2016年1月4日月曜日

なり×ゆきリビング

 『なり×ゆきリビング』、これ、最高だと思う。いや、もっと違う書き出しを考えてたんですよ。今日から仕事始め、だからお仕事繋がり、社会人の女子ふたりの生活描いて面白い四コマ漫画の紹介がどうたらこうたら。でもね、読んだら、もうこれしかないわ。素晴しいよ、『なり×ゆきリビング』! はじめて雑誌で読んだ時も思ったんだよ。これ、すごいな! 女子ふたり、明るく元気でお調子者でおっちょこちょいで粗忽者の篠峰奏莉と、クールできっちりエレガンス感じさせる佐藤雪。ふたりの際立って対照的なその個性と、その噛み合って、不思議と調和する様子、素晴しい。最高だと思う、とか思ってたら連載になって、単行本も出て、いやあ、もうね、読むがいいよ! 読まないと損だと思う。それくらい素晴しい。いや、もう、なんだろう、いろいろふっとんじゃった。

女子ふたりの同居ものであります。酒の席、勢いで決まった同居。いや、それがもう、本当に勢いとしかいいようがなくて、本気なのか冗談なのか、佐藤さんちに住まわせてよー、篠峰がいってみたら通ってしまった。翌朝後悔。反省してるふたりの様子おかしくて、そうか、まだこの段階では友達といえるような関係じゃなかったんだなあ。けれどそんなところから同居がはじまって、ちょっとずつ相手との距離をはかりながら、これまで知らなかった一面を知ったり、意外と近しい、そう思えるところ発見していったりして、ああ、その仲良くなっていく感触が素晴しいよ。

ふたりともに、相手と違う自分を自覚していて、だからこそ大きくは踏み込まないでいる。ずけずけとね、いったりはしないんだよ。けれど、それは距離を保つとか、他人行儀とか、そういうのとは全然違って、ウェットすぎない、自分の重さを全部相手にかけたりしない、でも、心地良い距離感でもって、ドライすぎず、互いの温度を感じあえる、そんな具合に、もたれあって、くつろいで、ああ、単行本表紙がそんな感じじゃん。女子ふたりの、気のおけない家飲み風景。肩なんか軽く触れ合ったりしちゃうような距離感。けれど、過剰にもたれかかったりはしない、その、お互いを尊重してね、ちょっと気を使う風でもあってね、でも近しいって、こういうの、理想的といっていい関係なのではないかって思うんです。

ふたりのね、打ち解けてからの生活がとてもよくって、クールに見える佐藤さん、この人の可愛いところが垣間見えるその瞬間、ぐっときますよね。飲むと王子様レベルが上がるとかさ、ほんと、可愛くてかっこいい、そんな佐藤さんはすごく魅力的。かと思えば、おっちょこちょいで、多少騒がしい篠峰さん、こちらもそのおおらかな人となりに知らず引き込まれて、気付けばなんだかくつろいじゃってる。人の目を、心をひきつけて捕えちゃう、そんな魅力あるのが篠峰なんですね。

ええ、ふたりの魅力がすごいんです。絵になるふたりだと思う。性格も雰囲気もタイプも違うふたり。ところが、ふたり揃うとすごくよくマッチして、なんだろう、この色気。ねえ、普通に暮らして、お酒飲んだり食事したり、食事の用意とかもかな、どんなだっていいんだけど、このふたりを画面に配置して、魅力的に描くことにかけては、かなりの力量感じさせる、そういうところありまして、ほんと、かっこよかったり、可愛かったり、色っぽかったり、しかもその魅力もろもろ、すごく自然体と感じさせてくれる。よそゆきの格好してたとしても、彼女らの魅力には、彼女らの人柄、その本質に発するようなところがあって、それは連載を重ねるごとに際立って、ふたりの関係が深まればなおさら! いやあ、この漫画、よくよく人を描いている、そう思わせてくれるところあるのです。

人を描いているといえば、職場の情景もいいですよね。上司ふたりに同僚の個性、これもよくよく表れて、なんだろう、憎めないですよね。班内のいじめっこ? 竹内女史がいい感じ。上司にだって容赦ないぜ! 隣人の木村さんもいい感じに人柄見えて、お隣の猫もチャーミング。いやあ、ふたりの周辺、その魅力にもずいぶんやられておりますよ。

ああ、そうそう。描き下ろしのですね「ゆきだけリビング」、「しのみねリビング」、これもよかった。最後にね、ふたりのベースとでもいおうかな、なんだろう、やっぱり人柄なんだろう。見えましてね、すっごくチャーミングでした。もう、完全にやられてしまってます。

  • 乃花タツ『なり×ゆきリビング』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2016年。
  • 以下続刊

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