが生み出す面白さもまた魅力です。ええ、彼女らの魔法には工夫がある。使い方の工夫がある。以前使ったこの魔法、今回はこんな風に使って役立てる。ひとつの系統から派生していく魔法の可能性。組み合わせ次第でこんな風にもなっちゃう。そのダイナミズム! ああ、すごく魅力的。もう心とらわれてしまって、今度はどんなものを見せてくれるの!? 毎回が楽しみで楽しみでならないというのですね。

そしてこのダイナミズムは、魔法と魔法の組み合わせだけではないのだと思っています。それは人と人との出会い。人と機会との出会い。そこにもあって、リンがゼルダと出会って新たな世界が開けたように、リンとゼルダがヴェリと出会って、そこにまた新たな世界が見出されていくように、ひとつひとつの出会い、きっかけが、この漫画をどんどん豊かにしていく。それは芽吹いた樹々が大きく大きく育ち、ついには森となっていくかのよう。本当に素晴しい。生き生きと伸びゆくリンたちと彼女らの出会う世界が、まぶしくってしかたのない、素敵な漫画でありますよ。

0 件のコメント: