2023年9月5日火曜日

『まんがタウン』2023年10月号

 『まんがタウン』2023年10月号、発売されました。表紙は『新婚のいろはさん』。はじめとふたり、美術館に臨むいろはさんであります。ふたりともに、秋から冬にかけての装い。手にかけたコートに、これからの季節を先取りするかのようなよさが感じられますね。暑くざわめかしい夏の過ぎさって、静かに落ち着きとともにアートに向きあえる、そんな季節の風あいがこの表紙にも感ぜられて、はやくそんな時期のきてほしいと望む気持ちの強くなりました。

今月は新規ゲストが1本です。

『お狐コンコン・リサーチ中』

学校の先輩に焦がれる女学生。思いをとげんと後を追ってみれば、慕う相手、その正体は人にバケた狐であった。けどここですんなり終わらず、なんとこの女学生の正体もキツネだったという!

キツネの化けた人の姿に恋した女子キツネと、人の姿には興味は持てず元のキツネの姿にトキメキ覚える男子キツネ。この思いの通じそうで通じないふたりの不器用な恋愛模様が繰り広げられることとなりそうですよ。

しかしふたりともというか、二匹ともというべきか、人間をリサーチするために潜入しているだけあって、人の常識というのに大きく欠けているんですね。だものだから、勝負下着というものをうかうか見せて恥じるところがなかったり、胸をさわらせてみて同じくなんら恥じる様子もなかったりと、人間離れといったらいいのか浮世離れといってもいいのか、そうした様に翻弄される人間たちとの常識ギャップを面白がってみたり、かとおもったらそこにふいにまじってくるほのぼのとした恋愛模様に楽しみを感じてみたり、そうしたところにぐっと魅力を乗せてきている漫画であります。

『押しかけギャルの中村さん』

秋山と中村、学校あがりにふたり一緒にスーパーマーケットでお買い物でありますよ。学内で家事能力高そうな秋山の評価高まることに嫉妬を隠さぬ中村さん。もうね、そういうの素直にいっちゃおう! じゃないと秋山氏は一生気づかないよ?

今回の買い物情景。ふたり一緒に暮らしてそれなりに長くなってきたからこそのやりとりになってたのがね、見ていてなぜこれでつきあってないのだろうと不思議になるくらい。むしろつきあうとか恋愛とか、そういうのに踏み込まないようにしながら同居しているからこその落ちつきみたいなものまで感じとれて、このふたりの関係性は本当に独特の境地だなあと思わされたのでした。

しかし、こうして年頃の男女が一緒に暮らして、しかもそれなりに相手に向ける感情ってのもあって、なのに目立った進展を見せないというのも奇特な話で、いやほんと、自分なんかだとこんな風に一緒に暮らしてる相手にですよ、たい焼きはまた別ですって爽やか笑顔でほほ笑まれたりしたら秒で好きって口走っちゃってますよ!

でもほんと、こうしてふたりで料理をしたり、それから意図せず将来の暮らしについて語りあっちゃったりしましてね、この暮らしがふたりにとってどれだけ当たり前のものになってしまっているか、そしてこれからも同じく続くもんだと了解しあっているかっていうのが露になって大変。両者ともに後で気づいて大変なことになってましたね!

中村さんが秋山宅に押しかけるかたちで転がり込んできたの、その動機やなんやらはまだ明確には語られていないけれど、ふたりにとっての恋愛というのは、一気にばっと燃え上がるアフェアではなく、静かに灯る、そんな穏かな暖かみあるものになったりするのかも知れませんね。

『ホントはダシたい山車さん』

山車家に連行される佐藤君。タクシー車内での山車さんの意味深発言に心ぐらぐら揺らしながらも、無事に到着、お母様にもつつがなく挨拶できた佐藤の有能さ。むしろお母様の乗り気のほどがすごくて、娘にがんがんハッパをかけるわ、あらゆる局面でふたりの関係の深まる可能性に浮き立ってるわ。明るく元気でにぎやか、楽しいお母様だと思わされましたよ。

今回は干ししいたけの出汁なのですが、水ではなく湯で戻すというの、これ簡易戻しなのかと思ったら、むしろこの温度が重要なんですね? 加熱することで出てくるグアニル酸。ぬるいお湯だと出ない。煮立つほどに火を入れると壊れる。ということは、自分はあまりこれを味わったことがないかも知れないな!?

今回の解説を読んでみて、この60℃から80℃で戻すというのを試してみたいと思ってしまいましたよ。佐藤の味わったしいたけ出汁のおいしさ。どれほどのものだったのだろうと、興味を引かれる、そんな内容でした。

そして同じく、佐藤と山車さんの関係も、そして亡くなったお父様とのお話も、心に触れて興味引かれる、そんなエピソードだったと思います。

『あの世で猫になる』

タマ、成仏したくないんですね。朝倉さんが最近ハマっているアロマにお寺の匂いを感じて、ベランダに避難しているタマ。その様子がまた朝倉さんを心配させているというんですが、それで大島がうまいこと朝倉さんに話してくれるというんですから、なんだかんだで頼るのは大家ですなあ。

この大島との会話でタマがふともらした本音。やっと誰かと一緒に住めるようになったという、おそらくは本人も覚えていない過去にまつわる言葉が意味深で、またその言葉に対する大島の反応からするに、大島はタマの過去を知っている? なにかしら少しずつでも核心に迫ろうとしている気配を感じるのでありました。

さて、ちょっとシリアス風味はこのへんで、ラストはやっぱり面白おかしく終わってくれるのがこの漫画。朝倉さんがタマのためにと買ってきたまたたび。これで失敗したタマと、そして一緒に酔おうとお酒を飲んでふたりいい気持ちになってみたりと、この関係ですよ!

とてもいい。互いに相手に寄り添おうとする、その気持ちがとてもよいのですね。

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