『まんがタイムきらら』2019年5月号、発売されました。表紙は『甘えたい日はそばにいて。』。満開の桜の中、白い封筒を手に涙ぐんでいるひなげしですよ。その封筒、破れたハートのシールをテープで重ね貼りして繋いでいる。ああ、これはこの人の思いを、伝えたい気持ちが詰まった手紙によってなぞらえて、破れかけたその恋心、こうして繋いで、ついには相手に託すことができたという、そんな情景をあらわしているのですね。美しい表紙。手紙が隠した口元、けれどその笑みは隠すことができなくて、涙も喜びのそれであることがわかる。紅潮した頬。表情には安堵も見えて、長くつらい時期をようやく抜け出せた、そんな感慨溢れる表紙にしあがっています。
『甘えたい日はそばにいて。』、完結しましたね。捕われ、記憶の消去処理をされながらも、その記憶を保ち続けたひなげしと、彼女とのことを小説にして世に問うた楓の静かな戦い。その決着がつくまでに十年かかってしまったっていうのかあ。このかかった月日、正直驚かされました。十年もたてば、楓とひなげしの周囲にいた人たちもずいぶん変わって、つまりはそれだけの重みのある期間であったということだというのですが、そうした変化を描いたのは、ふたりの再会をより印象的なものにするための布石だったというのでしょうか。ひなげしはアンドロイド、変わらないのも当たり前だといえる存在であるわけだけど、楓はそうではない。うつろいやすい人間です。十年の月日の前に容赦なく変わっていって、その思いもかつてのそれとは違ってしまっているかも知れない。その懸念もしっかり描いたうえで、ああ、楓よ、あんまりにもそのままで、いや、ちょっと背は伸びたよね。互いに再会の瞬間、夢と思っているのがおかしくて、そして一緒に夢でないことを確認する。ここまできたんですね。この、当たり前の感情を、当たり前に伝える。その当たり前ができるまで十年をかけなければならなかったんですね。この漫画、こうして決着した今、ふたたび一度に再読したらまた違った情感わいて迫るものありそう。ええ、ぜひとも再読したいと思わせる最終回。見事でした。
『ゆゆ式』。72。
『夢見るルネサンス』。リーチャ、テレビでペンタブレットを知る。ペンタブの利点を知り、一気に欲しくなってしまうリーチャ。それはおいくらですか! と聞いてもテレビは答えてくれない……。と思ったら、すごいな、応答成立しちゃったよ。ナイスタイミング! 私のは3万くらいって答が返ってきて、リーチャ思いが通じたとかいっちゃう。これ、面白かったな。けど、リーチャがペンタブ買ったとしても、PCが必要だし、ソフトも必要だしで、けどまだそのあたりはわかってないだろうなあ。PCもなしにペンタブだけ買っちゃうみたいな悲劇になったら、リーチャ可哀そうだよなあ。今回も桃花登場して、やっぱりいいですねこの人。リーチャのこと、まだ宇宙人だなんていってるわけですが、美しいといわれてもふもふ喜ぶところとか、とてもいい。さらに描いてもらった似顔、これ、ちゃんとお金払うんだ! いい子だ。仕事に報酬を支払う、しっかりした教育受けてるんだなあ。ここからリーチャの似顔絵大会はじまるのもよかった。ええ、ちゃんと技能活かしてますよね。さて、このお金をリーチャがどうするか、その選択もまた嬉しいことで、こうしてこの子が今という時代に馴染んで、さらには夢をかなえられるまでになるといいなあ、その足掛かりみたいなエピソード、大変楽しく読みました。
『スロウスタート』。栄依子さん、すごいな。ナンパ男をあしらう、その手管。意外な答を投げかけて、意表つかれたところに畳み掛けて、二の句を継がせる間もなくさようなら。すごいわ。見とれましたわ。けど、これはただの前段。本編は生徒会の手伝い、清掃作業ボランティアを皆でやるというんですね。あの、コンビニ袋を猫と見間違えた花名、おかしかったわ。冠に声かけてから猫じゃないと気づいて、あのコンビニ袋の絵もおかしければ、狼狽する花名もおかしくって、でもうまいこと処理できましたね! ゴミも勘違いも! この後の事件、財布拾っちゃったっていうのも、まさかの万年さん! 笑っちゃいかんのだろうけど、プルプル震えてるあの表情見れば、笑わずにはいられない。いや、このピンチがもう解決に向かってるって思えるからだろうけどさ、もうね、よかったねえっていうか、ほんと微笑ましい。でも万年さん、どんだけ持ち歩いてたの。花名が恐縮しきりやん! 花名、欲がないんですね。あの、皆のしあわせを願ったかのようなラスト、ほんと、ちょっと嬉しくなる、そんな情景でしたね。
- 『まんがタイムきらら』第17巻第5号(2019年5月号)
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