『まんがタウン』2023年6月号、一昨日の続きです。
『あの世で猫になる』
一人暮らししてると、親チェックってのがあるんですか! その日の朝に連絡があって、その日のうちにやってくる。すなわち抜き打ち! 雑な生活してはいないか。あるいは親になにかしら隠し事していないか。ってことなのだと思うのですが、朝倉さんにとっては特になにも問題はないみたい。
逆に焦るのがタマなんですね。
部屋はちゃんと片づいてる。それにタマと一緒だから安心! っていってる朝倉さんですが、地縛霊との同居は安心要素じゃないですよ!? なのでタマはクローゼットにひきこもるんですけど、この焦りぶりから生前は雑な生活してただろとネズミから指摘されてるタマがおかしかったです。
朝倉さんの母到来。チェックはほんとにスムーズに終わって、やっぱり同棲相手がいるかどうかとか確認されるんだ! そしてついに気づく朝倉さんの猫のぬいぐるみ。首輪はタマちゃんの依代だから、猫の霊と一緒に暮らしてるの、躊躇なくタマのこと母に報告するんですが、母、いぶかしがるかと思いきや、かつて子供の時分から朝倉さん、イマジナリーペットとして猫を飼ってたこと知ってるから、これもそういうのだと思ってくれたんですね。
なんだか泣ける話ではある。それゆえにこうして今タマと一緒に暮らせているしあわせみたいなのが感じられた今回のエピソード。同時に、ごまかすとかそういう発想が朝倉さんにないっていうのもばっちりわかって、朝倉さん! 結構難儀な人ですね! でもだからこそ、タマとは好相性なのかもなんて思った話でありました。
『もくもくもくのキャン』
商店街のおまつりで、ヤママートも店頭でいろいろ売り出していますよ。原田と木野が一緒に担当することになって、それはそれは見事な売れ行き。木野もばっちり大活躍しています。
そして日が暮れ、見事に完売。お疲れ様と木野がコーヒーをいれてくれるのですが、まさかの携帯コーヒーミルが出てくる。お湯もシングルバーナーとケトルが出てくる。カップもキャンプ用品。さらにはキャンプ用チェアまでどばどば出てきて、そうか、木野さんにとってキャンプは別に隠す趣味じゃないもんな。
木野さんがキャンパーとわかって嬉しい原田。でもまさかの話を聞かされて、ああ、木野にとってのキャンプとは、亡き夫と過ごすはずだった大切な時間、それをひとり守る試みであったというのですね。
それ聞かされて、ちょっと一緒にいきましょうとはいえなくなった原田。いいかけた話をごまかして、そして複雑な表情見せる彼女の心情。そこに見える思いやり。けれどいずれは、このふたりが一緒にキャンプにいける、そんな時がくればいいなと思えた話でした。
新しく誰かと一緒になにかをするというのは、誰かとの思い出をないがしろにするってことじゃない。そうしたところにまで辿り着ければと、願う気持ちになる話でした。
『ルナナナ』
ヤベえ。この月、個人で地球と交信できるのか。とはいえ、通常ルートではバカ高い料金を支払わないといけない。というので、アングラなやつら、あるいはいかにもな月住民たちは自分たちで野良アンテナを立てて、月の表側から受信した地球からの電波を、裏側にまで中継したりしとるのか!
でもそれ、結構やってるやついるっていうのなら相乗りさせてもらえばいいのに? いや、それだとまたなんか高い利用料をふっかけられたりするのか? なので第7寮の住民も自力で中継アンテナ立てまくることにしました。
これね、なんかいい話なのかなんなのか、リコが無茶するのはいつものこととして、まさか一緒にいこうと誘う相手がはるかでしょう? なぜかと問われて、お前がいちばん「月がつまんない」って顔してるからだって、この答にはしびれましたよね。
そして表側に向かう時も、月面という未知の世界に感動を覚えているはるか。ええ、はるかの心が動いてるんです。それ見られただけでも、もうこのエピソードはできあがったようなもんだと思いました。
でもワンダーはまだまだあって、どこまでいけば月の表側なのかというの、いけばわかるというその意味。ああ、天頂に地球が見える! そして事故ってしまってからの必死の帰還途中。ナオとはるか、なんかやけっぱち気味に仲良くなってるっぽいんですが、それでももう無理かもという危機に通じた携帯電話! 自分たちの設置してきた野良アンテナが自分たちを助けたってやつですよ。
ほんと、今回のエピソードはロマンに溢れていました。ナンセンス強めに展開することの多い漫画だけど、今回のロマンはガチ度高めで、ええ、ほんと、すごくよかった。なんか、泣けましたよ。
『恐竜とカッパのいる図書室』
シショさんと薬師堂の伯母さんのかつての話。仲のよかったふたりが、進路のことでこじらせて、そしてちょっとしたすれ違いから仲が離れてしまった。その結果が、ふたつにわかれたカッパの物語。
カッパと黒ネコの出会う話と、そこから派生していった恐竜が出てくるようになった話。
その物語の分かれ目には、まだ学生だった頃のシショさんと伯母さんの気持ちの別れがあったのだけど、今この物語に結びつきを感じている薬師堂と卸町は、一度はその気持ちに距離を感じることもあったものの、もう大丈夫そう。薬師堂は卸町のことが嫌になったりなんてしてないよって、ムズカしく考えてるんだろうけど、そんな卸町のこともわかろうとすることはできるよと、言葉にして伝えてくれた。
これ、きっと卸町には大切なことで、そして薬師堂に手をひかれながら、カッパと黒ネコの物語、その終わりに向けての続きをふたりで考えよう。
かつての悲しいできごと、そして今のふたりに生じた少しのぎくしゃくも全部抱えて超えてみて、前向きな未来に歩き出そうとするのですね。
ああ、ふたりの関係、きっと素敵になる。このふたりがつむぐ新しい物語とはどんなものになるのか。それもきっと素敵になる。そんな思いがするのです。
- 『まんがタウン』第24巻第6号(2023年6月号)
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