『まんがタイムきらら』2025年7月号、発売されました。表紙は『しあわせ鳥見んぐ』。鳥見をしているすずと翼。大きなからだ、長い首で、ぐるりとふたりを囲むようにして、魚をキャッチしているのはダイサギ。大きなサギだからダイサギ! すごく印象的な目。顔の色もすごく鮮やか。こんな鳥もいるのですね。ふたりを驚かせたサギの狩り。それはどれほどにダイナミックなのでしょうね。
今月は新規ゲストが1本です。
『初凪ヒメリウム』
祖母を亡くした南条陽姫。ただでさえ内気で自己紹介とか苦手なこの子、祖母の葬儀やいろいろで初登校が一週間遅れになったことで、絶望的な高校生活をスタートさせました。
疲れはてて帰宅したひめ。祖母が残した空の水槽を見つけて、どうしても整理することができなかった。水槽をなんとかしたいと思ったひめは、たまたま見かけたアクアリウムの店に入って、新しい世界を知ることに。オーナーの湊本に、魚、そしてアクアリウムについて教えてもらって、自分がやろうと思っていることもまたひとつのアクアリウムだったと知るのですね。
水槽は自由。水槽の中に魚たちや水草の居場所を作る。オーナーの喜びを知ったひめは、生前の祖母がかけてくれた言葉を思い出し、そして祖母の水槽の中に、自由で安らぎを得られる居場所を作りたい。気持ちを一新し、前へと進みはじめるのです。
ひめが作ろうというアクアリウムは、魚や水草の居場所にして、ひめの場所ともなるのでしょうか。そしてその自由は、いずれ水槽を飛び出し、ひめの生き、暮らすこの世界を包み込むほどの広がりを見せるのでしょうか。その躍進をこそ見てみたいと思わされました。
『しあわせ鳥見んぐ』
芸祭が終わり、片づけも終了。じゃあ打ち上げに繰り出すか! とすずがいったタイミングから、翼、鳥見を敢行ですよ。まだ日は高い。大学の裏には立派な林。鳥を見ずには帰れない。あれだけきぐるみ着て呼び込みしてたのに、先陣切って走っていく翼よ。どれだけ元気なのか。あるいは鳥への気持ちが、疲労をも回復せしめるのか!? そのどちらもなのかもしれませんね。
というのも、疲れはてていた岬がです。オオタカの声を耳にしたら、一気に回復、走り出すというのですからね! でも、続くダミ声に取り戻したはずの元気が削がれる。そうか、カケスなのか。他の鳥や機械音、人の声まで真似るっていうんですが、鳥のこうした能力、すごいですよね。
皆が目にしたカケス。ドングリを集めては、土に埋めて貯蔵しておく。先を見越した活動に、すずに岬、それぞれのスタイルが比較されるのが面白い。そしてカケスの行動が森を育てるように、岬のこれまでの活動がいよいよ実を結ばんとする!?
写真集出版の打診を受けて、まだ実現するかはわからないものの、この報に沸き立つすずたちですよ。岬がひとり冷静なんですけどね、でも気持ちの引き締まるものを感じている。こうした変化、進展、実にわくわくさせられます。実現したらいいですね。これはやはり大きな成果だと思うんですよ。
『スロウスタート』
びっくりしました。だって、ずっと、楽しいクリスマスパーティの話だと思っていたのですから。それはきっと花名たちも一緒でしょう。誰ひとり、こんなことになるだなんて思いもしなかった。ところが、この楽しいはずの今日の日に悲しい報せを受けた子がいた。まさに家を出ようというそのときに、帰宅した父から転勤を知らされた果実です。高校卒業まではなかったはずの転勤が、父の気まぐれ? 親切心? がために、急遽この年明けに現実のものになるという。
そんな大事なこと、家族の誰にも相談せずに決める!? というのも驚きだったんですが、これひとつのモラハラでは? だって生活をともにする家族の了解も得ない。その事情にも配慮しない。すなわちひとつの人格として尊重していないってことでしょう。
結局父は、娘からの涙、妻からの非難で報いられることとなり、でもほんと、これ、どう決着するのでしょう。
涙に暮れる果実を迎えて困惑する花名たち。この子たちが果実にしてあげられることはあるのだろうか。そして果実のこれからを明るいものに変える兆しなど見つけることができるのだろうか。
というか、花名の暮らすアパートに果実を迎えるというのはあきませんの? あるいは、お父さん、娘のためですから、単身赴任なさいませ。
- 『まんがタイムきらら』第23巻第7号(2025年7月号)
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