2023年7月13日木曜日

機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜 ジオン軍の失敗 U.C.0079

 面白そうだなと思って買った本でしたが、予想をはるかに超えて面白く、一気に読んでしまいました。今は続刊となる『ジオン軍の遺産』を読み始めたところ。一年戦争好きの私としては、『ジオン軍の失敗』ほどにはのめり込まないんじゃないかなとか思っていますが、いやいやどうでしょう。こうした評価は実際読み進めてみないとわからないものです。

さて、この本、どういうものかといいますと、宇宙世紀に生きるものの視点から、過去のジオンの技術を評価しようという趣旨で書かれたもの。現代日本に暮らす我々が、それこそ零戦や戦艦大和について戦後の視点からその成否を論評しようとするかのように、ジオンの兵器について問うというものなのですね。いや、もうこんなの面白くないわけないじゃない。ええ、本当に面白かったですよ。

いわく、MS-06ザクIIは傑作だったがゆえに長く使われすぎて戦場における負債となった。MS-14ゲルググは優れた機体だったが登場があまりにも遅すぎ効果的に運用される機会を持たなかった。などなど。

ピックアップされるモビルスーツにモビルアーマー、はてはソーラ・レイ・システムなど、一年戦争において印象的な兵器が、その長所を、そして結果的に失敗と評価せざるを得ない理由を、状況の移り変わりをもともに語りながらつまびらかにされるのです。

論じるにあたり根拠とするのは、『機動戦士ガンダム』テレビ版および劇場版。そして『機動戦士ガンダム公式百科事典』をベースにしながら、異説として小説版の記述を参照するなど、オフィシャルの描写や設定に依っています。それこそシャーロキアンがシャーロック・ホームズの原作を典拠に、彼の生きた社会、世界、時代を俯瞰あるいは詳述しようとするように、ガンダムの世界、宇宙世紀を実在の歴史的事象であるかのように扱う遊びでもあるのですね。

ほら、オタクってそういうの好きでしょ? みたいな感じするじゃないですか。で、私はそういうの好きなもんだから当然読めば面白い。しかも知らない話じゃないから、すいすい入ってくる。これ、冒頭に作者もいうように、よく知らない現実よりも、より我々が知見を持っているガンダムをモチーフに思惟をめぐらすほうが、リアルを実感し、失敗論としても切実な議論を展開できるだろうという目論見は大当たりしているといわざるを得ない。

ええ、ほんと、こんなにもピタッとハマってくるとは思いませんでした。

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