2023年7月8日土曜日

『まんがタイムきらら』2023年8月号

 『まんがタイムきらら』2023年8月号、発売されました。表紙は『しあわせ鳥見んぐ』。ひなからサクランボをあーんとされて、ちょっと恥ずかしそうな岬が印象的な表紙です。ふたりともに夏の装い。岬はシャツに、ひなはワンピースにサクランボの柄があしらわれていて、ちょっとお揃い、可愛いですよね。岬は髪にサクランボの飾りをつけて、ひなの髪には桜の花。ふたりともに可愛くおめかし。そんな様子を、桜の樹上からオナガが見ています。

今月は新規ゲストが2本です。

『ライク・ア・ウィッチ!』

学校帰りの藤森由羅。川縁でぽつねんと座り込んでいたら、見上げる橋上に人の影。ホウキをを手にした女生徒が、なんとそのまま川に飛び込もうというのですよ。必死の思いで助けようと駆け寄ってみれば、命綱がついていた? いや、思いっきり腹が締め上げられていますね。

この不思議な少女は深草漆。修行中の魔女という彼女の姿に、かかわりあいにならぬようおいとましようと背を向けた由羅。しかしそんな彼女に漆が呼び掛けるんですよ、魔女、ユールですよね。

これ、わからなくなってきたな。由羅が魔女なのか、あるいは漆が魔女なのか。最初は由羅が本当にそうなのかと思ったんですよ。でも話が進んでいけば、あ、違うな、魔女設定でネットであれこれやらかしてたことが黒歴史になってる、それが由羅なのか。で、その由羅の書いていたBlogを真に受けたのが漆ってわけか。

からの、まさかの展開。由羅が残した中二病の痕跡を手本に学んだその果てに、魔法をモノにしてしまったのか、漆さん! かくして由羅と魔女漆の関係がはじまる!? いや、ほんと、これ由羅はどうなるのか。由羅も魔法を使えるようになるのか。本当、どこに向かうか、どう着地するのか、まるでわからんとこに魅かれます。

『こももこもりこまり』

独特のテンポ感、悪くないと思います。

学校の人づきあいに馴染めず、不登校に陥ってしまったこもり。すっかりひきこもり生活に順応してしまっているというのですが、姉のひきこもり定着を阻止せんと積極的に働きかけてくる妹こまり。元気で明るい子なんですが、妹では力不足でござったか。かくして召喚されてきた長女こもも。こもりを否定はせぬものの、その愛で、光で包み込んでくる。その光の前に居心地の悪さ感じてしまうこもりの気持ち。ちょっとわかる気がしましてね、なんか読んでいて親近感でした。

こまりにとっては、この姉が人づきあいで頑張ってた姿、それが眩しかったんですね。今は疲れて弱ってしまってますけど、私の姉はカッコいいんだって、その一心で姉に向かいあう姿はじんとくるものありました。

そして姉のこももも加わっての、決してこもりを否定しない姿。その優しげなる様子にもまたもほろりとさせられるのでした。

こうして、愛に包まれて、気持ちを癒せたんでしょうね。ふたたび顔を上げて、学校にいくと決めたこもりの姿の美しさ。こもりの決断に心動かされる姉妹の情もまた読み手である私の心を打って、優しいなあ、温かいなあと、ほっとする感情に満たされたのでした。

『しあわせ鳥見んぐ』

ひなのお家の果樹園で、サクランボ収穫のバイトをするすず、翼、岬です。楽しげな様子のすず、翼とは対照的に、生真面目さ全開の岬と、この個性がようく出てくるところ、やっぱりいいですよね。だからといってすず、翼が不真面目ってわけじゃないんですけどね。その後、お腹が鳴っただどうのこうのと、ちょっとじゃれるみたいなすずと岬もチャーミングでした。

さて、今回の鳥の話題はムクドリでした。このあたりの地域じゃギャラと呼ばれている。サクランボ農家からすれば、虫もとるけど実もとるからと、増えても減っても困るのだそう。鳥避けのネットなんかも張ったりして、共存できるところでは共存し、無理なところでは距離をとる、そんな微妙な関係なんですね。

今回は普通のバイト回なのかと思ったら、以前からのテーマ、ツバメの子の巣立ちを受けたひなの物思い。それが続いているんですね。バイト代をなににあてるか。画材代、フィールドスコープ、そして夢のため。展示会に現像代にレンズといった機材代にと、出ていくお金はいくらでもあって、けれどもう数年もしたら卒業、ひとり立ちしなければならない。

そんな岬の言葉を聞いて、ひな、物思うんですね。私だけなにもない。私だけヒナのまま……。

ひなと巣立ちをめぐる物語は、まだまだ続きそうな気配です。ひなにとっての未来像、なりたい自分を思い描けるようになるのか。夢といえるものが見つかるのか。まだしばらく思い悩む日が続きそうです。

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