『まんがタイムきららフォワード』2023年11月号、発売されました。表紙は『球詠』。ヨミと詩織、ふたりが作戦会議中? 内緒ばなしするように顔を近づけて言葉を交わしているのですが、ヨミの明るい表情、会話でもリードするかのような雰囲気は、その性格のものか、あるいは先輩という関係性あってのものか。対して詩織の、ちょっとおずおずとした感じは、遠慮かあるいはやはり性格のものなのか。わからぬながらも、こうして交流しながらできあがっていくバッテリーの関係というものを思わせてくれる表紙であります。
今月は新連載が1本、新規ゲストが3本です。
『映画と夏と強引な先輩』
映画サークルに所属する主人公。異性の先輩との距離感に悩んでいる? いや、翻弄されているというんですね。
友達のいない主人公。またサークルにも人が集まらず、先輩とふたり微妙な映画を鑑賞するのが常? マイナーそうなサメ映画を観ようとした先輩。ところがそいつが見つからず、それなら前回ウチで見たじゃないですか、というので、ふたり主人公の家にいくというんですね。
先輩との距離の近さにどうしてもいろいろ意識してしまう主人公。そこに泊まっていってもいいかと意味深な申し出があって、これ、ウチのクーラーが壊れたからという説明をそのまま受け取っていいのか。あるいはそれは方便で、実は……、みたいな話であるのか。
このあたりの先輩の思惑が、これと明確にされないことで、主人公側の煩悶する領域が広がっていたと思いました。これがたとえばそういうジャンルの漫画なら、そういう展開になって、といいたいところですが、残念ながらフォワードはそういうジャンルじゃないので、そういう展開にはならなかった。とはいえ、先輩の意図はどうだったんだろうか。好意のベクトルは主人公から先輩にのみ向いているのだろうか、などなど、そうした含みのある展開になっていたと思いました。
『いなりの恩返し』
キツネを助けたら、人の姿になってお弁当を届けてくれるようになりました。キツネ、いやさキツネ娘の秋吉いなりの恩返し。のっけからお重にたくさんのいなり寿司。その量にひるまず、がんがん食べる黒谷空子も頼もしい。
そんなふたりの交流の様子描かれたのですが、ついつい尻尾を、耳を出してしまういなりを都度都度助けて守ってサポートしてくれる空子がやっぱり頼もしい。その空子のいなりに向ける感情、ないしは共感が、ふたりの交流、そしてその先の空子のモノローグによって明らかになるところが大変よかったです。
人の世界への憧れと、そこでの暮らしを楽しむ気持ち。それがただいなりのものだけではない、ふたりともに共有しているものだと知ることのできたのは、ひとえに読者の特権であったと思いました。こうしたことにいつかいなりは気づくのか、そうした先の広がりもまた感じさせてくれた。これもまたよかったです。
『逆異世界転移』
漫画家志望の主人公。ファンタジー路線で描いているというのですが、リアリティがないからと連載会議を勝ち抜けない。ファンタジーだからそもそもリアルじゃないと怒っていますが、リアリティというのは、それありそう! って思わせるもっともらしさ感よ?
というのは置いておいても、どうにもこうにも迷走のとまらない主人公です。魔法少女や魔女のコスプレをしてみたり、さらには謎の同人誌に載っていた召喚呪文を試してみたり。と、そうしたらなんとまあ、異世界から謎の存在がやってきたというんですね。
その正体は、ぐーたらな生活を求める妖精? シロヌ。見た目可愛いシロヌに、あれやこれやと衣装を着せたり魔法を使わせたり、そしてその欲望のままに突き進んでみたら、描いてる漫画のジャンルが違ってしまった!?
どうにもうまくいかない主人公ですが、それでもシロヌとの生活は楽しいものになりそうです。漫画家として大成するかは別として、シロヌとどんな生活を送ることになるのか、そこに新たな経験や楽しさ、面白さなんてものが芽生える可能性を感じさせるラストでした。
『オールドヨコハマラジオアワー』
楽しみに聞いていたラジオ番組が終わってしまった。あまりのショックに打ち拉がれる主人公。ところがラジオ番組終了を回避できる可能性を手にしてしまい、って、これ、タイムリープものなのか! 想像もしてない展開きちゃったな!
番組終了の理由。リアルイベントのグッズ売り上げが奮わず、予算が枯渇してしまった。ラジオのパーソナリティがいってた理由を真に受けて、過去の世界でグッズ買いまくってみたのに、終了の未来は回避できなかった!
いや、これ、まいったな。自分もこれで回避できるんかなと思ったもの。表向きにできる理由と本当の理由は違うってやつかあ。してやられたなあ! というので、他の理由を探して見つけて、トライして、それでうまくいくかと思ったら、鍵となるオンゲーがサ終!
いやいや、これ、今度はオンラインゲームの存続のために動くことになるの? どうなの?
つっこみどころも含めて楽しめた漫画でした。今後も番組終了回避のために動いては徒労に終わる、その繰り返しになりそうで、いずれ主人公は魔女になってしまうのでは? なんて思ったりもした新連載でした。
- 『まんがタイムきららフォワード』第17巻第11号(2023年11月号)
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